ChatGPTを業務で活用し、作業時間を短縮することで大幅な効率アップが見込めます。とは言え、大仰なプロンプトを時間をかけて考えるのも本末転倒です。何か頭を使わなければいけない時、何か作業しなくてはいけない時にサクッとChatGPTを使うようにしておくことが必要です。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。

しかし、毎回入力するのは手間がかかるので、手入力していると短いプロンプトになってしまいます。ChatGPTはそれでもそれっぽく処理してくれますが、内容のない出力になってしまうのがネックです。

本連載で紹介しているように、ある程度は前提条件や出力フォーマットなどを指定する必要があります。そのため、頻繁に使うプロンプトはテンプレート化しておき、コピペして使えるようにしておくと便利です。

プレゼン資料や企画書、記事、ペルソナなどを作成するプロンプトについては、すでに連載で取り上げているので、今回はそのほかの一般的な業務を推敲する際、時短になるようなプロンプトの例を紹介しましょう。自分の業務をテンプレート化する際の参考にしてください。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第25回

    イメージ画像

プロジェクトを任された時にざっくり何をするのかChatGPTに聞く

業務を遂行する際は、ステップごとにどんなアクションが必要なのか考える必要があります。自分で一から考えてもいいのですが、ChatGPTに考えてもらうと時短になります。その際、業務を遂行するにあたって注意すべきところがあれば、最初に教えるとトラブルを回避できる可能性が高まります。

プロンプトはテンプレートとして使えるように、「###」などの文字で区切りましょう。命令文は、シンプルに業務内容を遂行するためのアクションプランと注意点を書いて、という内容にしました。ニーズに合わせて、「3ステップで」や「高校生にもわかりやすいように」などと条件を追加するとよいでしょう。最後に、出力フォーマットとして、アクションプランと注意点を指定しておきます。

  • プロンプト

    一般的な日本企業において、###業務内容を遂行するために必要なアクションプランと注意点を箇条書きでリストアップしてください。
    ###業務内容
    kintoneを導入し、日報管理システムを移行させ、提出率100%を目指す。
    ###アクションプラン
    ###注意点

  • 出力

    ###アクションプラン
    1.プロジェクト計画の策定: kintoneの導入に向けたプロジェクトチームを組成し、ゴール設定、スケジュール計画、リソース配分を行う。
    2.現状分析: 現在の日報管理システムの使用状況や問題点を分析し、改善点を明確にする。
    3.kintoneカスタマイズ: 日報のテンプレートを作成し、必要に応じてフィールドをカスタマイズする。
    4.データ移行計画: 既存のデータを新システムへ安全に移行する方法を計画する。
    5.試験運用: 少人数での試験運用を実施し、問題点を洗い出し改善する。
    6.社内トレーニング: 全社員を対象にkintoneの使用方法をトレーニングし、システムの理解を深める。
    7.本格運用開始: 全社的に新システムの使用を開始し、定期的にフォローアップする。
    8.フィードバックの収集と改善: 利用者からのフィードバックを収集し、継続的にシステムを改善する。
    ###注意点
    1.従業員の抵抗感: 新システムへの移行は従業員にとって負担になることがあるため、十分な説明とサポートを提供する。
    2.データの安全性: 移行中にデータが失われないよう、バックアップを取る等の安全策を施す。
    3.カスタマイズの過度: 必要以上にシステムをカスタマイズすると、管理が複雑になりがちなので注意が必要。
    4.トレーニングの重要性: 効果的なトレーニングなしにシステムを導入しても、利用者の理解が不足する可能性がある。
    5.進行管理: プロジェクトの進捗を定期的にチェックし、計画通りに進んでいない場合は迅速に対策を講じる。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第25回

    業務を遂行するにあたって注意すべきところがあれば、最初に教えるとトラブルを回避できる可能性が高まる

今回は、8つのアクションと5つの注意点が出力されました。アクションプランも注意点も、一般的な内容とはいえ、問題のない内容でした。ここから、必要に応じて、営業担当に説明してもらうとか、試用プランで試してみるといった内容を追加していけばよいでしょう。

もちろん、自分で考えてもこの内容を出すことはできると思いますが、ネットで検索したり本を読んだり、以前のプロジェクトの資料を引っ張り出してきて、考えをまとめているとあっという間に30分、1時間と時間が過ぎてしまいます。まずは秒でたたき台を作成し、修正したり追加するほうがはるかに効果的です。

イベントを開催することになったら進行表をChatGPTに作ってもらう

イベントを担当することになり、進行を考えなければならなくなったケースを考えてみましょう。イベントの内容や出席者などは当然決まっていると思います。それらの情報を入れるテンプレートを作っておき、さくっと進行表のたたき台を作ってもらいましょう。

イベントごとに内容が異なるので、ベースの命令文はシンプルにしておき、###で区切って情報を入力させるようにします。イベント開催なら、内容と出席者、そして決定事項を条件として入力しましょう。必要に応じて、開催時間や終了時間、舞台転換などの要素を追加しておけば、さらに詳細なたたき台を作成できます。

  • プロンプト

    一般的な日本企業において、###イベント内容を実施するための###進行表と###備考、###注意事項を作成してください。その際、###出席者と###条件を参照してください。
    ###イベント内容
    新製品「トゥールビヨン」発表会
    トゥールビヨンの試飲会も行う
    ###出席者
    新聞、雑誌などの記者、ブロガー
    ###条件
    開催時間は全部で3時間。挨拶とコメントの時間は短めにする。
    海底熟成ウイスキー「トゥールビヨン」の2024年リリースを発表する
    司会は部長、最初に社長のあいさつ、締めは部長
    途中、S社の専務に登壇していただき、コメントをもらう
    中間で5分の休憩をはさむ
    ###進行表
    時間、内容、担当者の表形式で生成してください
    ###備考
    ###注意事項

  • 出力

    • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第25回

      進行表をChatGPTに作ってもらう

提出前に作成した文章をChatGPTにチェック・校正してもらう

最後に原稿をチェックするプロンプトを紹介します。「チェックして」だけだと、様々な切り口のアドバイスをまとめて表示してしまうので読みにくくなります。そのため、内容によって###で区切って表示してもらようにします。

実際に、ほとんど修正する必要のない文章でも、ChatGPTは頑張って指摘してきます。そのため、無理があったり、突拍子もない指摘が並んでほとんど役に立たないこともあります。しかし、それは原稿を無理に手直ししなくてもよいということなので、その場合は指摘をスルーしましょう。

とは言え、時々明らかな誤字脱字を見つけてくれますし、文脈がつながらないところを指摘してくれます。何度も集中して読み直さずとも誤字脱字を抽出できるのは大きな時短になります。文脈や内容がおかしいところは自分で読むだけでは気が付かないことも多いので、指摘はとてもありがたいところです。

  • プロンプト

    あなたはベテランの編集者です。以下の###原稿を読み、###条件に従って校正し、###誤字・脱字・誤用の部分、###文脈、内容がおかしい部分、###ブラッシュアップするためのアドバイスを出力してください。
    ###条件
    #プロンプトや#出力の部分はAIの出力をコピーしているだけなので判定しなくていいです。途中で#01のように画面のキャプションが入っているので、その部分は本文に含めず判定してください。
    ###誤字・脱字・誤用の部分
    ###文脈、内容がおかしい部分
    ###ブラッシュアップするためのアドバイス
    ###原稿
    ※テキストを貼り付ける

  • 出力

    • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第25回

      文章をチェック・校正してもらう

実際に、誤字脱字や根拠のない断定を入れたブログ記事をChatGPTを生成し、チェックしてもらいました。誤字脱字部分は3カ所とも指摘してくれました。

締めの部分を「AIは絶対に使わないように」という意見でまとめたのですが、きちんと拾い上げて指摘してくれています。ブラッシュアップ部分で文章が固い、とChatGPTの特徴を理解しているのは面白いところですね。

以上が、さまざまな業務でChatGPTをサクッと使って効率をアップさせるプロンプトです。今回は、効果の大きそうな業務を効率化してみましたが、多くのデスクワークでChatGPTを活用できます。普段行っている仕事をテンプレート化しておいて、必要に応じてChatGPTに貼り付けて活用しましょう。

相手はAIなのですから、必ずしも完ぺきな回答が得られないのは当たり前のことです。ただし、人が適切な情報をプロンプトとして渡し、人が出力を評価して取捨選択するのであれば、中の作業はAIに任せた方が圧倒的に時短になります。ぜひ、ChatGPTを利用して、業務効率をアップさせてください。