業界やビジネスモデルについて深く理解しておくことが重要です。○○業界について、と検索してぴったりの情報が見つかればいいのですが、難しいこともあるでしょう。そんな時は、ChatGPTの出番です。分析といっても、何をどう分析すればわからない場合は、それも聞いてみましょう。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。
業界を分析してもらう
ストレートに「お酒のEC業界について分析したいと思います。まずは、業界をよく理解するために使われる代表的な分析手法をリストアップしてください」と「ChatGPT 4o」に入力します。
すると、6種類の分析手法を提示してくれました。従来であれば「○○業界について○○分析をしてください」などと1つずつ入力していたのですが、ChatGPT 4oの性能はとても高く、まとめて出力してもらうことができるようになりました。
とは言え、「全部それで分析して」と入力すると、頑張って出力してくれますが、どうしてもそれぞれの分析が弱くなってしまいます。
そこで、自動的に出力を分割し、ユーザーの指示を待ってから続きを書くようなプロンプトにしてみましょう。分割することで、1つの分析に集中して処理してくれるので、クオリティが高くなり、ボリュームも増えます。
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プロンプト
リストアップした項目を1番目から順番に実行してください。分析は、具体的に詳細にお願いします。1項目分析し終わったら、「続けますか?」と表示して入力を待ってください。「続けて」と入力されたら、次の分析を実行してください。
出力
分析をしっかりと行ってくれました。1つの分析が終わると、指示を待ってくれるので「続けて」とか「はい」と入力すると次の分析が表示されます。
リストアップされた項目が終わると完了するが、さらに「続けて」と入力すると見当違いの分析が始まることがあるので注意しましょう。
分析の中で深堀りしたい項目があれば、壁打ちさせてもらいましょう。ここから先は、人間相手と会話するのと同じです。
ChatGPTが出力を忘れることもあるので、念のため質問したい部分をコピペし、プロンプトを入力するとよいでしょう。ここでは、SWOT分析で提示してくれた機会の3つ目、サブスクリプションモデルの導入について具体的なアイデアを出してもらいました。
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プロンプト
サブスクリプションモデルの導入:
定期的に商品を届けるサブスクリプションサービスを導入することで、安定した収益を確保することができます。
とありますが、お酒のECサイトでサブスクリプションを利用してもらうためにはどんなアイディアがありますか?
出力
市場規模や年間成長率、ビジネスモデル、業界の課題などを分析する
どんな分析をしてほしいのかが大体わかっているなら、出力フォーマットを指定するほうが望んだ結果が得やすくなります。市場規模や年間成長率、将来の予測、ビジネスモデルなどを出力させてみましょう。
就職活動で分析しているなら、その業界の大手企業や働く社員が抱えがちな不満などを出力させてみましょう。新規参入を考えているなら業界の課題をあらかじめ把握し、対応策を講じたり、その課題を解決するビジネスを考えたりできます。
ただし、ChatGPTはこのような調査が苦手です。出典がわからず、数字が間違っていることも多々あります。しかし、ChatGPT 4oは性能が高く、世の中に広く出回っている情報であれば、きちんと扱えるようになってきています。概要を掴むためには十分活用できるでしょう。
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プロンプト
あなたはプロのマーケターです。###業界について、分析、調査を行います。###フォーマットに従って具体的に、詳細に分析してください。
###業界
EC業界
###フォーマット
1:日本、世界の市場規模
2:年間成長率
3:2030年や2040年の予測
4:主なビジネスモデル
5:大手企業トップ3
6:社員が抱えがちな不満
7:業界の課題、問題
プロンプトと出力
シンプルなプロンプトですが、一発で7項目1461文字の出力が得られました。ただし、世界の市場規模が4兆ドルと、実際よりも小さい数字が出ました。
このようなことがあるので、現在のChatGPTを検索用途として使うのは避けたほうがよいのです。しかし、6兆ドルのところ4兆ドルと表示したからと言って、業界の概要を分析する結果にはほど影響しません。
ChatGPTをビジネスで活用するには、効率が良い使い方をするスキルが必要になります。外部から依頼された業界の分析レポートを作成するなら、どんな構成にするか、どんな情報を入れ込めばいいのかをChatGPTに聞くようにします。
数字はしかるべき機関にアクセスし、自分で調べましょう。そのような用途で、今回のように市場規模などを聞いてはいけません。
業界やビジネスモデルについて理解を深めたいなら、今回のようなプロンプトを活用できます。もちろん、ニッチな業界などでこのプロンプトがまともに動作しないこともあります。
プロンプトを改良することで分析に成功することもありますが、そんな時は情報が出回っていないためにAIの学習量が足りていないことが多いです。ぱっと諦めて、別の方法で対応するようにしましょう。
リアルでは、ハサミとニッパーとのこぎりは用途に合わせて使っていると思います。ChatGPTも万能ではなく、ツールの1つです。さまざまな使い方ができるマルチツールではありますが、間違った使い方をすると望んだ出力が得られないということは覚えておきましょう。
さて、1461文字とは言え、それぞれの項目はさらっと解説されています。内容のある出力だったので、より詳細に解説してもらいましょう。こちらも1項目出力したらユーザーの入力を待ち、入力があったら次に進むようにプロンプトを構築します。これで、それぞれの項目が2~3倍の文字量で詳しく解説してくれるようになります。
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プロンプト
それぞれの項目を詳細に具体的に解説してください。1項目を解説したらユーザーに「続行しますか?」と聞いてください。「はい」と入力されたら、次の項目の解説に進んでください。
出力
業界の理解を深めるためにキーワード検索した結果を分析してもらう
どうしてもリアルタイムの情報を元にして、ChatGPTに解説して欲しい、というのであれば検索結果を元にまとめさせることもできます。
しかし、情報が古かったり、そもそも海外のウェブサイトを検索したりして、正確な情報が出てこないこともあります。プロンプトに検索の指示を入れ込むと簡単にまとめてしまう傾向もあります。
とは言え、ChatGPTは検索が苦手、というのも時間の問題かもしれません。OpenAIは先日「SearchGPT」を発表しました。まだプロトタイプ版のみのリリースで、利用する場合はウェイトリストに登録し、解放されるのを待つ必要があります。筆者も申し込んでいますが、まだ使えていません。
SearchGPTはウェブの情報をAIで扱うことで、正確な回答をタイムリーに提供できるようになります。速く使ってみたいですね。
現時点でChatGPTが備える検索機能を利用するなら、ざっくり使いつつ、インサイトを得るような活用法がおすすめです。例えば、特定のキーワードで検索させて、その上位のサイトを分析し、業界の理解に役立てるのです。
ただし、こちらも正常に動作するとは限りません。10個のサイトを検索するように指示しても、5~6件くらいしか検索してくれないのです。数字を増やしておくと、狙った情報が得られるようになります。情報自体は正確なことが多く、ソースになっているWebページのURLも付いているので裏取りが簡単です。
ここでは「中古物件のリフォーム」について調べてみました。どんなインサイトがあるのか知りたいので、まずは3つ表示させます。
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プロンプト
「中古物件のリフォーム」というキーワードで検索して、検索結果に表示される上位20個のウェブサイトを分析してください。業界を深く理解するために必要なインサイトを3つリストアップし、それぞれを詳細に解説してください。
プロンプトと出力
すると、費用の調整、法律的な確認、物件選びの慎重さが重要であることがわかりました。ここから、必要に応じて他のインサイトを出させたり、気になる項目を深堀りしていきましょう。
以上が、ChatGPTにマーケティングや就職時、起業時に役立つ業界分析をしてもらうプロンプトになります。情報が少ない業界だと詳細な出力が得られないこともありますが、多くのケースで十分な出力が得られると思います。
常識的な内容も多いですが、知らなかったり見落としていた内容に出会うこともあります。まずは、自分の詳しい業界についてチェックしてみてはいかがでしょうか。