議事録作成は業務に不可欠だが、時間と労力を要する非効率な作業でもある。NottaのAI機能「AI要約」は、会議音声から要点・決定事項・アクションアイテムを自動抽出し、議事録を即時生成してくれる。今回は、「AI要約」により、どこまで人手を減らし、正確かつ有用な議事録が生成されるのかを検証してみたい。
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議事録作成の負担を大きく軽減
議事録は会議の内容を記録・整理し、後日の確認や業務遂行の指針とするうえで欠かせない。しかし、その作成には相応の手間と時間がかかり、日々の業務の中でも非効率と感じられる作業の一つになっている。リモート会議の増加により議事録の重要性は高まる一方であり、担当者の負担は比例して増加する。
議事録作成では発言内容の聞き直し、要点の整理、文書への転記、構成の調整などを手作業で行うことになるため、作業は音声の2~3倍の時間を要することが一般的だ。
さらに、議事録作成は個人差が生じやすく、内容の抜け漏れや要約の粒度にばらつきが出る。重要な決定事項が記録されない、曖昧な表現でタスクが不明瞭になるといったリスクもある。また、複数人で内容を確認・修正するプロセスも時間と労力を要する。
こうした問題は、AIを用いることで大幅に軽減できる。発言内容の全文起こしを出発点とし、AIによって要点・結論・アクションアイテムを自動抽出することで、議事録の骨格を数秒で得ることができる。従来の人力ベースの作業とは次元の異なる効率化が可能だ。
Nottaはこの「会議内容の知識化」を自動で行うAI機能を搭載しており、単なる音声認識ツールを超えた議事録支援プラットフォームになっている。事前準備から共有、アーカイブまでの流れの中で、AIが主導することで作業負担が大幅に減少する。
本稿では、Nottaが提供するAI議事録機能を中心に、使い勝手やカスタマイズ性、精度の実力などを取り上げ、実務に導入できるレベルかどうかを確認する。その中心的機能である「AI要約」を見ていこう。
NottaのAI要約の概要
Nottaの「AI要約」は会議の音声データを自動的に解析し、要点・決定事項・行動項目などを一括して抽出・分類してくれる機能だ。ユーザーは録音を終了した後にボタンを1回クリックするだけでよい。瞬時に要約文が生成される仕組みだ。
この要約は、AIによって「誰が」「何を言い」「何を決めたか」が簡潔に整理された形で出力される。具体的には、次のような情報構造が使われることが多い。
- 会議タイトル
- 要約(複数段落)
- 質疑応答(複数段落)
- 決定事項(箇条書き)
- 行動項目(アクションアイテム)
このように構造化された議事録は共有・活用が容易で実用的だ。
AIは録音ファイルや音声起こしをもとに、会議の内容からタイトルを自動生成する。この「タイトルの自動生成」は、記録が蓄積されたときの検索性・整理性の向上につながる。日時だけではなく、会議の主旨に基づいたファイル命名が自動で行えるのは業務の見通しに寄与する。
テンプレート機能も強力だ。要約文の出力フォーマットはユーザーの好みに応じてカスタマイズ可能であり、社内の議事録フォーマットやプレゼン資料形式に合わせた自動変換が行える。AI要約はただ「短くまとめる」だけの機能ではない。文脈理解に基づいて、誰がどのような意図で発言したか、なぜそれが重要か、といったニュアンスまで踏まえた要約を行っている。単なる要点抽出ではなく会議内容の「意味の編集」を行っている。
高機能だが操作は簡便だ。録音終了後に要約エリアから要約のスタイルを選択するだけで数十秒後には要約が完成する。導入初日から効果を実感できる。
カスタム議事録テンプレート作成術
Nottaは企業やチームごとの文書形式・運用フローに対応できるよう、高度なテンプレートカスタマイズ機能を提供している。これにより、AIが生成する要約や議事録の形式を、組織固有のレポート形式や業界仕様に合わせることができる。例えば、法律事務所と営業チームとでは求める文書構成が異なるが、テンプレートの調整によって対応できる。
テンプレートを編集するにあたって専門知識は必要ない。見出し構成の調整、強調文の有無、決定事項のセクション化、ロゴや署名の挿入などが簡単に設定できる。企業のブランディングに配慮した議事録生成も可能で、社外提出文書としての質もある程度担保される。
AI要約の精度を高めるための「プロンプト調整」も行える。Nottaでは要約生成時に使用する指示文(プロンプト)を編集することが可能で、「営業観点で要約せよ」「リスク要因を強調せよ」といった観点を指定することで、ニーズに合致した内容を生成できる。
プロンプトチューニングは、チーム間での視点のズレをなくすうえでも効果的だ。例えば、開発チームと営業チームが同じ会議を要約する場合でも、それぞれにとって必要な情報は異なる。目的別にテンプレートとプロンプトを切り替えることで、共通の記録から複数の目的に応じた文書を同時に作成できる。
こうしたテンプレートとプロンプトの組み合わせにより、Nottaは「AIによる記録の自動生成」だけではなく、「組織に最適化された文書の自動生成」を実現するツールとして使える。議事録という業務の中核にAIの自動編集機能が浸透している。
対応する出力形式は多岐にわたる。具体的には以下のようなフォーマットを選択できる。
- Markdown(Web掲載・社内Wiki向け)
- Word/PDF(対外資料や社内配布向け)
- プレーンテキスト(API経由での取り込み用)
- Notionテンプレート(チーム共有向け)
このような出力形式の選択肢があることで、AI要約をそのまま業務資料として流用しやすくなっている。
意味単位での自動分割
Nottaの技術は音声またはテキストの連続データを「意味単位で自動的に区切る」ことを可能にし、従来の時間軸や話者交代に基づく単純な分割方式に比べて格段に自然な章立てを実現する。
この機能で会議の流れを「挨拶」「議題1」「議題2」「まとめ」といった実際の意味構造に即して自動で分類している。これまで人間の手で見出しを付けたり、発言内容をグルーピングしたりしていた作業が、AIによって自動化されることで編集負荷が軽減される。
出力を見ると、章見出しやトピックごとの分類が論理的で、読み手にとっても内容の把握がしやすい。例えば、「事業進捗報告」「顧客からのフィードバック」「改善策の検討」「次回アクションの確認」といった見出しが自動生成される。これはそのまま議事録の目次として機能する。
この分割は後続処理との親和性が高い。章ごとに要点抽出を行う、各章を別ファイルで管理・共有するといった運用も可能であり、情報の再利用性と文書管理の効率が向上する。単に視認性を高めるだけでなく、ドキュメントの「部品化」を促す点でも重要だ。
文字起こしがうまくいかない!?
優れた文字起こし機能を持つNottaだが、収録場所によってはうまく文字起こしができないことがある。PCでWeb版のNottaを直接使っている場合などだ。PCのマイクは会話収録向けのマイクと比べると性能が悪いことが多く、ノイズのある場所では喋っている音声をうまく拾えないことがある。人間は音声を認識できるレベルであっても、PCのマイク経由ではうまく拾えていないことがある。そうした場合にNottaは音声が聞き取りにくい旨を通知してくる。
その際、収録環境を改善できるなら、それが改善の第1ステップだ。会議室の扉を閉めてノイズが減るのであれは扉を締める、ノイズ源が明らかであり改善できるなら改善する(空調がうるさいなど)、収録用マイクがマイクが使えるならPCに接続して使うなどだ。
こうした対応ができないなら、ほかのデバイスで収録しておいて、後からNottaにアップロードして文字起こしをする方法がある。
出先の会議でこうした状況に陥ったら、打てる手が少ないことがある。その場合はiPhoneやAndroidといったスマートフォンで録音し、あとから音声データをNottaにアップロードする。スマートフォンは比較的音声データの録音に優れていることが多く、PCよりもクリアな音で人の声を録ることができる。PCで使っているNottaがうまく文字起こしできない旨を通知してきたら、すぐにスマートフォンで録音してあとからのアップロードに備えよう。
まとめ
今回は、Nottaが提供するAI議事録生成機能を中心に、その精度・柔軟性・拡張性について取り上げた。要点・決定事項・タスクの自動抽出、自然な章立て、テンプレートによる整形、プロンプトによる指向性制御など、議事録作成に求められる要素が網羅的に自動化されている点がポイントだ。
AI要約は単に文章を短くするだけでなく、発言の意図や意味を汲み取り、読み手にとって有益な形に情報を編集するプロセスそのものだ。単なる自動化ではなく、知的労働の一部をAIが補完している。意味単位での章分けは、情報の構造化と再利用性を高める。議題ごとの整理、プロジェクト別のアーカイブ、外部共有時の可読性向上など、多方面にわたる業務上のメリットがある。これは業務の「あとで使う」情報設計に直結する技術だ。
テンプレートとプロンプトのカスタマイズにより、Nottaはさまざまな業種・チーム・個人のニーズに適応できる点も特徴だ。業務の種類や文書の用途に応じて記録のあり方を変化させる柔軟性は、他の文字起こしサービスに対する優位性の一つになっている。
こうした一連の機能は、議事録作成にかかる時間を数分の一に短縮するだけでなく、記録の質や運用の仕組みそのものを見直すきっかけとなる。AIによる自動化は、業務に対し「効率化」だけでなく「再構築」を行う足がかりになる。