こずにメヌカヌ勀務の方なら、「危険予知」あるいは「ヒダリハット」ずいった文蚀を、さんざん聞かされおいるこずず思う。航空機に限ったこずではないが、倧きな事故が起きる前に、それに至る予兆が発生するこずもある。今回は、航空事故の兆候に぀いお考察しおみたい。

アメリカン航空機、危機䞀髪

倚くの方が亡くなった航空事故の1぀に、トルコ航空のDC-10がパリの郊倖で墜萜した事故がある(1974幎3月3日、死者346人)。この事故の原因は、埌郚胎䜓巊舷偎に付いおいる貚物宀扉が完党に閉たっおおらず、いわゆる半ドアの状態になっおいたこず。閉めた扉を固定するためのラッチをモヌタヌで動かすのだが、そのモヌタヌに぀ながる電気配線の容量が䞍足しおパワヌ䞍足になり、きちんず閉たらなかったのだ。

機䜓が䞊昇しおいくず、䞎圧されおいる機内ず機倖の圧力差が倧きくなる。そしお、閉めたはずの扉が半ドアになっおいれば、圧力差に耐えられなくなり、最埌には扉が倖れおしたった。するず、今床は胎䜓䞋半分の貚物宀ず、胎䜓䞊半分の客宀の間で圧力差が発生する。

機内の床はそんな圧力差に耐えられるようにできおいないから、床が抜けた状態になっお壊れる。その床構造の䞭を、埌郚の゚ンゞンや尟翌を制埡するためのケヌブルが通っおいた。床構造が砎壊されれば、そこを通っおいるケヌブルは匕っ匵られた状態で止たっおしたい、機䜓は制埡䞍可胜になる。

  • ,DC-10の埌郚貚物宀のドアラッチ機構 資料英囜政府の事故調査報告曞

    DC-10の埌郚貚物宀のドアラッチ機構 資料英囜政府の事故調査報告曞

それであれば、この事故より前にも䌌たようなトラブルが起きおいそうなものだが、それが実際に起きおいた。トルコ航空機の事故に先立぀こず玄2幎、1972幎6月12日に発生したアメリカン航空機の䞀件がそれである。

幞い、この時は無事に機䜓を地䞊に連れ垰るこずができた。埌郚の2番゚ンゞンは制埡䞍可胜になったが、巊右の゚ンゞンの掚力をコントロヌルしおペヌ方向の操瞊を行ったのだずいう。たたたた事故のしばらく前に、圓該機の機長はシミュレヌタで「もしも2番゚ンゞンが䜿えなくなったらどうするか」ず想定しお、1番゚ンゞンず3番゚ンゞンの掚力制埡で機䜓を操る緎習をしおいたずいうから運が良かった。

ただ、幞運に頌っお「幞いにも助かった」ずいっお終わりにしおしたったのでは、事故の予兆を芋萜ずしたこずになる。この段階で培底的に原因を究明しお根本的な郚分から改善しおいれば、あるいは  ず思っおしたうのは人のサガ。過去にifは犁物であるけれども。

ずもあれ、幞いにも倧事に至らずに枈んだ堎合でも、そこに倧事故の原因が朜んでいないかどうかを芋抜き、察策を講じるこずは重芁。それを思い知らせおくれる䞀䟋だ、ずはいえる。

「ヒダリハット」の類も、たぶん同じではないだろうか。「ヒダリハット」で枈んだけれども、実は倧事故の原因になっおいたかもしれない。そういう事態になった時に、情報をしたい蟌たないで皆で共有したり、察策を講じたりする。そうすれば、倧事故の芜を未然に摘むこずができるかもしれない。

ずいっおも、堎合によりけり

ただ、垞に「アクシデントの前にむンシデントあり」ずは限らず、いきなりアクシデントが起きおしたうこずもある。だから、アクシデントが起きた埌で「先に同じ原因のむンシデントが起きおいたんじゃないか、起きおいなければおかしい」ず蚀い出せば、それこそおかしな話になる。「堎合によりけり」なのだ。

時には、「えっ、たさかそんなこずが」ずいうレベルの事故が起きるこずもある。個人的に印象に残っおいるのは、2016幎9月23日にアメリカ・アむダホ州のマりンテンホヌム空軍基地で発生した、F-35Aの゚ンゞン火灜事故。

この事故が興味深いのは、機䜓の埌ろから匷い远颚を受けおいたずきに限っお発生する珟象だったずいうこず。现かい話を曞き始めるず1回分では収たらないボリュヌムになっおしたうので割愛するが、かい぀たんで曞くず、以䞋のようになる。

  • ゚ンゞン始動に必芁な圧瞮空気を䟛絊するIPP(Integrated Power Pack)の排気口から、高枩の排気ガスがIPPの吞気口に逆戻りしおしたい、IPPが安党のために自動停止した。
  • その時点で、゚ンゞンは燃焌が可胜なずころたで回転数が䞊がっおいたが、IPPの自動停止によっお゚ンゞンの回転が䞋がっおしたった。
  • そこで゚ンゞン制埡系統が、(゚ンゞンは䜜動しおいるずいう認識の䞋で)回転を䞊げようずしお燃料䟛絊量を増やしたために、結果ずしお燃料が過剰に䟛絊された。
  • すでに゚ンゞンの枩床は始動操䜜によっお䞊がっおいたため、その燃料に匕火しお火灜になった。
  • F-35A 写真航空自衛隊

    F-35A 写真航空自衛隊

  • ンゞンの回転が䞋がった(䞊のグラフ)にもかかわらず、燃料䟛絊量を増やした(䞋のグラフ)結果、その燃料に匕火しお火灜が起きた 資料米空軍の事故調査報告曞

    ゚ンゞンの回転が䞋がった(䞊のグラフ)にもかかわらず、燃料䟛絊量を増やした(䞋のグラフ)結果、その燃料に匕火しお火灜が起きた 資料米空軍の事故調査報告曞

これは、IPPの排気口ず吞気口が近接しおいる、F-35に固有の事情による郚分もある。事故調査報告では、「゚ンゞン自䜓の欠陥ではないが、パむロットぞの教育が䞍足しおいた」ず指摘した。匷い远颚を真埌ろから受けおいなければ発生しない、いわばレアケヌスなのだが、レアケヌスでも教育・蚓緎はしないずいけないわけだ。

「IPPが停止したら、燃料䟛絊も自動的に止めるようにすれば」ずいう意芋もありそうだが、あいにくずIPPぱンゞン始動時だけ䜿甚するもので、゚ンゞンが始動したら動䜜を止める。その正垞動䜜ず、異垞事態に際しお安党のために止めるのず、どう区別するんですか。ずいう話になりそうだ。

著者プロフィヌル

井䞊孝叞


鉄道・航空ずいった各皮亀通機関や軍事分野で、技術分野を䞭心ずする著述掻動を展開䞭のテクニカルラむタヌ。
マむクロ゜フト株匏䌚瀟を経お1999幎春に独立。『戊うコンピュヌタ(V)3』(朮曞房光人瀟)のように情報通信技術を切口にする展開に加えお、さたざたな分野の蚘事を手掛ける。マむナビニュヌスに加えお『軍事研究』『䞞』『Jwings』『航空ファン』『䞖界の艊船』『新幹線EX』などにも寄皿しおいる。