今回は、2025年7月11日~7月22日に発表されたAI関連の注目すべきトピックを紹介する。AWS(Amazon Web Services)がAIエージェント搭載の新IDE「Kiro」やAIエージェント構築基盤「Bedrock AgentCore」を、OpenAIが新AIエージェント「ChatGPTエージェント」を公開した。EUでは新しいAI規制法の施行に向けた準備が進んでいるほか、国際数学オリンピックでは、GoogleとOpenAIのAIがそれぞれ金メダル級の成績を獲得した。
それぞれ詳しく見ていこう。
AWSがAIエージェントを統合した新IDE「Kiro」を公開
7月14日、AWSはAIエージェントを搭載した新しいIDE(統合開発環境)「Kiro」を発表し、プレビュー提供を開始した。Kiroは単なるコーディング支援ツールではなく、設計から実装、テスト、ドキュメント生成に至るまでの開発の全工程を構造化してサポートする、仕様駆動開発(spec-driven development)のための開発ツールだという。
AIのサポートでプロンプトへの入力だけでアプリケーションのプロトタイプを構築した上で、それを本番で利用可能なプロダクトのレベルまで昇華させられるのがKiroの大きな強みとなっている。
Kiroの特長や料金プランなどは、以下で詳しくまとめている。
AWS、AIエージェント関連のサービス発表
7月16日、AWSは大規模なAIエージェントを構築するためのツールキット「Amazon Bedrock AgentCore」(以下、AgentCore)を発表した。AIエージェントの開発や、本番環境への展開、運用を担うサービス基盤として、同日よりプレビュー版の提供を開始している。
AgentCoreは、サンドボックス化されたコードインタープリタから統合Webブラウザツールまで、エンタープライズ対応の安全なAIエージェントのための基盤を提供し、制御を維持しながらAIで複雑なタスクを自動化できるようにする。
AgentCoreは、以下のモジュールで構成されている。企業はこれらを任意に組み合わせることで、迅速にAIエージェントシステムを構築・運用できる。
- セッションが分離された安全でスケーラブルな実行環境(Runtime)
- AIエージェントの記憶を完全に管理するメモリ基盤(Memory)
- AWSサービスとサードパーティツール、ユーザーに代わってアクセスするアイデンティティ管理(Identity)
- APIなどへの接続を簡素化するゲートウェイ(Gateway)
- AIエージェントが安全にコードを記述・実行できるインタープリタ(Code Interpreter)
- Webサイトと対話するためのブラウザ操作機能(Browser)
- AIエージェントのパフォーマンスや実行状況の可視化機能(Observability)
また、AWSはAgentCoreと同時に、オンラインストア「AWS Marketplace」内に新しいカテゴリー「AI Agents and Tools(AIエージェントとツール)」を開設することも発表した。
企業はここから、サードパーティ製のAIエージェントや、AIエージェントを効果的に導入するためのさまざまなコンポーネントを簡単に見つけて、自社ツールに組み込むことが可能になる(関連記事:AWSがAnthoropicと提携し、AIエージェントマーケットプレイスを発表か | TECH+(テックプラス))。
OpenAIが新AIエージェント「ChatGPTエージェント」を発表
7月17日、OpenAIはChatGPTをベースとした自立型のAIエージェント「ChatGPTエージェント」を発表した。
これは、ユーザーからの指示に従ってWebの操作やコーディングなどのタスクをこなせるツールで、Webサイトと対話するためのビジュアルブラウザ、推論ベースのクエリの発行に適したテキストブラウザ、そしてWeb APIにアクセスするためのWebツールなどを搭載している。これらのツールをAIが自律的に操作し、ユーザーから指示されたタスクを最も効率的な方法で遂行する。
ChatGPTエージェントは、Webサイトとの対話が可能なAIエージェント「Operator」、Web上での複雑な調査タスクを自動化する「Deep Research」、そしてChatGPTの会話能力を組み合わせて構築されている。ユーザーがタスクを与えると、ChatGPTエージェントは独自の仮想マシンを使用し、推論とアクションをスムーズに切り替えながら指示されたタスクを処理する。ChatGPTコネクタを利用することで、GmailやGoogle Drive、Dropbox、GitHubなどのアプリと接続して連携させることもできる。
ChatGPTのPro、Plus、Teamユーザーは、同じ料金プランのままでChatGPTエージェントを利用できる。また、EnterpriseおよびEduユーザーも数週間以内に利用可能になる予定だという。
EU、新しいAI規制法の施行に向けてガイドラインを発行
7月18日、欧州連合(EU)が8月2日から段階的に施行が始まる新しいAI規制法(AI Act)に先立って、企業がこの新法に準拠できるよう支援するガイドラインを発行した。
このAI規制法は、リスクに基づいてAIシステムを分類し、そのリスクレベルに応じて、AIモデルを提供する企業や開発者に対して厳格な要件を課す。対象となった企業や開発者は、敵対的テストの実施、重大インシデントの報告、強固なサイバーセキュリティの導入、トレーニングデータの透明化などが義務づけられ、違反した場合には最大で3,500万ユーロまたは売上高の7%という罰金が科される可能性がある。
今回発行したガイドラインは、AIを開発する企業や開発者の義務を明確にし、これを遵守するために実施するべき対応を明確にする。
EUではこれと並行して、汎用AIモデルを開発する企業向けに「汎用AI実践規範」を公開し、自主的に署名するよう呼びかけている。この実践規範は、AI規制法が完全に施行されるまでの暫定措置として、この新法に適応する体制を自主的に整えることを約束するもの。ただし、Metaがこの規範に署名しない方針を明らかにするなど、すでに波乱の予兆が見られている。
GoogleとOpenAIのAI、数学オリンピックで金メダル級のパフォーマンス
7月21日、GoogleはDeepMind製品のAI「Gemini Deep Think」の最新バージョンが、2025年の国際数学オリンピック(IMO)に公式参加し、金メダルレベルのパフォーマンスを達成したと発表した。Deep Thinkは6問中5問を完璧に解き、42点満点中35点を獲得したという。採点者からは明確で正確、理解しやすいと評価されたという。
OpenAIもまた、同社の実験的なAIモデルが、同大会で金メダルレベルのパフォーマンスを達成したことを発表した。こちらも6問中5問を正解し、35点を獲得している。大会で使用されたモデルはまだ一般公開されていないが、OpenAIの研究者Wei氏は、次期バージョンのGPT-5がまもなく登場する見込みであることを示唆した。