Copilot in Edgeを使うとWebの検索から文書の閲覧までの流れが生成AI登場以前とは異なるものになる。今回は知りたい情報源をCopilot経由で探し、見つけた文書をさらにCopilotとのやり取りで読み取っていくという使い方を紹介する。
連載「Copilot in Windowsを使ってみよう」のこれまでの回はこちらを参照。
お腹周りが気になるビジネスパーソン
厚生労働省の調査によると、日本の男性ビジネスパーソンは平成25年から令和元年の間に有意に肥満者が増加している。令和元年の段階で33.0%が肥満であり、周りを見渡せば3人に1人は肥満ということになる(参考「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省」)。
コロナ禍を機に緩んだこのお腹をなんとかしなければと考えた方もいるはずだ。そんなときはインターネット検索、YouTube検索、SNS検索などで方法を調べると思うが、想像以上にさまざまな情報が出てくる。どの情報を採用すればよいか判断に困るんのではないだろうか。
細かい点は個人のお好みで選んでいただくとして、まず最大公約数的に情報を整理していくと「除脂肪を進めるための適切な食事」「消費カロリーを増やす運動」「筋肉を増やすトレーニング」「質の高い十分な睡眠」といったあたりは欠かせないといったことが見えてくる。ちゃんと食べてちゃんと動いてよく寝るという、健康的な生活なスタイルが基本ということだ。
細かいテクニックのようなものは千差万別でいろいろ出てくるし、情報源が不明で判断が難しいものもある。今回はこうした情報をCopilo in Edgeを使って検索し、情報源を探っていく方法を紹介する。
運動と運動前栄養摂取戦術を知りたい
トレーニングをする方であれば、トレーニング前中後にサプリメントを摂ることも多い。それぞれに目的があり、自分の目指すところに向けてサプリメンテーション戦術を策定して実践し、フィードバックを得ながら調整していく。
すでに何年も取り組んでいるならまだしも、最初はそもそもどういったサプリメンテーション戦術があるのかも分からないし、何を食べたり飲んだりすればよいのかも分からない。そもそも自分にとってサプリメンテーションが必要なのかどうかも分からないだろう。
ということで、仮に「運動で体脂肪を燃焼したい」いう目的で、この目的を効率的に実現するために運動前に摂るべき栄養素についてCopilot in Edgeに直接質問をしてみる。
有酸素運動や無酸素運動前に摂取する栄養素によって体脂肪の燃焼が促されるといった内容の学術論文をいくつかリストアップしてください。論文は日本の論文のみならず、世界中の論文を対象としてください。
Copilot in Edgeは次のような回答をしている。
以下に、有酸素運動や無酸素運動前に摂取する栄養素によって体脂肪の燃焼が促されるといった内容の学術論文をいくつかリストアップします:
- "有酸素運動で脂肪燃焼するのはなぜ? 仕組みや時間、効率良く行うコツを解説"1:この記事では、有酸素運動で脂肪が燃焼する仕組みや、効率良く行うコツについて分かりやすく解説しています
- "有酸素運動とは? 効果や無酸素運動との違い、おすすめの運動を紹介"2:有酸素運動と無酸素運動の違いや、それぞれの運動が体に及ぼす影響について詳しく説明しています
- "あすけん - 第三条 運動の種類ごとに必要な栄養素を知るべし"3:有酸素運動と無酸素運動を行う際に必要な栄養素について説明しています
- "Fuel Sources for Exercise – Nutrition: Science and Everyday Application, v. 1.0 Fuel Sources for Exercise"4:この論文では、運動時に必要な栄養素とそのエネルギー源について詳しく説明しています
- "What Should I Eat before Exercise? Pre-Exercise Nutrition and the Response to Endurance Exercise: Current Prospective and Future Directions"5:この論文では、運動前に摂取すべき栄養素とその影響について詳しく説明しています
これらの論文は、運動前に摂取する栄養素が体脂肪の燃焼にどのように影響するかについての理解を深めるのに役立つでしょう。ただし、具体的な栄養摂取のアドバイスや運動計画は、個々の健康状態や目標により異なるため、専門家に相談することをお勧めします。
上記結果では4.と5.が学術論文に近いソースのように見える。それぞれリンクになっているので、クリックして情報を追っていく。
4. Fuel Sources for Exercise – Nutrition: Science and Everyday Application
対象のWebページを開いたら、あとはCopilo in Edgeにページの概要を生成してもらう。ここでは次のような概要が生成されている。
このページの主なポイントは以下の通りです:
- エネルギー源としての栄養素:人体は、身体活動の燃料として食物や体内蓄積からの炭水化物、脂質、タンパク質を使用します
- ATPの生成:これらの栄養素は、高エネルギー分子であるアデノシン三リン酸(ATP)にエネルギーを変換することで、体の燃料として利用されます
- 代謝の種類:無酸素代謝は筋肉細胞の細胞質で起こり、酸素の存在下での有酸素代謝はミトコンドリアで行われます
- 運動強度と燃料源:運動の強度によって、ATP生成に使用される燃料源が異なります。低強度の活動では有酸素代謝が主に使用され、高強度の活動では無酸素代謝と有酸素代謝の両方が必要になります
このWebページは人体における栄養素およびエネルギー利用の概要を説明したものであることが分かる。ここで欲しいのは体脂肪の燃焼を促すために運動前に摂取すべき栄養素についてなので、このWebページは欲しい情報源ではなさそうだ。調査の対象を次のWebページへ移そう。
5. What Should I Eat before Exercise? Pre-Exercise Nutrition and the Response to Endurance Exercise: Current Prospective and Future Directions
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What Should I Eat before Exercise? Pre-Exercise Nutrition and the Response to Endurance Exercise: Current Prospective and Future Directions
次のWebページ(PDF)の内容についてCopilotに要約を生成してもらう。Copilot in Edgeは表示しているPDFに関しても概要を生成できるので便利だ。ここでは次のような概要が生成されている。
この文書のパート1は、運動前の栄養摂取が持久力トレーニングへの反応にどのように影響するかについてのレビューを提供しています。以下は主要なポイントです:
- 運動前の栄養摂取:運動前に摂取する栄養は、運動の刺激や細胞の反応に影響を与えることで、トレーニングの適応を変化させる可能性があります
- 代謝と基質酸化:炭水化物を摂取すると脂肪酸化が減少し、空腹時の運動は脂肪酸化を高めることが示されています
- 細胞シグナリング:栄養摂取はエネルギー感知や栄養可用性に関連するシグナリング経路に影響を与える可能性があります
- パフォーマンス:運動前の炭水化物摂取は長時間の運動パフォーマンスを向上させる可能性がありますが、短時間の運動には影響しないことが示されています
これらの知見は、アスリートやコーチ、栄養士が個々の運動前の栄養戦略をカスタマイズするのに役立つでしょう。また、訓練されたアスリートに関するデータが不足しているため、今後の研究の方向性も示唆されています。
このページのパート2では、トレーニング研究における炭水化物(CHO)利用法の比較について説明しています。主なポイントは以下の通りです:
- 炭水化物の可用性の変更:トレーニング前にCHOの可用性を低下させる方法として、一晩断食や24時間以内に2回トレーニングを行い、セッション間に低CHO栄養を摂取するか断食状態を維持するプロトコルがあります
- 脂肪酸化:トレーニングを断食状態で行う主な理由の一つは、運動中の脂肪酸化を増加させることですが、4〜6週間の断食または食後状態でのトレーニング後に、食後または断食状態でテストした際の脂肪酸化には差が見られませんでした
- ミトコンドリアマーカー:耐久トレーニングへの適応反応として、TCAサイクルやβ酸化経路に関与する酵素の活性の変化があります。シトラートシンターゼ(CS)活性は、骨格筋のミトコンドリア含有量と強い相関があるため、最も広く使用されるバイオマーカーです
- VO2maxとピークエアロビックパワー:断食と食後トレーニングを比較した研究では、VO2maxに差は見られませんでしたが、訓練によるVO2maxの増加は、断食状態と食後状態のトレーニングで報告されています
これらの結果は、競技条件下でのCHOの摂取がトレーニング適応に与える影響について、さらなる研究が必要であることを示唆しています。また、トレーニング研究における性別の違いについても調査する必要があります。
この文書のパート3は、スポーツにおける吐き気と嘔吐の原因に関するレビューを提供しています。以下は主なポイントです:
- 運動中の胃腸の不調:運動中に経験される胃腸の不調の発生率とその原因についての議論が含まれています
- AMPKの役割:50-AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の運動強度依存的な活性化と、人間の骨格筋におけるその役割についての研究が紹介されています
- 炭水化物の可用性:運動訓練適応における炭水化物の可用性と、それが過剰になる可能性のある影響についての考察が述べられています
- 参考文献:このセクションには多数の参考文献が含まれており、研究の信頼性と情報源の豊富さを示しています
以上の要点は、スポーツ科学の分野における運動生理学と栄養学の重要な側面を浮き彫りにしています。
今回知りたい関係の情報についてざっとまとめると、次のようなことを説明しているように思える。
- 空腹時に運動すると、体脂肪の燃焼が促される
- 有酸素前に炭水化物を摂取すると、体脂肪の燃焼が低下する可能性がある
比較的探していた情報のひとつがこの文書には説明されているようだ。疑問点を含めてさらにCopilotに質問をしていく。
5.についてさらにいくつかの質問を行う
なお、質問を行う前にプロンプト上部のリストをクリックし、情報源が表示しているPDFになるように設定を行う。これをしないとWebから検索した情報をまとめてしまい、見ている文書からの情報ではない結果が表示されてしまう。
情報源を確認・設定したら、次に知りたい情報の確認を行っていく。まず、次の質問を行う。
運動前に炭水化物を摂取することで、体脂肪の使用が制限される可能性がある、ということを説明していると理解して間違いありませんか?
Copilotは次のように回答している。
はい、その通りです。この記事によると、運動前に炭水化物を摂取すると、血中のグルコースとインスリンのレベルが上昇し、肝臓からのグルコース産出が減少し、筋肉でのグルコースの取り込みが増加します。これにより、脂肪酸の可用性が低下し、脂肪の酸化が抑制される可能性があります。また、運動中に炭水化物を摂取することで、筋肉グリコーゲンの分解が減少することも示唆されています。
主なポイント:
- 炭水化物摂取:運動前の炭水化物摂取は血糖とインスリンを上昇させる
- 脂肪酸可用性:血中の脂肪酸の可用性が低下する可能性がある
- 脂肪酸化:脂肪の酸化が抑制される可能性がある
- 筋肉グリコーゲン:運動中の炭水化物摂取により筋肉グリコーゲンの分解が減少する可能性がある
どうやら「炭水化物を摂取する→血中血糖値が上昇する→インシュリンレベルが上昇する→脂肪分解作用の抑制&脂肪細胞への脂肪酸の取り込み促進」というロジックで血中の使用できる脂肪酸の量が減るので、結果として、有酸素運動で使える脂肪酸が減り、ひいては体脂肪の使用量が減る、というロジックに基づいて説明が行われているようにみえる。
トレーニング前やトレーニング中に摂取する炭水化物(糖質)の中には、脂肪燃焼に影響を与えない、または、与えにくいと謳われているものもあるので、次はその点を質問してみる。
炭水化物でもクラスターデキストリンなど炭水化物は有酸素運動前に摂取しても、有酸素運動時の体脂肪の利用に影響を与えないという研究があったと記憶しています。この論文は炭水化物の種類の違いによる体脂肪の利用に対する影響については論じていますか?
この記事の要点は以下の通りです:
- 運動前の栄養摂取:運動前の炭水化物摂取は、運動中の代謝、生理的反応、パフォーマンスに影響を与える可能性があります
- 脂肪酸化の変化:炭水化物を摂取すると、低〜中強度の運動で脂肪酸化が減少することが示されていますが、長期間の空腹状態でのトレーニングが脂肪燃焼能力を高める証拠は少ないです
- パフォーマンスへの影響:運動前の炭水化物摂取は、長時間の運動でパフォーマンスを向上させる可能性がありますが、短時間の運動ではその効果は見られません
- 研究の方向性:運動前の栄養戦略が耐久トレーニングへの適応に与える影響については、まだ解明されていない点が多く、今後の研究が求められています
炭水化物の種類による体脂肪の利用への影響については、この記事では特定の炭水化物(例えばクラスターデキストリン)に言及していないため、その点についての具体的な情報は提供されていません。ただし、一般的に炭水化物摂取が脂肪酸化に与える影響については論じられています。
Copilotは質問に関する記述はないと判断している。ただし、この論文自体はGI値(グリセミック・インデックス値)の異なる食事とそれが運動テストに与える影響について言及しているので、まったく記述がないかというと微妙なところではあるが、質問に対しては無難に回答しているように思える。
このように気になる点について何度か質問を行い、全文を読むべきかどうかの判断材料にしていく。
選ぶまでを高速化するツールがCopilot
というわけで、今回のようにCopilotを使って文書の検索と見つけた文書に欲しいと考えている情報が含まれているかの調査を行う。自分にとって有益な情報が含まれているようだと判断したら、一度は全体を読むことをオススメする。Copilot経由で質問することで特定の情報を取り出すことはできるのだが、質問の仕方によっては情報の取りこぼしが発生する。同じ質問をしてもCopilotは毎回異なる返事をするし、やはりCopilotとのやりとりだけでは十分とは言いにくい。
情報源を特定のWebページやPDFに限定しているときのCopilotは比較的正確に質問に答えていくれるように感じる。それでも質問の仕方によっては重要な情報を得ることができなかったり、情報のニュアンスが感じ取れなかったりすることがある。ざっとでもよいので一度は全文を読んでみよう。Copilotはそこへたどり着くまでの選別を高速化するためのツールとして使うというのが、現在のところ有用な使い方ではないだろうか。
付録: ショートカットキー
ショートカットキー | 内容 |
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「Windows」+「C」 | Copilot in Windowsの表示・非表示を切り替え |
付録: 対応バージョン
OS | バージョン |
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Windows 11 | Windows 11, version 22H2以降 |
Windows 10 | Windows 10, version 22H2以降のProおよびHome |
参考
- Copilot in Windows & Other AI-Powered Features | Microsoft
- Copilot documentation | Microsoft Learn
- Adopt, extend and build Copilot experiences across the Microsoft Cloud | Microsoft Learn
- Bringing the power of AI to Windows 11 - unlocking a new era of productivity for customers and developers with Windows Copilot and Dev Home - Windows Developer Blog