今回は、B to Bにおけるマーケティングキャンペーン(以下、キャンペーン)について記載したいと思います。B to Bのビジネスに関わってからセールスの人にキャンペーンについて説明すると、「何かオマケが当たるプロモーションかと思っていました」との反応がありました。
B to Bにおいてキャンペーンはマーケティング活動の基本になり、デマンドジェネレーション / パイプライン作成、ブランド認知、およびカスタマーマーケティング・リテンションで使用されます。ただ、日本ではあまり洗練されたキャンペーンが実施されている例が少なく、展示会やデジタル広告レベルのキャンペーンが主流かと思います。本稿では効果的なB to Bでのキャンペーン実施のヒントを提供したいと思います。
キャンペーンとは、マーケティング・アクティビティ(以下、アクティビティ)の論理的な塊で、明確なターゲットペルソナに対して差別化されたメッセージをコンテンツで伝えることです。アクティビティとは、購買プロセスのステージごとにどのようなコンテンツをどのマーケティング・チャネル(以下、チャネル)でコミュニケーションするかを定義したものです。チャネルを道路に見立てて、ターゲットにコンテンツを運ぶ様子から、アクティビティは車両(Vehicle)とも言われています。ターゲットとコンテンツがカギということです。
キャンペーンは"論理的な塊"であり、さらに縦と横の塊に分けて定義できます。縦は上記のようにキャンペーン→チャネル→アクティビティという階層構造になります。チャネルは、イベント、PR、デジタル広告、ABMなどで、アクティビティはチャネル上で実際活動する展示会、製品発表会、Google Adsなどです。
キャンペーンに対してチャネルは1対n(>=1)、チャネルに対してアクティビティは1対n(>=1)になります。1つのアクティビティで構成される単純なキャンペーンもありますし、より多くのアクティビティから構成される複雑な統合キャンペーンもあるということです。どちらも、キャンペーンごとにテーマやメッセージを決めて設計します。
B to Bビジネスでは以下の理由から、統合キャンペーンが効果的です。複数のアクティビティから同じメッセージが出て、接触回数が増えることで、最大の難関である"知らない"から"知る"を突破できる可能性が高まります(後述)。日本の企業では、大概、マーケティング=アクティビティになってしまっています。それではインパクトが作れず、質の高いパイプラインが出づらいです。
・複数接触される骨太のメッセージが出せる
・それぞれの層でパフォーマンスをトラック可能
・プランおよび実行が容易
・ROIの管理がやりやすい
・デザインにおいても一貫性を作り易い
マーケティング予算もこの3層構造で管理され、KPIを設定して、ROIが測られます。チャネル種類ごとの管理、アクティビティごとの管理も容易になります。
一方で、横の塊ですが、これは購買行動プロセスを表現したものです。このプロセスを進捗させるのは結構難しいです。購買行動プロセスは心理の変化で、代表的なものにはAIDMAやAISASがあります。第26回「B to Bの営業・マーケティングたるもの、恋愛上手になれ」でも取り上げています。AIDMAについて簡単に確認してみましょう。
Attention:知る
Interest:興味をもつ
Desire:欲する
Memory:記憶する
Action:行動する
これを見ると、実はAction以外は心理的な状態ですよね。これが変化しているということです。よって、キャンペーンはこの変化を起こすために、心理的な刺激を与えるということなのです。実はB to Bであっても人が意思決定をするため、感情で判断さ、後付けて論理的な理由付けがされることが多いです。B to Bでも心理作成を展開する必要があるということです。
AIDMAのすべてをマーケティングがカバーする必要はなく、Attention、Interest、Desireくらいをカバーして、あとは営業に任せればいいです。ただ、厄介なのは"知る"のAttentionで、未認知の状態から認知の状態に変化させるのはかなり大変なのです。人間は、興味のないことは認知しませんからね。
キャンペーンでは、"知る"、"興味をもつ"、"欲する"のそれぞれをサブキャンンペーンとして実施して、知らない→知る、知る→興味をもつ、興味をもつ→欲する、への変化を促します。そうしてようやく、質の高いパイプラインが作れるということになります。ここでのポイントは、コンテンツです。サブキャンンペーンごとに車両で届けるコンテンツが異なるということです。
コンテンツ:
"知らない"から"知る"(インパクトをインサイトで起こす)
・業界のトレンド
・グローバルのトレンド
・規制の影響
・すごく困っている喫緊の課題への対処方法
"知る"から"興味をもつ"
・同業他社の事例(価値創造)
・最新テクノロジーの価値ポテンシャル
"興味をもつ"から"欲する"
・差別化要因とベネフィット
お分かりいただけるように、最初のステージでは製品の機能説明をしないということです。日本企業のマーケティティングはついつい製品の機能紹介をしてしまっています。残念ながら、製品の機能説明くらいでは、"知る"の状態に変化させるには弱すぎるのです。「この会社おもろいこと言うな」「えーそんなこと知らなかった」みたいな印象が残るインパクトのあるコンテンツが必須です。それでようやく最初の難関が突破できるのです。
B to Bビジネスのマーケティングは、心理作戦もあってなかなか大変な仕事ですが、それだけに、販売に貢献できたときの喜びはひとしおです。そしてやはりContent is Kingであり、テーマやメッセージに即したコンテンツを購買行動プロセスの各ステージでどう作成できるかがカギになります。磨けコンテンツ作成能力です!