米Anthropicが提供する「Claude Cowork」の使い方について解説する本連載。Claude Coworkは、Anthropicが提供するAIエージェント型ツールで、ローカルのファイルを読み書きしながら作業を自動化できるのが特徴だ。
前回はClaude Coworkがそもそもどういうものか、インストールと初期設定、そして基本的な操作画面について紹介した。今回は、Claude Coworkに自然言語で指示を出し、ファイルの整理やPDFからの情報抽出といった処理を自動化する方法を解説する。
Claude Coworkで可能なファイル処理
まずは、Claude Coworkでどんなことができるのかを整理しておこう。本稿執筆時点でClaude Coworkが提供している主な機能としては以下がある。
- ローカルのファイルやフォルダーへのアクセス: サーバにファイルをアップロードすることなく、ローカルにあるファイルに対して直接読み取りと書き込みができる
- 作業の分割とサブエージェントでの実行: 複雑な作業を自動的に小さなタスクに分割し、サブエージェントを使って並列的に処理することができる
- 各種ファイル形式での出力: 数式を含んだExcelスプレッドシート、PowerPointプレゼンテーション、フォーマットされたドキュメントなどを生成できる
- 長時間にわたるタスクの実行: 処理に時間のかかる複雑なタスクでも、タイムアウトやコンテキスト制限によって中断することなく完了できる
- タスクのスケジュール実行: 指定した頻度で自動的に実行するようなタスクを作成できる
Claude Coworkの最も一般的なユースケースは、複数のファイルを一括で操作したり、指定したファイルを読み込んで自動で編集したりといった作業だろう。ファイルの移動やコピー、削除といった基本操作だけでなく、テキストファイルの編集、CSVやExcelファイルの加工、値の集計、PDFからのテキスト抽出、画像のリネームやフォーマット変換などにも対応する。
加えて、Claude向けの各種アドオンを活用することで、さらに多くの機能を利用できる。例えば、Claude Cowork自体はWebブラウザを直接操作することはできないが、「Claude in Chrome」というChrome拡張機能と組み合わせることで、ブラウザーを使ったタスクも実行できるようになる。また、Webサイトから情報を収集してローカルのファイルにまとめるなどといった作業も可能となる。ただし、Webコンテンツ経由で悪意ある指示が混入する「プロンプトインジェクション」などのリスクもあるため、インターネットへのアクセスを前提とした操作には注意が必要だ。
効果的な指示の出し方
Claude Coworkの強みは、自然言語での指示で日常のさまざまな処理をAIに任せられる点である。日常で使っている言葉で指示すればよいので、プログラムを書いたり設定ファイルを編集したりといった専門的な知識がなくても利用できる。
ただし、言葉の選び方によって結果が大きく変わることがあるため、指示の出し方には少し工夫が必要だ。端的に言えば、人に仕事をお願いするときと同じ感覚で、具体的に書くほど、期待通りに動いてくれる可能性は高くなる。
写真を整理してほしいときの指示であれば、単に「写真を整理して」だけではどんな風に整理すればいいのかわからない。この場合、次のようにどんな整理方法を希望するのかを明確に指定すると良い。
このフォルダーにあるJPEGファイルを、撮影日ごとのサブフォルダーに振り分けてください。
フォルダー名は「2025-08-15」のように「YYYY-MM-DD」の形式にしてください。
撮影日の情報が取得できないファイルは「未分類」フォルダーに入れてください
具体的な指示を書くためには、次のような点を意識するといいだろう。
- 対象: 何を(どのファイルやフォルダー)を操作するのか
- 操作内容: どういう処理をするのか(移動、コピー、名前変更、データの抽出など)
- 出力形式: どういう形で結果を出力して欲しいのか(ファイル形式、フォルダー名の形式など)
- 例外の扱い: 条件に合わないファイルがあった場合にどう処理するか
もちろん、最初から完璧な指示を目指そうとしなくてもいい。もしも指示が曖昧でAIが理解できない場合には、「これはどういう意味ですか?」といった形で追加の情報を求められることがある。また、実行結果が意図通りでなかった場合には、「もう少しこうしてほしい」というように修正の指示を出すこともできる。AIと対話しながら作業を進めていくのがClaude Coworkの使い方だと思えばいいだろう。
実践例1: 写真を撮影日ごとにフォルダー分けする
それでは、実際に試してみよう。今回は、旅行で撮りためた写真が一つのフォルダーにまとめて入っている状況を想定する。これを撮影日ごとのフォルダーに整理したい。
Claude Coworkでは作業対象のフォルダーを指定する必要があるので、まずはプロンプト入力フィールドの「フォルダで作業」で整理対象の写真が入ったフォルダーを選択する。選択時に「このフォルダー内のファイルを変更する許可」を求められるので、「許可」をクリックして先に進もう。
次に、プロンプトに次のように入力して指示を送ってみよう。
このフォルダーにあるJPEGファイルを、撮影日ごとのサブフォルダーに振り分けてください。
フォルダー名は「2025-08-15」のように「YYYY-MM-DD」の形式にしてください。
撮影日の情報が取得できないファイルは「未分類」フォルダーに入れてください
例外ケースの扱いまで指示に含めておくのが重要なポイントだ。写真ファイルによっては撮影日の情報が含まれていないことがある。その場合の扱いを指示しておかないと、処理が途中で止まったり、予期しない動作をしたりすることがある。
指示を送ると、Claude Coworkはすぐに処理を開始する。会話エリアには「フォルダーの中身を確認します。」のようにリアルタイムで進捗状況が表示される。また、右のパネルの進行状況欄には、作業内容がいくつかのタスクに分かれて表示されており、現在どこまで作業が進んだのかを一目で確認できる。
しばらく待つと、作業が完了して、会話欄にその結果が表示される。
フォルダーには370枚の写真があり、EXIFデータから撮影日を読み取ってフォルダー分けしてくれたことがわかる。プロンプトの指示では撮影日の取得方法を明確に指示していなかったが、AIはEXIFデータを確認すればよいと自分で判断してくれたようだ。1ファイルだけEXIFデータが付いていないファイルを混ぜておいたが、それはちゃんと例外として「未分類」フォルダーに格納してくれた。
AIが実際にどんな処理を行ったのかは、会話欄の履歴から確認できる。たとえば「EXIFデータから撮影日を取得して振り分けるスクリプトを実行します。」の部分をクリックすると、具体的にどんなスクリプトを作成して実行したのかがわかる。
どうやらEXIFデータを取り扱うライブラリを使って、Pythonスクリプトで一括処理したようだ。
実践例2:PDFから配当情報を抽出してCSV化
もう一つ別の例も見てみよう。Claude CoworkではPDFファイルも扱える。そこで、複数PDFファイルから特定の値を取り出して一覧表にまとめるというシーンを想定する。例えば、次のようなフォーマットのPDFファイルが複数あるとしよう。
ここから銘柄名や配当金など、確定申告に必要な情報だけを抽出してまとめたい。指示の内容は次のようになる。
フォルダー内のpdfファイルから、国内支払日、銘柄名、配当金等金額(円)、所得税、地方税の値を抜き出してcsvファイルにまとめてください。
CSVのファイル名は「配当金一覧.csv」にしてください。
読み取れなかった項目は空欄にしてください�
指示を出すと、Claude Coworkは早速作業を開始し、その進捗状況を会話欄に表示しはじめる。
ここで右パネルの「コンテキスト」欄に注目してもらいたい。スキルとして「pdf」というものが読み込まれている。Claudeでは、特定のタスクを処理するための専門的な知識や機能を「スキル」としてまとめ、再利用することができる。今回はPDFファイルを取り扱うので、そのために必要なスキルを自動で読み込んで活用しているわけだ。
さて、画像処理よりも複雑なタスクなので少し時間がかかるかもしれないが、しばらく待てばすべてのファイルを処理して結果を表示し、指示通りに「配当金一覧.csv」というCSV形式のファイルを出力してくれる。
処理内容は少し複雑だが興味深い。あくまで筆者の環境でのケースだが、簡単にまとめると、次のような処理を行っていた。
- PDFファイルからbashスクリプトでテキスト情報を取得し、それをテーブル形式で保持
- 日本語文字列を参考にして、どれが必要な項目(銘柄名など)の値なのかを推測
- その項目が正しいかをいくつかの方法で検証
- 項目を正しく特定できたと確信したところで、全ファイルから値を抽出
- CSV形式で出力
ポイントは検証の部分だ。ログを見る限り、始めは「所得税」として間違って「外貨源泉徴収税額」の値を取得してしまってた。しかし検証中にそれが誤りだと気付き、別の値を取得するように修正した。所得税と地方税は外貨と円貨の値があるが、「配当金等金額」として円を指定していたので、AIは円貨が適切だと判断してそちらの値を取得している。とても優秀だ。
もしもどうしても正しい値が取得できない場合には、指示内容に、目的の値がどの位置にあるのかをもっと詳しく教えてあげればよい。できるだけ具体的な情報を与えることで間違いを減らすことができる。さらに、作業時間や消費トークン数を減らすことにもつながる。
また、指示が複雑になったり、処理するファイルのパターンが増えるほど、予期しない動作が生じるリスクも高まる。そのため、いきなり本番のファイルで実行するのではなく、まず小さなフォルダーや複製したデータで動作確認をしてから本番に適用するよう心がけることが大切だ。






