Nottaは音声データの文字起こしにとどまらず、その後の翻訳、要点抽出、検索までを一貫して自動化する多機能AIプラットフォームだ。翻訳機能により多言語共有が可能となり、全文検索により即座に必要な情報へアクセスできる。今回は、文字起こしの次のステップとして、翻訳・要点抽出・外部連携まで自動化することを考えてみたい。

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文字起こしの「次の一手」

文字起こしの自動化は、会議・インタビュー・講義などの現場において大きな効率化をもたらす。NottaのようなAI文字起こしツールを使えば、音声データを数分以内にテキスト化できるため、記録作業の負担が大幅に軽減される。しかし、現実の業務では文字起こしが終わったあと、そのテキストを「どう使うか」が、本質的な課題として浮上する。

現実問題として、テキスト化された記録はフォルダに保存されるだけで、誰にも「共有されない」「活用されない」「検索されない」といった「情報の死蔵」が発生しがちだ。このような状態では、せっかくの文字起こしが業務改善に寄与せず、単なるコストの浪費となりかねない。文字起こしの価値は、それが「業務の次の一手」に転化されてこそ発揮される。

この停滞を打破するカギは、文字起こしの後工程をいかに自動化・連携させるかにある。例えば、要点抽出からCRM(顧客関係管理: Customer Relationship Management)への入力を自動化する、翻訳処理をかけて海外メンバーと共有する、外部ツールとAPI連携してレポートを自動生成するといった流れを構築することで、記録が初めて効果をもたらす「アクション」になる。

Nottaは単なる音声認識ツールにとどまらず、こうした「ワークフローの自動接続」に対応する設計になっている。音声からテキスト、テキストから要点抽出、抽出結果からレポート・翻訳・投稿といった一連の流れを、すべて一つのプラットフォーム上で完結できる点が強い。

これにより、例えばマーケティング会議の記録から自動でインサイトを抽出し、それがチームのSlackに共有される。あるいは、顧客の声を含む面談録音から要点が抽出され、Notionのナレッジベースに格納される。これらの自動化は、業務の属人性を減らし、再現性とスピードを両立する。

本稿では、Nottaを用いたワークフローの自動化機能を「翻訳と全文検索」や「活用ロードマップ」といった切り口から紹介する。情報を「動かす」ことで、生成AIが実務の中にどう定着するのかに取り組んでみる。

AI翻訳+全文検索で多言語共有

グローバルチームや多国籍プロジェクトが当たり前となった今、業務によっては多言語対応は選択肢ではなく必須要件だ。Nottaでは文字起こしテキストに対してワンクリックで翻訳処理が行える。主要な欧州言語・アジア言語を含む42言語の翻訳に対応している(文字起こし対応は58言語)。これは多言語環境での会議・インタビュー共有において実用的な機能だ。

翻訳処理はシンプルだ。文字起こしが完了した後、「翻訳」ボタンを押して言語を選択すると、AIが全文を翻訳し、原文と翻訳文が対訳形式で表示される。文脈を保った自然な文章で出力されるため、汎用の翻訳サービスと比べても精度と一貫性の点で優れている。専門用語や業界用語の置き換えにも対応しており、カスタム辞書も適用できる。リアルタイム翻訳機能を使った場合には、収録中の文字起こし後にただちに翻訳も行われる。

  • 翻訳ボタンを押して言語を設定すれば翻訳が開始される

    翻訳ボタンを押して言語を設定すれば翻訳が開始される

  • 翻訳中のようす

    翻訳中の様子

  • 翻訳完了後のようす

    翻訳完了後の様子

  • 要約から該当部分の文字起こしデータや翻訳データを確認できる

    要約から該当部分の文字起こしデータや翻訳データを確認できる

翻訳された議事録やインタビューは、そのままチームで共有したり、検索対象として活用したりできる。例えば、Elasticsearchや社内全文検索エンジンと連携することで、多言語ドキュメントの一括検索・抽出が可能になる。これにより、会話内容がそのままナレッジベースとして機能し、他部署との情報共有が進む。

Nottaは全文検索機能もすぐれており、単なるキーワード検索ではなく「話題」「話者」「アクション」などの条件指定もできる。検索結果のハイライト表示、該当箇所へのジャンプ機能なども整備されており、長文データでも必要な情報にすばやくアクセスできる。

この仕組みを実際に活用することで、次のような業務改善が可能になる。

  • 海外メンバー向け議事録の自動翻訳・即時共有
  • 顧客インタビューからの声を多言語で分析・展開
  • 社内研修の録音内容を日英中で検索・再学習に活用

多言語共有と全文検索が結びついたNottaの設計は「情報活用インフラ」としての役割を担っている。翻訳と検索が連動することによって、組織の言語的ハンデが解消されると同時に、知識の展開スピードも素早くなる。

Notta活用のロードマップ

本連載では、Nottaが提供するAIを活用した特徴的な機能を解説してきた。リアルタイム文字起こし、議事録要約、意味単位での自動分割、翻訳、全文検索といった機能群は、それぞれが単独でも実用性が高いが、相互に連携させることでさらに業務効率を上げられる。単なる「文字起こしツール」から「音声データ活用基盤」への進化、それが現在のNottaの立ち位置だ。

このような多機能性を持つNottaは、個人ユーザーから大規模組織まで、用途や導入段階に応じて柔軟に活用できる構成になっている。導入フェーズに応じた活用戦略を整理すると、以下の3段階に分けて考えられる。

  • 第1段階(個人・小規模チーム):リアルタイム文字起こしとAI要約で議事録作成を自動化し、ドキュメント作成負荷を軽減
  • 第2段階(部門単位):意味単位での自動分割・翻訳・全文検索による情報共有の自動化。ナレッジの再利用促進
  • 第3段階(全社導入・組織横断):外部連携・CRM接続などによる情報活用と業務統合の自動化
  • CRM接続などを行って業務統合を推進できる

    CRM接続などを行って業務統合を推進できる

このような段階的導入を通じて、Nottaは「作業の自動化」から「業務プロセスの最適化」へと発展する。最初は議事録作成の時短目的で導入したとしても、やがては社内文書の標準化、会議ナレッジのアーカイブ、外部共有の効率化といった全社的な情報戦略へ発展することが期待できる。

さらに注目すべきは、Nottaの開発サイクルの速さとアップデートの充実だ。毎月のように改善が施され、ユーザーの声を反映した機能追加が行われている点はSaaSとしての信頼性と拡張性を保証している。

導入にあたってのハードルも低く、フリープランから始めて段階的に上位プランへスケールアップすることもできる。ユーザー数や使用量に応じた柔軟な料金体系も整っており、概念実証(PoC)から本格導入までの移行がスムーズに行えるのも利点だ。

今後、AIによる音声活用は「記録の自動化」だけでなく「業務知の活用」「意思決定の支援」へと役割を拡大していくことは確実だ。Nottaはその実現に最も近いポジションにあるサービスの一つとして、企業のDX推進における重要な武器になると考えられる。

プランの選び方

Nottaは音声認識とAI要約を中心としたクラウドサービスであり、その提供形態はユーザーの利用目的に応じて複数のプランに分かれている。基本的なプランは「フリープラン」「プレミアムプラン」「ビジネスプラン」の3つで構成されており、機能と利用上限に大きな差がある。導入時には用途に応じた適切なプランの選定が欠かせない。

まず、フリープランはNottaを初めて使うユーザーに向けた体験版だ。月120分までの録音と文字起こしが可能で、簡易的なテキスト化であれば十分に試せる。しかし、1回当たりの録音時間が3分に制限されているほか、翻訳やテンプレートエクスポートといった機能は使えない。したがって、実務での使用には限界がある。

プレミアムプランは月1,800分(30時間)までの録音・文字起こしが可能となり、AI要約や翻訳も利用できる。会議議事録の自動化、インタビュー文字起こし、社内共有の効率化といった場面で力を発揮する。

ビジネスプランは、より高度な情報管理や外部連携、チーム運用を見据えたプランだ。外部連携、カスタムテンプレート、利用状況のモニタリングなど、エンタープライズ向けの機能が盛り込まれている。部署単位や全社導入を想定する場合には、このプランが候補になる。

ただし、すべての機能が利用回数無制限というわけではない。それぞれに利用制限があるため、利用制限を超えるかどうかも対象のプラン内に収まるかどうかの指針になる。

プランを選ぶ際に重要なのは、「現在の業務にどれだけNottaを組み込むか」という視点だ。例えば、毎週、会議の文字起こしを行い、その要約を全社共有したい場合はプレミアムプランで十分だ。しかし、そこに「ナレッジベース化」「自動レポート配信」「外部システムとの統合」が加わるのであれば、ビジネスプランが現実的な選択となる。機能はプレミアムプランで十分でも、利用時間や回数制限を超えるようであればビジネスプランを選択する必要も出てくる。

なお、「ビジネスプラン」でも制限を超えてしまう場合は「エンタープライズプラン」という選択肢がある。ビジネスプランの制限の一部の上限が引き上がったり無制限になったり、大企業向けの機能が追加される。こちらの価格は「要相談」だ。

予算が許すのであれば「ビジネスプラン」を選択しておくと間違いない。要件がすべて「プレミアムプラン」に収まるのであれば「プレミアムプラン」でよい。二言語同時翻訳機能を多用する場合にはNottaアドオン機能として「2か国語文字起こし・翻訳」も追加する必要がある。

  • プランは最新のデータを確認しながら検討しよう

    プランは最新のデータを確認しながら検討しよう

提供される機能や制限は進歩とともに改定すると見られるので、「文字起こし料金プラン | Notta」で最新の状況を確認しながら、どのプランを選択すべきか検討してもらえばと思う。