今年3月にAnthropicから「Claude 3」という生成AIサービスがリリースされました。ChatGPTの性能を超えたなどと言われることもあり、注目を集めています。Anthropicは、このClaude 3で動作させるためのプロンプトを生成するプロンプトジェネレーターを用意しています。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。
AIが考える最適なプロンプトにはどんなテクニックが使われているのでしょうか。今回は、Claude 3のプロンプトジェネレータでどんなプロンプトが生成されるのかチェックしてみましょう。
プロンプトジェネレーターでペルソナ作成のプロンプトを生成する
プロンプトジェネレーターはAnthropicのコンソールからアクセスします。「Generate a prompt」をクリックすると、タスクの入力画面が開きます。英語表記ですが、日本語で入力しても動作します。
ここでは「高級化粧品を購入する消費者の詳細なペルソナを日本語で作成してください」と入力し、「Generate Prompt」をクリックします。
プロンプトが生成されたら「Start Editing」で編集画面に移行し、出力させることができます。しかし、今回は生成されたプロンプトをChatGPTで実行してみましょう。
生成されたプロンプトを見てみましょう。まずは、「あなたは日本の高級化粧品ブランドのマーケターとして、ターゲット顧客のペルソナを詳細に描写する役割を担っています」とAIのロールを指定しています。
次に「TARGET_PERSONA」として変数が入っています。この部分は自分で入力せよ、ということです。プロンプトジェネレーターの編集画面では、自動的に入力を求めてきますが、ChatGPTで使う場合はあらかじめ入力しておきましょう。あとはそのままChatGPTに貼り付けて出力させてみます。
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プロンプト
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出力
<persona>
名前:佐藤あやか
年齢:34歳
性別:女性
居住地:東京都港区
職業:外資系広告代理店のアカウントマネージャー
年収:800万円
佐藤あやかさんは、東京の都心に住む独身のキャリアウーマンです。彼女はファッションと美容に大変興味を持っており、週末には高級スパでリラックスするか、新しいカフェを探訪するのが趣味です。SNSを活用し、美容や健康に関する情報を積極的に収集しています。
価値観としては、「自分自身への投資は惜しまない」という考えを持っています。化粧品に関しては、品質とブランドのイメージを非常に重視しており、自分のライフスタイルに合った製品を選ぶことを大切にしています。彼女は、自分の肌に合った商品を見つけるために、クチコミやインフルエンサーのレビューを参考にしながら選んでいます。
購買行動としては、月に一度は新しいスキンケア商品や化粧品を試すためにデパートやセレクトショップを訪れます。高級化粧品ブランドの限定アイテムや新製品が出ると、すぐにチェックし、購入することもしばしばです。購入時の意思決定プロセスでは、成分と製品背景の透明性を重視し、持続可能性や倫理的な生産プロセスを行っているブランドを選ぶ傾向にあります。
彼女はキャリアと自己実現を重視する一方で、周囲とのコミュニケーションや交流も大切にしており、美容に関する最新のトレンドを友人や同僚と共有することを楽しんでいます。
</persona>
実際にビジネスで利用できそうなペルソナを生成してくれました。プロンプトで指示している内容も一通り網羅しています。
上記の出力では記載していませんが「ペルソナスケッチ全体を<persona>タグで囲んでください」と指示しているので、<persona>や</persona>で区切られています。試しに、この1文を削除したところ、名前から年収までの箇条書きがなくなり、文章として記載されるようになりました。もちろん、ペルソナのスペックは箇条書きの方が適しています。
また、ペルソナの生成後、「このように、恵美さんは自分自身とその生活スタイルに誇りを持ち~」などと不要なまとめを追記するようになりました。出力をタグで囲ませるのは効果がありそうです。
ちなみに、ChatGPTに直接「高級化粧品を購入する消費者の詳細なペルソナを作成してください」と入力したところ、10項目の箇条書きが出力されました。必要最低限の情報は入っていますが、ストーリーがほぼないので使い物になりません。やはり、使える出力が欲しいなら、しっかりとプロンプトを構築する必要があるのです。
クオリティアップの文言をちりばめて企画案を考えてもらう
次は、企画案の作成をしてもらいます。プロンプトジェネレーターに「媒体の企画会議に提出する企画を10個、日本語で考えてください」と入力してみました。なぜか何度入力しても英語で出力されてしまうので、プロンプトを日本語に翻訳してからChatGPTに入れました。
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プロンプト
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出力
1.「時短大国ニッポン」:日本のビジネスパーソンが実践する独自の時間管理術とその効果を特集し、他国の方法と比較します。
2.「週末投資家の秘密」:忙しいビジネスパーソンが週末だけで行う効果的な投資戦略を紹介し、専門家のアドバイスを交えて解説します。
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プロンプト
1の内容を具体的に紹介してください。
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出力
「時短大国ニッポン」というメディアピッチでは、日本のビジネスパーソンが実践している時間管理術に焦点を当て、彼らがどのように効率的に仕事を進めているかを掘り下げます。具体的には、以下の内容を特集します。
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ケーススタディ:実際に時間管理を効果的に実践している複数のビジネスパーソンを取り上げ、彼らの日常と特別な工夫を詳細に紹介します。例えば、メールの処理、会議の運営、タスクの優先順位付けの方法など。
生成AIはある言葉に続く可能性が高い言葉を繋げるので、出力が一般的な内容になる傾向があります。そのため、「一般的なコンセプトではなく、説得力のあるオリジナルなアイデアでなければなりません」と指示しているようです。直接ChatGPTに1文のプロンプトで出力させた結果と比較すると、確かにオリジナリティがやや向上していました。
そのほかにも「メディア幹部の注目を集めるような」や「ユニークで創造的、かつ魅力的」「プロフェッショナルなメディアプランニングの場で発表するのに適したピッチ」など、クオリティアップのための文言が複数ちりばめられていました。劇的に出力が変わるわけではないので、筆者は普段入れないことも多いのですが、やはり入れておいたほうがよいでしょう。
出力フォーマットに関しても細かく指定していますが、ChatGPTなら指示しなくても箇条書きにしてくれるので不要だったかもしれません。なお、生成された10個の企画案はどれも読んでみたいものばかりでした。
試しに、具体的な内容を説明させたところ、そのまま企画会議に出せそうな内容が出力されました。この内容をたたき台にすれば、提出物の作成時間を大きく短縮できることでしょう。
企業アカウントがSNSに投稿する内容を考えてもらう
企業のSNSアカウントで投稿する内容も考えてもらえます。プロンプトジェネレーターに「SNSの企業アカウントでバズりそうな投稿の内容を考えてください」と入力してみましょう。
ロールの設定が、SNS担当やマーケティング担当ではなく、「あなたは企業のSNSアカウントの投稿内容を考えるAIアシスタントです」と雑に指定されています。適切な役職や部署を考えるよりも、ざっくりと目的をそのまま入れても効果があるようです。
「バズる投稿を考えてください」ではなく、アイデアを考える際に意識する4か条を指定しているのが流石です。もし、意識すべき内容がわからないなら、ChatGPTに別セッションで聞いてでも入れるべきでしょう。変数は会社名とプロダクト、ターゲット層の3つが入っていたので、情報を入力し、ChatGPTに入れてみます。
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プロンプト
あなたは企業のSNSアカウントの投稿内容を考えるAIアシスタントです。以下の情報を参考に、バズりそうな投稿のアイデアを3つ提案してください。
株式会社レベリング
オウンドメディア向けAIライターサービス「カクモノ」
企業のマーケティング担当者
各投稿アイデアは、以下のフォーマットで提示してください。
投稿内容
この投稿が効果的だと思う理由
投稿内容は、簡潔でありながら読者の興味を引くものにしてください。また、企業の製品・サービスや、ターゲットとする層に関連性のある内容にしてください。
バズる可能性が高いアイデアを考えるために、以下の点を意識してください。
・ターゲット層の関心事や悩みに寄り添った内容か
・企業の強みや独自性が伝わる内容か
・読者の共感を得られるストーリー性があるか
・ビジュアル的にインパクトがあり、目を引くか
それでは、3つの投稿アイデアを考えてみてください。投稿内容はタグ内に、なぜその投稿が効果的だと思うかは タグ内に書いてください。
出力
プロダクトに関しての情報をほとんど入力していないのに、使えそうな文章が瞬時に生成されました。とりあえずは3つしか出力されませんが「もっと考えてください」と入力すれば、他のパターンも考えてくれます。
詳細なプロダクトの情報をプロンプトに含めれば、さらに具体的な投稿を出力するようになります。どれも問題のない文章で、炎上するような内容はありませんでした。ハッシュタグも付いています。
逆に生成された投稿を見て、24時間365日対応できることに価値があることや「初月無料&特別レポートプレゼント」が効果を期待できること、無料ウェビナーを開催したほうがよいこと、などに気が付くかもしれません。
以上が、Claude 3向けプロンプトジェネレーターが作成するプロンプトの分析となります。びっくりするような離れ業というよりは、基本に忠実で、しっかりとプロンプトに情報を盛り込むことを重視しているようです。出力をタグで囲んだり、クオリティアップのための抽象的な言葉をちりばめるなどは、すぐに活用できそうなので参考にしましょう。