Microsoft Edgeに統合されているCopilotを使うとインターネット検索の体験はこれまでとは異なるものになる。今回はインターネット検索に絞ってどのようにCopilot in Edgeを使うかの例を取り上げる。

連載「Copilot in Windowsを使ってみよう」のこれまでの回はこちらを参照

インターネット検索から生成AI検索へ

日本はインターネット検索としてGoogleが最大のシェアを持っている。これは世界を見ても変わらない。多くのユーザーがGoogleで検索を行い情報を得ている。

生成AIを使うとこれが一変する。ユーザーが直接Google検索をしていた部分を生成AIが代替してくれるようになるからだ。ユーザーは生成AIチャットと対話を行い、生成AIが代わりにインターネット検索を行って回答を整理してくれるようになる。ユーザーにとって背後でどの検索エンジンが使われているかは問題にならない。生成AIによるインターネット検索と情報整理の能力の方を評価するようになるだろう。

従来のインターネット検索に慣れていると、生成AIを使ったインターネット検索に最初は戸惑うかもしれない。これは強力な機能なので、早めに慣れておきたいところだ。今回はこうした使い方のサンプルを取り上げる。

身近な話題から試していこう

最初は身近な話題から試してみよう。ある程度すでに答えを知っていることについて試すことで、どういった操作が可能であるかを把握することができる。

今回は時期的に注意する必要がある「熱中症」について調べることにして、次のような質問をCopilot in Edgeに投げかけてみる。

日本で生活している場合、どのような条件が整った場合に熱中症にかかりやすいか教えてください。また、どのような症状が出てきたら熱中症の初期段階にあるか教えてください。

Copilotは次のような回答をしている。

  • 熱中症に関する質問に対するCopilotの回答

    熱中症に関する質問に対するCopilotの回答

熱中症にかかりやすい条件は以下の通りです:

  • 気温が高い:特に最高気温が30 度以上の真夏日や、夜の気温が25 度を超える熱帯夜は注意が必要です
  • 湿度が高い:湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温調節が難しくなります
  • 日差しが強い:直射日光に当たると体温が上昇しやすいです
  • 風通しが悪い場所:室内でも、閉め切った部屋や風通しが悪い場所では、熱中症の危険性が高まります
  • 体の条件:乳幼児や高齢者、暑さに慣れていない人は特に注意が必要です
  • 行動の条件:長時間の屋外作業や激しい運動をする場合もリスクが高まります

熱中症の初期段階で現れる症状は以下の通りです:

  • 大量の発汗:体温を下げようとする体の反応として、大量に汗をかきます
  • めまい:体温が上がり血圧が下がると、めまいやぼーっとするような症状が出ます
  • 失神(意識を失う):血圧や血流の変化と脳への血流低下で、一時的に意識が遠のくことがあります
  • こむら返り(足がつる):体内の水分や塩分が失われると、足のつりやこむら返り、筋肉痛のような症状が出現します

これらの症状が出た場合は、すぐに涼しい場所に移動し、水分と塩分を補給し、必要であれば医療機関に連絡してください。熱中症は早期に対処すれば重症化を防ぐことができます。安全に過ごすためにも、これらの情報を覚えておいてくださいね。

従来の検索では新規タブや新規ウィンドウを駆使

従来のインターネット検索では、最初の検索結果に対してさらに調べたい内容が出てきた場合には、新規ウィンドウを開いてそこでさらに検索を行い、検索結果のいくつかを新規タブに展開して順次読んで内容を整理していく、といった作業を繰り返すことになる。

生成AIチャットを使う場合、こういった操作ではなく、追加で知りたい内容をそのままプロンプトに追加で指示するということを行う。

先ほどの回答であれば、「これらの症状が出た場合は、すぐに涼しい場所に移動し、水分と塩分を補給し」という回答の「水分と塩分を補給し」という説明が気になったとする。なぜ水分だけではなく塩分まで摂取する必要があるのか、生成AIチャットを使う場合にはこの点をさらに聞くということを行う。

追加で知りたいことをプロンプトに書き込む

先ほどの例であれば次のような質問をプロンプトに追加する。

熱中症にかかった場合に、水分に加えて塩分も摂取する必要があるのはなぜですか?

  • 追加の質問に対するCopilotの回答

    追加の質問に対するCopilotの回答

Copilotは次のように回答している。

熱中症になると、体からは大量の汗が出ます。この汗と一緒に、体内の塩分やミネラルも排出されます。そのため、体内の塩分とミネラルのバランスが崩れ、体液の塩分濃度が下がります。

水分だけを補給すると、体内の塩分濃度がさらに下がります。これにより、体はバランスを保とうとして余計な水分を排出する機能が働き、体液が不足します。その結果、体温を下げるための汗や尿の生成が難しくなり、体内の熱がこもって熱中症を引き起こしたり、症状が悪化したりする可能性があります。

また、塩分やミネラルが不足すると、筋肉の収縮や神経の伝達など、体の基本的な機能に影響を及ぼす可能性があります。これが、熱中症の症状の一つである痙攣(こむら返り)を引き起こす原因となります。

したがって、熱中症の対策としては、水分補給だけでなく、適度な塩分補給も重要となります。ただし、塩分の摂取量は適度にすることが重要で、過剰な摂取は高血圧などの健康リスクを引き起こす可能性があります。そのため、熱中症対策として塩分を摂取する際は、適切な量を心掛けることが大切です。具体的な摂取量や方法については、医療専門家に相談することをお勧めします。

複雑そうに見える情報についても回答してくれる

連載でこれまで何度か取り上げてきたように、Copilotは難しそうな情報に関してもある程度の回答を示してくれる。先ほどの回答に対してさらにつっこんだ質問をしてみよう。

塩の主成分はナトリウムなので、発汗で失われるものが水とナトリウムだけなら塩を摂取することで問題ないように思えるが、ナトリウム以外のものも発汗で消えていくのであれば、塩の摂取だけでは足りないのではないか。この点を知りたいとして、まずは発汗で何が失われるのかを聞いてみる。

発汗とともに体内から失われる栄養素について教えてください。具体的にその割合も示してください。

Copilotは次のように回答している。

  • 発汗で失われる栄養素についての質問と回答

    発汗で失われる栄養素についての質問と回答

発汗により体内から失われる主な栄養素は以下の通りです。

  • ナトリウム:体内外の体液と、細胞の浸透圧を一定に保つ働きがあります。また、血圧の調整や、神経の情報伝達、筋肉の収縮運動などの役割も果たします
  • カリウム:ナトリウムと共に、体内外の体液と、細胞の浸透圧を一定に保つ働きがあります。その他にも血圧の上昇を抑制したり、ナトリウムの排泄、筋肉の収縮運動などの役割があります
  • カルシウム:神経の働きや筋肉の収縮運動など、生命維持に欠かせない非常に重要な役割をしています。また、骨や歯の強化にも必要です
  • マグネシウム:カルシウムとペアで働くミネラルで、エネルギー代謝の促進、体温や血圧の調整、インスリンの分泌、血を固まりにくくする作用、イライラの解消、骨や歯の強化、筋肉の働きの調整や筋肉痛の緩和などの役割があります
  • 鉄分:赤血球の中のヘモグロビンを作るのに、必要なミネラルです。ヘモグロビンは酸素と結合して、体の各細胞へと酸素を運びます

これらの栄養素は、汗とともに体外に排出されます。具体的な割合は以下の通りです。

  • ナトリウム:863mg/L(約51%)
  • カリウム:222mg/L(約30%)
  • カルシウム:16mg/L(約4%)
  • マグネシウム:1.3mg/L(約0.4%)

これらの値は、1リットルの汗に含まれる量を示しています。大量に発汗すると、これらのミネラルも大量に失われるため、適切な補給が必要となります。

この回答からすると、塩分の摂取ではナトリウムの摂取量が多くなってしまい、カリウム・カルシウム・マグネシウムの摂取が足りないように見える。この点をCopilotにさらに聞いてみる。

熱中症にかかったときに水分に加えて塩分を摂取した場合、ナトリウムの過剰摂取になりませんか? 発汗で失われるミネラルの割合と塩のミネラルバランスを比較すると、塩はナトリウムがかなり高い割合を占めています。熱中症にかかったときは塩分ではなく、発汗によって失われるナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄分と同じ割合のミネラルを摂取すべきではないでしょうか?

Copilotは次のように回答している。

  • 熱中症時に塩分の摂取ではナトリウム過多にならないかという質問と回答

    熱中症時に塩分の摂取ではナトリウム過多にならないかという質問と回答

熱中症になると、体からは大量の汗が出ます。この汗と一緒に、体内の塩分やミネラルも排出されます。そのため、体内の塩分とミネラルのバランスが崩れ、体液の塩分濃度が下がります。

水分だけを補給すると、体内の塩分濃度がさらに下がります。これにより、体はバランスを保とうとして余計な水分を排出する機能が働き、体液が不足します。その結果、体温を下げるための汗や尿の生成が難しくなり、体内の熱がこもって熱中症を引き起こしたり、症状が悪化したりする可能性があります。

また、塩分やミネラルが不足すると、筋肉の収縮や神経の伝達など、体の基本的な機能に影響を及ぼす可能性があります。これが、熱中症の症状の一つである痙攣(こむら返り)を引き起こす原因となります。

したがって、熱中症の対策としては、水分補給だけでなく、適度な塩分補給も重要となります。ただし、塩分の摂取量は適度にすることが重要で、過剰な摂取は高血圧などの健康リスクを引き起こす可能性があります。そのため、熱中症対策として塩分を摂取する際は、適切な量を心掛けることが大切です。具体的な摂取量や方法については、医療専門家に相談することをお勧めします。

また、発汗によって失われるミネラルの割合と塩のミネラルバランスを比較すると、確かに塩はナトリウムが高い割合を占めています。しかし、熱中症になったときに発汗によって失われるナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄分と同じ割合のミネラルを摂取することは、理想的な方法かもしれませんが、現実的には難しいかもしれません。なぜなら、それぞれのミネラルの摂取量を正確に計算し、それに基づいて食事を調整することは、一般的には困難だからです。

そのため、現実的な対策としては、バランスの良い食事を摂りつつ、適度な塩分と水分を補給することが推奨されています。また、特に発汗が多い場合や熱中症のリスクが高い場合には、スポーツドリンクや経口補水液などを利用することで、ナトリウムだけでなく、カリウムやマグネシウムなど他のミネラルも一緒に補給することが可能です。

Copilotの回答はよくまとまっている。発汗で失われるミネラルと同じ割合のミネラルを摂取する方法は理想的かもしれないが現実的には難しい可能性があり、バランスのよい食事を摂りつつ適切な水分と塩分を摂取することが推奨されるという、かなり満点に近い回答をしている。さらにポーツドリンクや経口補水液という別の選択肢も提示している。

さらに別の話題に対しても質問をしていく

広告や宣伝などで熱中症時の補水に経口補水液を使うという知識はなんとなく知っているという方も多いのではないかと思う。

しかし、経口補水液がなんであるかを調べたことがある方は少ないかもしれない。従来の検索であれば新しい疑問を調べるにはそれなりに時間がかかるが、生成AIチャットだと短時間で済む可能性がある。気になったら聞いてみよう。

経口補水液とはなんですか?

Copilotは次のように回答している。

  • 経口補水液に関する質問と回答

    経口補水液に関する質問と回答

経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は、体から失われた体液(水分、電解質、非電解質)を経口的に補う飲料のことです。経口補水液には①水、②電解質(特にナトリウムイオン)、③炭水化物(特にブドウ糖)が一定の割合で含まれています。

経口補水液は下痢・おう吐・熱中症による脱水症を改善するために使用する飲料で、塩分や糖分が理想的な比率で配合されていることから「飲む点滴」ともいわれています。また、点滴の代わりとして、口から経口補水液を摂取することにより脱水症を改善させる治療法のことを「経口補水療法(ORT:Oral Rehydration Therapy)」といいます。

市販の商品で一番有名なのは、大塚製薬社の「OS-1」です。経口補水液は薬の取り扱いができる薬局・ドラッグストア、または病院に併設されたコンビニなどで販売されています。

経口補水液を飲む際の注意点として、飲みにくいからといって水で薄めたり他の飲料と混ぜたりしないように気をつけてください。経口補水液の塩分濃度・糖分濃度はそれぞれ脱水対策のために計算して設計されていますので、濃度を変えてしまうと効果が薄くなってしまいます。

ついでに経口補水液と類似したものが簡単につくれるのかどうか聞いてみる。

経口補水液は自宅でつくることはできますか? またはほかの食品などで代替することは可能ですか?

  • 経口補水液のレシピに関する質問と回答

    経口補水液のレシピに関する質問と回答

Copilotは次のように回答している。

はい、経口補水液は自宅で作ることが可能です。以下にいくつかのレシピをご紹介します:

  • 基本のレシピ(レモンなし):材料:水1L、砂糖大さじ4・1/2(40g)、塩小さじ1/2(3g)作り方:これらの材料を混ぜて溶かすだけです
  • レモン果汁入りレシピ:材料:水1L、砂糖大さじ4・1/2(40g)、塩小さじ1/2(3g)、レモン果汁50mL 作り方:これらの材料を混ぜて溶かすだけです
  • はちみつ入りレシピ:材料:水1L、はちみつ大さじ3~4、塩小さじ1/2(3g)、レモン果汁50mL 作り方:これらの材料を混ぜて溶かすだけです
  • ブドウ糖の甘さ控えめ&低カロリーレシピ:材料:水1L、ブドウ糖大さじ2(18g)、塩小さじ1/2(3g) 作り方:これらの材料を混ぜて溶かすだけです

ただし、これらのレシピはあくまで参考の一つであり、必要な栄養素の全てを補うものではありません。また、作った経口補水液は1~2日以内に飲むようにし、作り置きは避けてください。

経口補水液の代替としては、スポーツドリンクが一般的に用いられます。これらのドリンクは、水分とともに電解質(ナトリウムやカリウムなど)を補給することができます。ただし、スポーツドリンクは糖分が多いものもあり、糖尿病などの持病がある方は注意が必要です。

以上の情報はあくまで一般的なものであり、個々の健康状態やニーズにより異なる場合があります。具体的な摂取量や方法については、医療専門家に相談することをお勧めします。

販売されている経口補水液と回答に記載されているレシピの液体はまったく同じ成分比率になるわけではないが、Webには経口補水液のレシピが多く掲載されているのでこうした情報に基づいて回答が生成されたものとみられる。「ORAL REHYDRATION SALTS - Planning, establishment and operation of production facilities」の説明に従えば特に誤った回答ではないように見える。

知りたいことをプロンプトに書いていくのが基本的な検索方法

このように生成AIチャット、ここではCopilot in Edgeということになるが、こうしたサービスを使った検索はプロンプトに知りたいことについて随意質問していくというのが基本的な使い方になる。こうしたやり取りは記憶されており、必要になったら後から再度読めるようになっている。コンテキストのままデータが保存されているので、後から見直すときにも便利だ。

生成AIチャットを使ったインターネット検索で気を付けなければらないのは、ときどきしれっとごく自然に嘘が紛れ込んでくるという点にあるのだが、今のところこれを完全に防止することはできない。少しでも違和感を抱いたら別の角度から再度質問したり、従来のインターネット検索を行うなどしてダブルチェックしていく必要があるのだ。

しかしそれを差し引いても強力な機能であることは間違いがなく、効率的な使い方を模索していく方が建設的ではないかと思う。いろいろ試しながら効果的な使い方を体感していきたいところだ。

付録: ショートカットキー

ショートカットキー 内容
「Windows」+「C」 Copilot in Windowsの表示・非表示を切り替え
「Ctrl」+「Shift」+「.」(Microsoft Edge) Copilotパネルの表示・非表示を切り替え

付録: 対応バージョン

OS バージョン
Windows 11 Windows 11, version 22H2以降
Windows 10 Windows 10, version 22H2以降のProおよびHome

参考