前回、ATOKの設定を手軽に変更できる「カスタムATOK」について簡単に紹介した。これとは別に、ATOKの設定を細かくカスタマイズできる「ATOKプロパティ」も用意されている。今回は、この「ATOKプロパティ」に用意されている主な設定項目を紹介していこう。
ATOKプロパティ(環境設定)の表示
まずは「ATOKプロパティ」を呼び出すときの操作手順から紹介していこう。ATOKパレットにある「メニュー」アイコンをクリックし、「プロパティ(環境設定)」を選択する。
すると、以下の図のような設定画面が表示される。ATOKの表示や動作をカスタマイズするときは、この画面で設定を変更していけばよい。なお、実際に設定を変更するときは以下の流れで作業を進めていくことになる。
- 「タブ」で大まかな分類を選択する
- 画面左側で小分類を選択する
- 画面右側で各種設定を指定する
このことからも分かるように、「ATOKプロパティ」には膨大な数の設定項目が用意されている。そのすべてを紹介していくと途方もない分量になってしまうので、ここでは代表的なものに的を絞って解説していこう。
「入力・変換」タブに用意されている設定項目
「ATOKプロパティ」の「入力・変換」タブには、入力(タイピング)を支援する機能、変換の補助機能、推測変換の設定、候補ウィンドウの表示など、変換動作に関連する設定項目が用意されている。
まずは「基本」の分類から解説していこう。ここには、入力方法(ローマ字/カナ)の切り替え、変換方法、句読点の初期値など、IMEの最も基本的な設定項目が用意されている。
「入力補助」の分類を選択すると、画面表示が以下の図のように変化する。ここでは、テンキーからの入力を必ず半角にするか、「Space」キーで全角/半角どちらの空白文字を入力するか、などの設定を変更できるようになっている。
「変換補助」の分類には、変換時の補助機能に関する設定項目が並んでいる。ここでサブ分類となる「日付」を選択すると、「きょう」や「あす」などを変換したときに表示される日付候補の形式をカスタマイズできる。
「表示」の分類には、“現在の入力モード”を示すポップアップを表示するか、同音異義語の用例などを示す「情報ウィンドウ」を表示するか、といった画面表示に関する設定項目が用意されている。
「入力支援」の分類には、タイプミスを類推して補正してくれる機能(詳しくは第16回を参照)の設定項目が用意されている。また、句読点の置換、「・」→「/」、「ー」(長音)→「−」(ハイフン)の自動置換に関する設定項目もある。
「半角全角変換」の分類は、カタカナ/英字/数字/記号の変換候補を「半角」または「全角」に限定したいときに利用する。たとえば「すまーと」を変換すると、全角の「smart」と半角の「smart」の両方が変換候補として表示されるが、「全角の英字は使わない」という人もいるだろう。このような場合は、「英字」を選択して「半角」を指定しておけばよい。すると、以降は半角の英字だけが変換候補として表示されるようになる。
「句読点変換」の分類には、自動変換に関する設定項目が用意されている。句読点や「?」、「!」の文字をタイピングした時点で、「Space」キーを押さなくても自動的に変換を行いたい場合は、この設定項目をオンに変更しておくとよい。
「推測変換」の分類には、タイピング中に表示される推測候補(予測変換)に関する設定項目が用意されている。この画面にある「詳細設定」ボタンをクリックすると、推測候補を表示するまでの文字数、表示する推測候補の数などを変更できる。
また、サブ分類となる「追加する候補」を選択して、推測候補として表示する内容をカスタマイズすることもできる。複数文節からなるフレーズ、類推される候補、郵便番号→住所、現在の日時など、推測候補に表示する内容を取捨選択して、必要な候補だけを残した一覧にカスタマイズできる。
「候補ウィンドウ」の分類は、“変換候補の一覧”の設定を変更するときに利用する。念のため、「候補ウィンドウ表示までに必要な変換回数」の設定項目について補足しておこう。
初期設定では、1回目の「Space」キーを押したときに“最初の変換候補”が文中にそのまま表示される仕組みになっている。
続いて、もういちど「Space」キーを押すと、候補ウィンドウ(変換候補の一覧)が表示される。つまり、「Space」キーを2回押した時点で初めて、“候補の一覧”が表示される仕組みになっている。この「Space」キーを押す回数を指定する設定項目が「候補ウィンドウ表示までに必要な変換回数」となる。ちなみに、ここに指定できる値は0または2以上となっており、1は指定できない。よって、「Space」キーを1回押した時点で候補ウィンドウを表示、という設定は不可になっている。
なお、その下にある「候補選択キー」を「英字」に変更すると、1〜9ではなく、A〜Lのキー(ホームポジションと同じ行にあるキー)で変換候補を選択できるようになる。
サブ分類となる「追加する候補」には、カタカナ/英字/数字/記号について「半角と全角の両方の候補を表示するか?」を指定する設定項目が用意されている。これらの項目をオフにすると、半角の候補が非表示になり、全角の候補だけが表示されるようになる。
同じくサブ分類となる「0キー切替」では、「0」キーを押して“候補の一覧”を切り替えたときに表示する候補の種類をカスタマイズできるようになっている(詳しくは第17回を参照)。
最後に「プライバシー」の分類だ。ここには、学習機能を抑制して、学習情報や確定履歴を残さないようにするための設定項目が用意されている。パソコンを他人と共用している場合など、候補の並び順から「過去の入力履歴を推定されると困る」といった場合に活用するとよい。そのほか、これまでの学習情報を消去するボタンも用意されている。
以上が「入力・変換」タブに用意されている主な設定項目となる。かなり駆け足で紹介してきたが、タイピング時や変換時の動作をカスタマイズするときの参考にして頂ければ幸いだ。
他のタブに用意されている設定項目
他のタブについても手短に紹介しておこう。「辞書・学習」タブは、ファンクションキーを使った変換に関連する設定項目となる。「辞書セット一覧」に並んでいる辞書セットは、それぞれ以下のキーを押したときに参照される辞書となる。
- 標準辞書セット:「Space」キー
- 人名変換辞書セット:「F2」キー
- 郵便番号辞書セット:「F3」キー
- アクセサリ辞書セット:「F4」キー
- オプション辞書セット:「F5」キー
- 一文字入力辞書セット:「Shift+F6」キー
たとえば、第17回で紹介した「F3」キーによる「郵便番号」←→「住所」の変換は、「郵便番号辞書セット」を参照することにより実現されている。同様に、「F4」キーによる変換は「アクセサリ辞書セット」により実現されている。
もちろん、各辞書のオン/オフに応じて変換時の動作は変化する。以下の図は、「郵便番号辞書:事業所」の辞書についてオン/オフを切り替えた場合の例だ。左側は初期設定の状態、右側は「郵便番号辞書:事業所」の辞書をオンにした状態となる。
「100-8924」は住所に対応する郵便番号ではなく、国立国会図書館に割り当てられた個別の郵便番号(大口事業所個別番号)となる。このため、「郵便番号辞書:事業所」を追加していない環境では、「F3」キーを押しても「郵便番号」→「住所」の変換を実行できない。
このように、各辞書のオン/オフに応じて表示される候補が変化する仕組みになっている。各自の用途に応じて、辞書のオン/オフをカスタマイズしておくとよいだろう。
続いては、「校正支援」タブに用意されている設定項目だ。このタブには「ら抜き表現」や「さ入れ表現」など、文法的に間違った文章を入力したときに訂正候補を表示する機能に関する設定項目が用意されている。
「パレット」タブは、デスクトップの右下に表示される「ATOKパレット」をカスタマイズするときに利用する。ここで各機能の追加/削除を行うと、それが「ATOKパレット」に反映される仕組みになっている。
たとえば、「文字パレット」と「手書き文字入力」を追加すると、これらふたつのアイコンが「ATOKパレット」に表示されるようになる。
「キー・ローマ字・色」タブには、「どのIMEに準じたキー操作にするか?」を選択する設定項目が用意されている。Windows標準のIMEとなる「Microsoft IME」と同じ操作にするときは「MS-IME」を選択しておけばよい。さらに、ローマ字の対応表、変換対象になっている文字の色、などのカスタマイズも行えるようになっている。
そのほか、電子辞書データをATOKに追加/削除できる「電子辞典検索」タブ、プロキシサーバー経由でネット接続する場合の設定を指定する「インターネット設定」タブも用意されている。
このように「ATOKプロパティ」で設定を変更することで、ATOKの動作や表示を自由にカスタマイズできる。興味があれば、いちど試してみるとよいだろう。
なお、間違えた設定に変更してしまった場合は、各画面にある「初期値に戻す」ボタンをクリックして初期設定の状態に戻すこともできる。このボタンは、ATOKの全設定ではなく、いま画面に表示されている設定項目についてのみ、設定を初期値に戻すボタンをなる。念のため、覚えておくとよいだろう。























