筆者は独立アドバイザーという仕事柄、グループディスカッションのファシリテーションを担当する機会が多いです。まだまだスキル的には満足いくレベルではないので、研鑽中です。
ブレストの2つの手法を使い分ける
グループでディスカッションをすることは、ブレインストーミングと言われます。日本では省略して「ブレスト」と呼ぶこともあります。「ブレストしようぜー」みたいな言葉があるくらい普及していると思います。
このブレインストーミングは、1940~50年代に誕生した、グループでディスカッションをする手法です。複数のメンバーが議題に対して自由に意見を出し、新しい発想やアイデアを膨らませ、それらを昇華させる目的で行われています。
筆者は何も準備せずに完全にオープンでブレストするのがあまり好きではありません。生産的なディスカッションがなかなかできないからです。ですから、事前にかなりの準備をして、ディスカッションに臨みます。その中で、よく使うディスカッションの手法が次の2つです。
・水平思考(ラテラル・シンキンング)
・ワールドカフェ
筆者は、水平思考はアイデア出しを行う場合に、ワールドカフェは何かを組織に浸透させる場合に、それぞれ使い分けています。
どちらの手法も、参加者が自由に発想し意見を出しやすくするために、以下のルールを守る必要があります。ここでも、アイデアは質より量です。
・オープン・マインド:相手の意見を否定せず、好奇心を持って聴く
・落書きの推奨:模造紙にペンで、思いついた言葉やイラストを自由に描く
・質より量:完璧な意見を言おうとせず、直感的なアイデアを歓迎する
・つなげる:他の人の意見に自分のアイデアを重ね、対話を広げる
2種類のブレストの手法を解説
ここから、それぞれの手法を詳しく説明します。
水平思考(ラテラル・シンキンング)
水平思考は、1970年代に創造的教育の研究者エドワード・デ・ポーノ博士が提唱した発想方法です。従来の、原因から結果が生まれるという前提に立った「直線的な」因果関係思考へのアンチテーゼとして生まれたそうです。以前の記事で詳細を取り上げています。
水平思考の中にも、「前提を疑う」「掘り出すような質問をする」「奇妙な組み合わせをしてみる」「奇妙な組み合わせをしてみる」などの思考方法がありますが、筆者がディスカッションでよく使うのは、「アイデアの量を増やす」です。
「アイデアの量を増やす」は、まずは徹底的にアイデアの数を出すことから始めます。最初から答えを探しにいくと、ディスカッションが行き詰まる場合が多くあると思います。「アイデアの量を増やす」際には、くだらないものも含めて、できるだけ多くのアイデアを、グループで最初に出します。
大切なことは、ここでは他人のアイデアを否定してはいけません。できるだけ拡散するのです。アイデアはくだらないものも含めて、「とにかく100個出す」のような目標を決めます。そして、次に収束です。
・全員ですべてのアイデアを評価して、重要度や実現の容易度を大中小で評価する
・重要度が高く実現の容易度が高いアイデアだけに絞る
・絞ったアイデアを、グループでそれぞれが10点満点で評価する
・総合点の高いアイデアをどう実装するか議論をする。もちろん、総合点だけでなく、本当によいアイデアが埋もれていないかも確認する
ワールドカフェ
ワールドカフェはヘンテコな名称ですが、カフェのようなリラックスした環境で、参加者がテーブルを移動しながら少人数で議論を実施する方法です。1995年にアニータ・ブラウン氏とデイビッド・アイザックス氏によって開発された、「知識や知恵は、組織全体に網の目のように広がる対話から生まれる」という考え方に基づく対話方法です。
かなり大規模なカンファレンスの議論でも使われます。筆者も300人規模で実施したことがあります。ワールドカファは、組織のビジョンやミッションや価値などをメンバーに浸透させるときにとても効果的です。
ワールドカフェ実施の手順は次のとおりです。まず、テーブルごとにホストとメンバーを決めます。ホストを残して、メンバーが違うテーブルに移動して、アイデアを蝶のように受粉させていくことがポイントです。1つのテーマで3ラウンドくらい行います。
・セッティング:1テーブルに4~5人が座ります。テーブルには模造紙とカラーペンを用意します。
・ラウンド1:指定されたテーマについて、最初のメンバーで対話します(約20分)
・メンバー移動(シャッフル):1人(ホスト)だけテーブルに残り、他のメンバー(旅人)はバラバラに他のテーブルへ移動します。
・ラウンド2:ホストが「前の回ではこんな話が出た」と新しいメンバーに共有し、それをヒントにさらに深く対話します。
・ラウンド3:元のテーブルに戻り、これまでの全ての対話を統合します。
・収穫(全体共有):各テーブルで描かれた模造紙をみんなで眺め、気づきを共有します。
参加者がテーブルを移動するのがミソです。これによってアイデアが人から人に受粉していくのです。
お菓子などをテーブルに置いてもいいでしょう。和気あいあいとした雰囲気こそが、直感的なアイデアを引き出す鍵になります。ファシリテーターは参加者の笑顔を引き出してください。テーマごとに複数のテーブルを作ってもいいですし、場合によってはテーマを分けて何セットか実施してもいいです。
結論を具体化するために「なぜなぜ分析」で深堀する
どちらのディスカッション手法を使っても、出てきたアイデアは次につなげないと意味がありません。また、ディスカッションすると、意外に以前から課題認識していることが多いということに気が付きます。そうです、分かっていても実装していないことが、再度洗い出されるのです。
ディスカッションで終わり形骸化、という同じ状況に陥らないため、アイデアを評価してAction Itemを作成します。しかし、アイデアのレベル感はまちまちなもので、そのままではAction Itemにならないことも多いです。そこで有効なのは「なぜなぜ分析」です。
なぜなぜ分析は、トヨタ自動車の生産現場で生み出された分析手法で、なぜを5回繰り返して、根本的な原因や問題を探り出す主要です。単純ですが、超パワフルです。
例えば、「会議を減らす」というアイデアが出た場合は、会議はなぜ多いのか?それは、不要な会議にとりあえず呼ばれるから。それはなぜか。決定できないから。それはなぜか。権限移譲がされていないから。意思決定するだけのメンバーの知識がないから。と、深堀していくのです。
そして、根本原因が特定できたら、それを解決するAction Itemを決めて、重要度・緊急度・実現容易性で評価して、どれを実行するかを決めるのです。本当に何かを進化させたい場合は、重要度が高く、緊急度が低いことを計画的に実施することをお勧めします。
グループディスカッションは、単に集まって話すだけでは烏合之衆に陥り、成果を得ることは困難です。効果的な手法を、心理的安全性を確保して実施してみてください。そうすれば、ディスカッションは単なるお喋りから価値創造の場へと昇華されます。
