10月末、Googleの自分専用AIアシスタント「NotebookLM」がアップデートされました。ローンチから2年経ち、今ではさまざまな機能が追加されています。よりパワフルになり、カスタマイズできる幅も広がっているのです。→過去の「柳谷智宣のAIトレンドインサイト」の回はこちらを参照。

もし、NotebookLMを使ったことがない、もしくは便利さを体感できずに使うのを止めてしまった、という人がいるなら、ぜひ新NotebookLMを触ってみてほしいです。今回は、NotebookLMのデビュー/再デビューするための便利な使い方を色々と紹介します。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    大型アップデートでNotebookLMはさらに強力なツールに進化しました

ハルシネーションを最小限に抑えることができるNotebookLM

NotebookLMは、ソースとなる情報を自分で登録し、生成AIがその中身を見て出力を生成するのが特徴です。GeminiやChatGPTといった一般的な生成AIはインターネット全体の広範な情報から回答しますが、NotebookLMは指定されたソースの内容だけに基づき、質問への回答、要約の作成、アイデア出しを行います。AIが不正確な情報を生成する「ハルシネーション(幻覚)」を最小限に抑えることができるのも大きなポイントです。

サポートされているのは、PDFやテキスト、マークダウン、音声などのファイルですが、ウェブサイトやYoutubeのリンクも登録できます。直接テキストを貼り付けることも可能です。また、Googleドライブもサポートしているので、GoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントを取り込むこともできます。

10月末のアップデートにより、コンテキストウィンドウが8倍の100万トークンになりました。これは、書籍10冊以上が入る大きさです。会話メモリも6倍になり、やりとりを繰り返しても、一貫性のある出力を得られます。

NotebookLMで企業が実施したアンケート結果を分析

では早速、使ってみましょう。NotebookLM(https://notebooklm.google/)にアクセスし、「NotebookLMを試す」をクリックします。利用回数などの制限がありますが、無料アカウントでも利用できます。

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    NotebookLMにログインします

NotebookLMが開いたら「新規作成」をクリックし、ソースを登録します。ファイルは中央にドラッグ&ドロップしましょう。ウェブ検索をするなら「ソースを探す」をクリックし、キーワード検索できます。Googleスプレッドシートを登録するなら、「Googleドライブ」をクリックします。

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    ソースを追加します。スプレッドシートを読み込ませるならGoogleドライブをクリックします

今回は、企業が実施したアンケート結果を分析してみましょう。Googleスプレッドシートの場合、複数タブは認識せず、最初のシートだけを読み込みます。複数のシートを読み込ませる場合は、それぞれ別ファイルにしてください。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    顧客から収集したアンケート結果のスプレッドシートを読み込ませます

スプレッドシートを登録したら、まずは分析してみす。たった1行のプロンプトですが、3714文字もの出力が得られました。11月の総合評価、4つの部署へのフィードバックと改善インサイト、そして経営戦略上のインサイトがまとめられています。

自分で作ろうとしたら何時間かかるかわからない詳細なレポートです。特に、改善指示は自分では思いつかない切り口も多く、参考になります。

  • プロンプト

    11月のアンケート結果を分析し、各部署へのフィードバックと経営戦略のインサイトを生成してください。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    アンケート結果を分析し、各部署へのフィードバックと経営戦略のインサイトを生成してもらいます

NotebookLMはソースを保存しておくので、情報をどんどん追加していくことができます。例えば、5カ月分のデータをアップロードし、今期のインサイトをまとめてもらうことができます。翌月は、このノートブックにファイルを追加するだけで、また最新の分析が行えます。

複数のソースをまとめて読み込んでくれるので、複数ファイル間の一見しただけではわからない相関性などを発見することも得意です。例えば、アンケート結果とプロダクトロードマップをアップロードし、優先して開発すべき機能を紐づけてもらうこともできます。

  • プロンプト

    この5カ月間の結果を分析し、押さえておくべきインサイトを300文字でまとめてください。

  • 出力

    「レベリング」のゲーミフィケーション戦略(スキルツリー、ボスバトル、AIナビィ)は、ユーザーの学習継続と達成感を高める上で、強力な成功要因であり続けています。しかし、この高評価を根底から揺るがす二大リスクが継続的に指摘されています。一つは、「システムの安定性不足」です。アプリの頻繁なクラッシュやEXP未反映のバグは、致命的な信頼性低下を招いています。もう一つは、「AIアルゴリズムの精度不全」です。スキルツリーの柔軟性不足や、弱点分析の浅さ(賢者の書)が、ユーザーの高い期待に応えられていません。経営戦略としては、コンセプトの優位性を維持しつつ、新規機能よりも土台となるプラットフォームの品質固化(QCT)と、核となるAI機能のパーソナライズ強化に最優先でリソースを投下する必要があります。(278文字)

会話のスタイルをカスタマイズする

NotebookLMの会話のスタイルをカスタマイズすることもできます。チャット欄の右上にある設定アイコンを開き、会話のスタイルを選びましょう。デフォルトは一般的な研究やブレストに向いており、「学習ガイド」は教育コンテンツに適しています。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    チャットの右上のアイコンをクリックして設定画面を開きます

「カスタム」では、プロンプトで指示ができます。このノートブックの目標や、AIの役割、口調などを入力しましょう。試しに、「猫語で」とお願いしたところ、「~ニャ」のような文章を出力するようになります。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    会話のスタイル指示が反映されました

GoogleのWebサイトでは、以下の4つのカスタマイズ例が挙げられていました。

  • 私を博士課程の学生のように扱ってください。あなたは私の研究指導教員です。あらゆる仮定に厳しく反論してください。掘り下げた質問をし、論理的な誤りを指摘し、私の研究を徹底的に擁護するよう促してください。

  • リードマーケティングストラテジストとして行動する。あなたの対応は、即時の行動計画でなければなりません。分析的かつ率直に、目標を迅速に達成するために必要な具体的な戦略とクリティカルパスのステップにのみ焦点を当ててください。

  • 提供された資料を、証拠と論理的一貫性に重点を置く厳格な学者として、明白でないつながりや革新的な応用を探す創造的な戦略家として、そして結論のギャップ、欠陥、潜在的な問題を積極的に探す懐疑的な査読者として、3 つの異なる観点から分析します。

  • テキストベースのシミュレーションでゲームマスターを務めます。具体的な目標とステップ制限(例:10)を設定した、ハイステークスのシナリオを提示します。すべての選択は私が行います。シナリオに即した現実的な詳細を用いて、結果を生き生きと語ります。

「音声解説」や「動画解説」ができる「Studio」機能も便利

「Studio」機能も便利です。右側に、「音声解説」や「動画解説」といった機能が並んでおり、クリックするだけで、ソースを元にコンテンツを生成してくれるのです。

今回はアンケート結果の分析なので、「レポート」や「マインドマップ」が便利です。「レポート」をクリックすると、形式の選択画面が開きます。デフォルトの4形式に加え、内容を分析してさらに4つの形式を提案してくれるのが便利です。

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    「レポート」をクリックし、出力形式を選択します

また「改善提案レポート」があったので、選んでみました。ユーザーは何もプロンプトを入れていないのに、上司や取引先に出せそうな改善提案書ができるのは凄いところです。

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    生成されたレポートは読みごたえばっちりです

「マインドマップ」もクリックするだけで、すぐに生成されます。内容がすっきりビジュアル化できるのは便利です。

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    「マインドマップ」を作成してみました

「音声解説」と「動画解説」は驚くほどのクオリティのコンテンツが生成されるので、ぜひチャレンジしてください。

音声解説は、資料をAIが分析し、その要点をポッドキャストのように男女の自然な対話音声で生成してくれます。通勤中などでも、視覚に頼らずに情報を吸収できるのがメリットです。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    「音声解説」をクリックするだけで、数十分のPodcastが生成されます

また、音声解説をカスタマイズすることができ、出力形式を選べます。さらに、「このエピソードでAIホストが焦点を当てるべきこと」と言う欄に、追加指示を入力できます。とは言え、あまり細かいコントロールはできません。おすすめは「深く掘り下げて」というフレーズです。NotebookLMが熟考しやすくなる傾向があります。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    ペンアイコンをクリックすると、出力形式を選択したり、指示を追加することができます

動画解説は音声に加えて、視覚的な要素を統合させたもので、ノートブックのドキュメントから画像、図式、引用、数値などを抽出し、AIナレーション付きのスライド動画として生成します。複雑なプロセスや抽象的な概念も視覚的に示され、理解しやすくなります。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    ネット詐欺について「動画解説」を生成してみました

動画解説もカスタマイズでき、特定のトピックやターゲットユーザーを指定して内容を調整することが可能です。生成した動画はMP4形式でダウンロードでき、手軽に共有できます。ただし、スライド内の画像は登録した資料から流用することもあります。他の人が著作権を持つ資料を登録して、動画解説を生成した場合、公開は避けたほうがよいでしょう。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第21回

    「動画解説」のカスタマイズ画面です。AIがフォーカスすべきこと以外に、ビジュアルスタイルなどを変更できます

NotebookLMは、単なる「AIノートツール」ではなく、思考と情報をつなぐハブへと進化しています。資料を集め、分析し、音声や動画にまで展開できる柔軟性は、従来のAIアシスタントの枠を超えた体験です。

最適な情報を登録し、プロンプトで適切な指示・質問をするほどに、出力の精度が高まります。まるで同僚やメンターと議論しているような感覚さえ得られるのです。ビジネスでも学習でも、アイデアを形にする過程を劇的に効率化してくれること請け合いです。ぜひ、NotebookLMをまだ活用していないひとは、触ってみることをお勧めします。