Microsoft Edgeで利用できるCopilotは閲覧しているWebページに対して質問を行うことができるだけではなく、Edgeで開いているPDFに対しても質問を行うことができる。WebではドキュメントがHTMLではなくPDFで提供されていることも多い。Edgeから直接閲覧しているPDFに対して内容の要約や特定の情報をまとめるように指示が出せるのはとても便利だ。
連載「Copilot in Windowsを使ってみよう」のこれまでの回はこちらを参照。
EdgeのCopilotはPDFにも利用できる
Microsoft Edgeのサイドパネルに表示される「Copilpt in Edge」は、Edgeで閲覧しているWebページに対して質問を行う用途などで特に利便性を発揮する。
この機能は対象のWebページがHTMLでなくても機能する。Webでは文章がHTMLではなくPDFで提供されているものも多い。Copilpt in EdgeはPDFもWebページと同じように扱うことができる。これはWebブラウザとしてMicrosoft Edgeを使いたくなるほど便利なポイントだ。
ここでは、厚生労働省が公開している「日本人の食事摂取基準」を取り上げる。
「日本人の食事摂取基準」はその名前のとおり、日本人が摂取すべき食事の栄養素についてまとめられた文書だ。5年ごとに改定されており、執筆時点では2020年版が最新版となる。現在改訂版の策定が進められており、来年には最新版が2025年版へアップデートされる見通しになっている。
「日本人の食事摂取基準」はさまざまな研究や日本人の食事状況などを考慮し、老若男女が摂取すべき栄養素や、抑えるべき栄養素、避けるべき栄養素などの情報がまとまっている。なぜそのような指針を策定したのかの説明もあり、根拠となっている論文もたどることができる。健康な生活を営むうえで一度は全部読んでおきたい文書であり、ときどき読み返して食事を見直す際にも利用したい資料となっている。
500ページのPDF文書の要約を生成
「日本人の食事摂取基準」はぜひ読み込んでおきたい文書だが、2020年版のPDFで494ページある。一度は全て読むことをオススメするが、栄養学に馴染がないとかそもそも健康や食事に興味を持っていないという場合、このページ数は苦痛でしかない可能性が高い。
そんなときはCopilotだ。まったく読まないのに比べれば、Copilotを使って概要を知っておくとか、特定の情報だけ抜き出して読むのは悪くないとっかかりになる。
「日本人の食事摂取基準」のPDFをMicrosoft Edgeで表示したら、Copilotのサイドパネルを開き、会話スタイルを「より厳密に」に設定して、「ドキュメントの概要を生成する」をクリックする。これは自分でプロンプトに指示をしてもよい。
すると次のように要約が生成される。
500ページほどあるPDFであってもCopilotで扱うことができ、要約の生成を行うことができる。生成AIの登場以前であれば考えにくいことだ。
PDFに対して特定の情報だけを抜き出すように指示する
気になる栄養素が出てきた場合、例えば、健康診断や人間ドックでD評価やE評価が出て生活習慣の改善や食事の改善などを指導された場合、日本人が栄養素に関する現時点で参考にすべき情報源として「日本人の食事摂取基準」はまず候補に上がってくる。この文書から該当する情報を探し出し、その近辺を読み込むのは合理的な方法であるように思える。
食事においてビタミンDの摂取を意識するように促された場合、「日本人の食事摂取基準」でそもそも1日あたりどの程度のビタミンDを摂取すべきかを調べることになる。ここではCopilotに次のように指示を出してみる。
推奨されるビタミンDの摂取量についての説明をまとめてください。
ここでひとつ注意が必要だ。PDFを表示しているのでPDFを対象に分析が実施されると思いがちだが、Copilotが上記スクリーンショットのように「webを使用しています」と表示している場合には、表示しているPDFではなくBing検索を使った結果に対して分析を行っている可能性がある。
表示される内容はそれらしくまとめられているが、表示している「日本人の食事摂取基準」ではなく、Web検索の結果からさまざまなWebページの内容を取りまとめた結果が掲載されていることが分かる。出力の最後に「詳細情報」の項目があり、複数のリンクが掲載されていることがそれを示している。
このような場合には「webを使用して回答する」という部分をクリックして、ここを表示されているPDFになるように明示的に変更する必要がある。
この状態で先ほどと同じ質問をプロンプトに入力すると、今度は指定したPDFを使っていることを示しつつ、回答が表示される。
このように時折調査の対象が表示しているPDFではなくBing検索で出てきたWebページになることがなるので、どこをソースにしているかはちゃんと確認するようにしよう。
生成AIの有用性を感じているなら他の選択肢も
Copilotが使っている大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)はOpenAIが開発した技術に基づいており、筆者が使っている範囲ではこうした既存の情報に関しては比較的正確に回答してくれることが多いように感じる。
2020年版の「日本人の食事摂取基準」におけるビタミンDの説明はそれほど簡単ではない。考慮すべき内容が多く、掲載すべき情報も多くなっている。このため生成AIに要約を依頼するのは結構難しい情報なのだが、Copilotの要約はそれほど悪くない。
しかしながら、Copilotの要約では日本人が摂取すべき目安量が掲載されていない。同じ質問を執筆時点でOpenAI ChatGPTの最新モデルである「GPT-4o」に対して指示すると、次のような回答が得られる。
ChatGPTの回答は使っているユーザーによって回答が変わる。ユーザーのこれまでの行動や設定していない内容を反映して回答方法が変わってしまうのだが、内容自体に大きな違いはない。そしてGPT-4oの回答は質問に対する変更としてかなり満足な結果になっている。
現在、生成AIやそのモデルは発展途上にあり、フラッグシップモデルの性能は既存のモデルと比較して高いことが多い。生成AIの有用性を感じているなら、CopilotのみならずChatGPT PlusやChatGPT Team、ChatGPT Enterpriseのような最新の言語モデルが使用できるサービスの利用を検討するのは悪くない選択肢だ。
生成AIは有益だがときどき嘘をつくため、その内容に全幅の信頼をおいて利用することはできない。自分の詳しくない領域ということになればなおさらだ。しかし、手元で複数の生成AIサービスが利用できると、それぞれの生成AIサービスに同じ質問を投げて真偽判断に利用するといったこともでき、作業効率の改善につなげることが可能である。
付録: ショートカットキー
ショートカットキー | 内容 |
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「Windows」+「C」 | Copilot in Windowsの表示・非表示を切り替え |
付録: 対応バージョン
OS | バージョン |
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Windows 11 | Windows 11, version 22H2以降 |
Windows 10 | Windows 10, version 22H2以降のProおよびHome |
参考
- Copilot in Windows & Other AI-Powered Features | Microsoft
- Copilot documentation | Microsoft Learn
- Adopt, extend and build Copilot experiences across the Microsoft Cloud | Microsoft Learn
- Bringing the power of AI to Windows 11 - unlocking a new era of productivity for customers and developers with Windows Copilot and Dev Home - Windows Developer Blog