今回の選書
180日でグローバル人材になる方法(天野雅晴) 東洋経済新報社
選書サマリー
日本のグローバル化が進んでいるが、あまりうまくいっていないようだ。原因の一つは、日本人が世界に通用する「グローバル人材」になっていないからだ。
日本人がグローバル人材になる上で、二つの大きな「壁」が立ちはだかっている。最初の壁は「言葉の壁」だ。一般に、他国の人と比べて日本人は英語が苦手だ。
もう一つの「壁」は「ネットワークの壁」だ。日本人と海外の人の会社や組織に対する考え方の違いが「グローバル化」のスピードを遅らせているのだ。
日本はいわゆる「縦割り社会」だ。いったんどこかの組織に所属すると、人はなかなか外部とのつながりを持たない。組織が個人の居場所を定義するから、個人の自律性は重要ではない。
一方、米国では、会社や組織がダイナミックに変化して不安定だ。人は個人の自律性を優先させ、組織の枠を越えて「個人レベル」でつながっている。それが人を動かし、組織や会社が出来上がる。
ネットワークの壁を越えるために、日頃からやっておくべきトレーニングがある。まずは「自己主張訓練」だ。海外の人は、日本人に比べて積極的に発言する。
まず、色々なものに自分の考えを持つ。誰かと話す際に、自分の考えをしっかり言えるようにするためだ。そして、できるだけストレートに「結論」から言うようにする。
次に、相手の主張をきちんと聞くことだ。主張はするが強要はせず、お互いの考えや選択を尊重して「共存」することをこの訓練で養うべきだ。これが、英語でできればベストだ。
同時に大切なことが「対等姿勢」だ。これを実践するには、協調より共存を意識することだ。自分自身をしっかり持ちつつ、周りの立場や考え方も尊重する姿勢が大切だ。
そして、どんな人にも常に自然体で接し、互いに対等に意見や考えを発言し合うべきだ。「対等姿勢」が実践できれば「自己主張」も自然にできるようになるはずだ。
さらに、自分の「得意分野」に関するトレーニングを十分に積んでおくことだ。横社会の基本は分業だ。企業でも個人でも、互いの「得意分野」で分業する。
その組合せをダイナミックに変えることで市場のニーズに対応する。同時に、互いの得意分野も進化させなければならない。それができなければ、周りに置いていかれてしまう。
加えて、日本人には、言葉や文化的背景の違いによるハンディがある。だから、それを補う意味でも、何かアピールできる得意分野を持つことが大きな強みになる。
最初は趣味の範囲で構わない。たとえば、ワイン好きなら徹底的にワインの勉強をしておく。海外にもワイン好きはいるから、それがきっかけで仲良くなり、ネットワークに入り込めることもある。
ただし、仕事に直接つながらない得意分野だと、かなりのレベルまで究めなければパワーにならない。一方、仕事で得意分野を持つ人なら、分業を任せるに値する日本人は少なくない。
自分の得意分野を持ち、それを強くアピールすれば、たとえ英語がうまくしゃべれない人でも、ネットワークの壁を越えることができるはずだ。
得意分野を伸ばす道筋が見えたら、今度は海外人脈の構築だ。そのためには二つの鉄則がある。まず、人脈の構築には自然な理由づけが必要だ。それなりの理由がなければ、話はその場限りだ。
一番の理由は、やはり仕事だ。ただ、仕事だけではチャンスは減る。これを増やすには、自分の今の仕事や「やりたいこと」に関する外の集まりやイベントなどに参加することだ。
二つ目の鉄則は、自分のためより、相手のためを考えることだ。もちろん、結果的にはお互いのためなのだが、相手にメリットが見えなければ何も始まらない。
海外の人が集まる場所に行ったとき、力を発揮するのは、自分の得意分野だ。海外人脈はそのまま世界のネットワークにつながる。日本でも海外の人とのネットワーキングを練習することが重要なのだ。
選書コメント
日本のビジネスパーソンが、短期間でグローバル人材に変身し、最前線で活躍できるようになるには、いったい何をしたらいいのか? わかり易く、具体的にアドバイスしてくれる本です。
日本の企業や人材が、中々グローバルに活躍できずにいます。その理由を、主に「ネットワーク化への適応の遅れ」と「言語の問題」に絞り、それぞれの対策を紹介してくれます。
さらに、短期間でグローバル化する具体的な方法として、米国をハブにグローバルに適用する方法を推奨します。これにより、半年で、グローバル人材に生まれ変わるカリキュラムを教えてくれます。
著者は、アメリカの大学を卒業、就職ののち、コンサルティングの会社を起業した人物です。自らの実体験と仕事の実績を通して書かれているため、助言が具体的です。
興味深いのは、MBAに替わる海外研修、GR研修です。体感英語に加え、横社会への適応を入門と実践について、半年で身につくプログラムになっています。
グローバル化は、日本企業にとっても、そこで働く人たちにとっても、喫緊の課題です。有名な社内公用語を英語化したり、新卒に占める外国人の割合を増やしたりしています。
働く側が不安を感じるのも無理もありません。しかし、今さら留学や駐在もできず、結局、英語教材で学んだり、英会話スクールに通うくらいしか方策がありません。
そんなビジネスパーソンたちに、現実的な対処法を紹介してくれます。押し寄せるグローバル化の波に乗り遅れたくないと考える人、むしろチャンスに変えたいと考える人にお勧めします。
選者紹介
藤井孝一
経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役
1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。
情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー」