採用活動する際も文章を書くことが多くあります。自社ホームページや求人サイトに掲載する求人原稿やスカウトメールです。予算があるなら外注することもできますが、自分たちで書かなければならないことも多いでしょう。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。

また、求人原稿の作成を外注したのに満足いくクオリティでなかった場合も、内製することになります。求人原稿の書き方はネットに多数出ているので、自分で調べて書くことはそこまで難しくはありません。ただし、時間がかかりますし、慣れていなければクオリティも低くなります。

採用活動の場合、応募してくれる人が減れば、その分コストが跳ね上がります。近年は採用コストが右肩上がりに高くなっているので、可能な限り抑えたいと考えているところも多いでしょう。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第29回

ChatGPTに求人原稿を書いてもらう

そんな作業こそChatGPTに任せましょう。あっという間に何パターンも書いてくれるので、自社にマッチする出力を取捨選択したりA/Bテストをしたりできます。大幅に作業時間を削減できるので、他の作業、例えば掲載する写真の撮影などに手間をかけられます。流石に求人ページに使う写真は、まだ生成AIで作成することはできません。

ChatGPTなら一瞬で生成できますが、プロンプトに「求人原稿を書いて」だけしか入力しないなら、欲しい文章が得られるわけがありません。どんな原稿が必要なのかはしっかりとプロンプトに入れ込む必要があります。

試しに、実際に「求人原稿を書いて」とだけ入れてみたところ、求人原稿のサンプルとしてソフトウェアエンジニアを募集する原稿を生成してくれました。仕事内容や応募資格、勤務地など、求人原稿のテンプレートのようなものが得られましたが、当然この原稿を掲載するわけにはいきません。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第29回

    「求人原稿を書いて」だけだとありがちなフォーマットが出力された

職種や必要な資格、会社概要などは決まっているはずなので、特に生成させる必要はないかもしれません。データを渡して、フォーマットに従って清書させることはできますが、その程度は手作業で行ってしまう方が楽です。

ChatGPTには、手間のかかる文章を作成させましょう。まずは、職種に合わせた文章を考えてもらいます。職種を指定し、魅力的な求人原稿を書くように指示します。その際、文字数を指定します。以前のChatGPTは日本語の場合、指定した文字数より少なく出力してきましたが、最近は数百文字単位であれば言うことを聞いてくれるようになりました。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第29回

    ChatGPTには手間のかかる文章を作成させる

いい感じの内容ですが、一切会社の情報を渡していないので、ふわっとした一般的な文章になっています。

続いて、自社の特徴を入れ込んだ原稿を作ってもらいましょう。複数職種の原稿を作成したり、手間をかけずにトライ&エラーを繰り返せるようにプロンプトをテンプレート化してみます。

若手を募集したいなら若手向けの文章、ベテランを募集したいならベテラン向けの文章を掲載すると効果が出やすいです。ちなみに、募集要項に欲しい人材の年齢や性別を記載するのはNGです。

平坦な普通の文章ではなく、ちょっとはじけた熱い文章が欲しい場合、そのようにプロンプトに入れ込んでおきましょう。流石に、ChatGPTと言えど、普通でない文章はうまく書けないことがあるのですが、それでもたたき台としては十分に利用できます。

ここでは「魅力的な」「熱い文章」「若い人が応募したくなる」などをちりばめました。また、キーワードの羅列になっても面白くないので、「自然なストーリーになるように」と指示します。

  • プロンプト

    あなたはベテランのライターです。20代~30代の若い人が応募したくなる魅力的な求人原稿を作成してください。###業種と###文字数を参考にして、全力で募集が殺到するような熱い文章を書いてください。###特徴も参照しつつも、すべての内容を入れる必要はありません。自然なストーリーになるように取捨選択して構築してください。
    ###業種
    企画・マーケティング
    ###特徴
    100店舗以上の飲食店を展開している
    本社で新規事業を創出する企画・マーケを行う
    異業種から歓迎
    若手が活躍できる環境
    役員の半数が30代
    社員は120人
    充実したリスキリング支援策を用意
    福利厚生も充実、完全週休二日制
    ###文字数
    2パラグラフ、計300文字

  • 出力

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第28回

    そつなく、いい感じの原稿を作成してくれた

いい感じの原稿ができました。もし、年齢を限定するような記述があったり、1パラグラフしか生成しなかったり、冒頭のアオリ文がいまいちだったら、出力の下にある再生成アイコンをクリックして、作り直してもらいましょう。新しいセッションでやり直すのもありです。

テストでは「30代の役員と」と30代しかいないように勘違いしそうな記述や「急成長を遂げる飲食業界」など、パブ・居酒屋業態では事実と異なる文章が生成されることもありました。どちらも、見る角度によっては事実なのですが、求人広告に書くのはリスキーです。このギリギリのジャッジをするのが人間の役割になります。

見出しを作成する

次に、見出しを作ってもらいましょう。求人サイトによっては大きくキャッチコピーのように使われることもあります。この1文を見て、応募するかどうか決める人も多いので、魅力的な見出しにしてもらいましょう。

その際、「30代役員」「若手が主役」「若手歓迎」などは年齢を制限しているようにも見えるので、特に見出しからは外しておく方がよいでしょう。そのため、年齢には言及しないようなプロンプトも入れました。

30文字くらいで書いてほしかったのですが、30文字と指示すると20文字くらいしか書かないので、40文字と指示しました。まだ、短文の文字数は言うことを聞いてくれないようです。

  • プロンプト

    この求人原稿から見出しを作成してください。語尾は「~を募集」または「~を募集します」などにして、若い人が応募したくなるようなフレーズで10パターン書いてください。ただし、年齢には言及しないでください。文字数は必ず40文字で短くしないでください。

  • 出力

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第28回

    10パターンの見出しを生成した

企業の特徴も入れた8番などはいい感じではないでしょうか。1番、2番、3番、6番、10番も使えそうです。ChatGPTはこのような使えるキーワードが多数ある中から、いい感じのものを組み合わせるのが得意です。何パターンでも出してもらい、出来のいい見出しを見つけましょう。

ちなみに、1プロンプトで出すだけでなく、このままChatGPTと会話を続け、ブラッシュアップすることが重要です。例えば、8番がいい感じだと思ったなら、似た見出しを列挙してもらいましょう。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第28回

    似た見出しを列挙してもらった

パーソナライズされたスカウトメールを書いてもらう

求人サイトによっては、応募を待つだけでなく、求職者に直接メッセージを送ることができます。このスカウトメールも内容次第で返信率が大きく変わります。相手は自社のことを知らない状態なので、興味を持ってもらうことが重要になります。

スカウトメールのテンプレートも用意されていると思いますが、ダイレクトリクルーティングは「あなただけ特別に」という印象を与える必要があります。

テンプレートよりも毎回、新たに文章を生成する方が新鮮です。求職者の個人情報以外の情報、例えば自己紹介や経歴、希望条件などをChatGPTに入力し、パーソナライズされたスカウトメールを書いてもらいましょう。

利用頻度が高いプロンプトなので、テンプレート化しておくと手間が省けます。書き出しだけは統一して問題ないので、指定しておきます。しっかりと担当者の役職まで入れておきましょう。

そして、導入から自社アピール、アプローチまで、どんな内容を書きたいのか希望を入れます。あまり持ち上げすぎると嘘くさくなる文章になってしまうので、人間が塩梅を見極めましょう。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第28回

    求職者の情報をChatGPTに渡す。ここではWordファイルを使用した

  • プロンプト

    あなたはベテランの採用担当者です。求人サイトから送るスカウトメールの本文を作成してください。求職者の情報は添付のWordファイルを参考にしてください。メールは丁寧に、あなたに興味があるという特別感を出してください。テンプレートを使ったメールのように見えなくしたいです。
    #書き出し
    はじめまして。
    トゥールビヨン社採用担当をしております人事部長の田中と申します。
    #導入
    求職者の経歴を見て、話をしたいという内容を書く。求職者のどんな経験から、トゥールビヨンでどんな部署で活躍できそうか、評価している旨を入れる。
    #アピール
    求職者の希望を分析し、期待に応えられる環境を用意できると丁寧にアピールする。その環境はホームページなどで公開しておらず、求職者にだけ教えている、と特別感を出す。
    #アプローチ
    他にも伝えたいことがあるので、カジュアルに話をしたい、と伝える。もちろん、この時点で面接に進みたいのであれば、それも可能だという文面にする。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第28回

    求職者の情報をChatGPTに渡し、プロンプトを入力する

  • 出力

    件名: 山田太郎様のご経歴に関してカジュアルにお話しさせていただきたい件
    山田太郎様

    はじめまして。 トゥールビヨン社採用担当をしております人事部長の田中と申します。
    この度、山田様の素晴らしい経歴を拝見し、是非一度お話しできればと思いご連絡差し上げました。特に、マーケティング業界での10年以上にわたるご経験と、デジタルマーケティングおよびプロジェクトマネジメントにおけるご活躍が大変印象的でした。トゥールビヨン社では、現在新規マーケティング部門の立ち上げを進めており、山田様のようなデータ分析に基づいた戦略立案と実行力を持つ方に大いにご活躍いただけると確信しております。
    さらに、山田様が次のステップとしてより大きなプロジェクトに貢献したいというお考えに深く共感いたしました。当社では、ホームページでは公開していない限定的なプロジェクトをいくつか進行中であり、これらはまさに山田様の希望にマッチする内容かと存じます。例えば、新しいデジタルプラットフォームの開発や、グローバルマーケットへの進出を見据えた大規模なキャンペーンの実施など、挑戦しがいのある環境をご用意しております。
    他にもお伝えしたいことが多々ございますので、ぜひ一度、カジュアルにお話しできればと思います。もちろん、もしこの時点でより具体的に進めたいとお考えであれば、その旨もご遠慮なくお知らせください。面接の日程も合わせて調整させていただきます。
    それでは、山田様からのご返信を心よりお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。
    田中
    トゥールビヨン社 人事部長
    tanaka@example.com
    03-1234-5678

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第28回

    求職者に特化したスカウトメールを生成した

完全に求職者に特化したスカウトメールを作成できました。これを20人分作るとなると、人間なら何時間かかるかわかりません。ChatGPTにこのレベルまでサクッと作ってもらい、人間はブラッシュアップと最終チェックを行えばよいのです。20人分でも1、2時間で終わることでしょう。

例えば「山田様の素晴らしい経歴」が言い過ぎなら「素晴らしい」を削除します。「新規マーケティング部門の立ち上げ」など予定にない、というのであれば書き直します。そもそも、今回のプロンプトには企業側の情報を入れていません。

その人をスカウトしたい、という前提で、求職者の情報から本文を生成したためです。もし、自社のニーズや求める情報もがっつりとメールに入れたいのであれば、別のファイルに記載し、一緒に読み込ませましょう。

原稿や見出し、メールの本文など、慣れていたとしても作成するのには時間がかかります。ChatGPTを賢く使って業務効率を向上していきましょう。