ATOKには、自分がよく使うジャンルの最新用語や専門用語を追加できる「ATOKわたしの辞書プラス」という機能が用意されている。今回は、この機能の使い方を紹介していこう。あわせて、ATOKの設定を手軽に変更できる「ATOKカスタマイズ」についても紹介しておこう。

  • 「ATOKわたしの辞書プラス」と「ATOKカスタマイズ」

    「ATOKわたしの辞書プラス」と「ATOKカスタマイズ」

「ATOKわたしの辞書プラス」の設定方法

2025年のアップデートで新たに搭載された「ATOKわたしの辞書プラス」は、最新用語や専門用語を収録した“ジャンル別の辞書”を追加できるサービスだ。まずは、これらの辞書を追加するときの操作手順から紹介していこう。ATOKパレットにある「メニュー」アイコンから「カスタムATOK」を選択する。

  • 「カスタムATOK」の呼び出し

    「カスタムATOK」の呼び出し

すると、ATOKの設定を手軽に変更できる「カスタムATOK」が表示される。「ATOKわたしの辞書プラス」の設定を変更したいときは、トップ画面で「こだわり」をクリックすればよい。

  • 「カスタムATOK」のトップ画面

    「カスタムATOK」のトップ画面

「こだわりカスタム」の画面が表示されるので、左側のメニューで「わたしの辞書プラス」を選択する。続いて、「使用する」が選択されていることを確認してから好きなジャンルにチェックを入れていく。辞書のジャンルは、旅行、芸能、アニメ、野球、サッカー、相撲といった趣味的なものに加えて、医療、IT、電気・電子、建築・土木、法律、経済・金融といったビジネス向けのジャンルも用意されている。

  • 「ATOKわたしの辞書プラス」の設定画面(1)

    「ATOKわたしの辞書プラス」の設定画面(1)

画面を下へスクロールしていくと、各地の施設名などを収録した「都道府県別の辞書」も用意されていることを確認できる。必要な辞書をすべて選択できたら「カスタム内容を確認」ボタンをクリックする。

  • 「ATOKわたしの辞書プラス」の設定画面(2)

    「ATOKわたしの辞書プラス」の設定画面(2)

カスタム内容を示す画面が表示される。これを確認してから「カスタムの実行」ボタンをクリックする。

以上で「ATOKわたしの辞書プラス」の設定変更は完了。選択したジャンルの最新用語や専門用語を普通に入力できるようになる。

  • カスタム内容の確認と実行

    カスタム内容の確認と実行

追加される単語の例

では、実際に「どのようにATOKが変化するのか?」を具体的な例で紹介していこう。なお、設定変更が反映されるまでに数分ほど時間がかかるケースもあるようだ。この場合は、少し待ってから設定変更後の動作を確認してみるとよい。

以下の図は、「えすあいやー」とタイピングして「SIer」を入力しようとした場合の例だ。左側の図は「ATOKわたしの辞書プラス」を追加する前の状態となる。「SIやー」という意味不明の推測候補が表示されるだけで、「SIer」を入力することはできない。一方、右側の図は「IT」ジャンルの辞書を追加した後の例となる。「えすあいや」とタイピングした時点で推測候補に「SIer」が表示されることを確認できるだろう。ちなみに、候補の右端に「辞書」のアイコンが表示されている単語が「ATOKわたしの辞書プラス」により追加された単語となる。

  • 「えすあいやー」の推測候補

    「えすあいやー」の推測候補

ほかにも、「IT」ジャンルの辞書に収録されている単語の例をいくつか紹介しておこう。以下の図は、プログラミング言語である「C#」を「しーしゃーぷ」のタイピングで入力しようとした例だ。辞書を追加する前は、タイピングした文字をカタカナ表記に変更した候補しか表示されない。一方、「IT」ジャンルの辞書を追加すると、「しーしゃ」とタイピングした時点で「C#」や「シーシャープ」といった推測候補が表示されるようになる。

  • 「しーしゃーぷ」の推測候補

    「しーしゃーぷ」の推測候補

続いては、ボイスレコーダーを略して「ボイレコ」と入力しようとした場合の例だ。辞書を追加する前は「母入れ子」という強引に漢字変換した候補が表示されるだけ。「IT」ジャンルの辞書を追加すると、「ぼいれ」とタイピングした時点で「ボイレコ」の候補が表示されるようになる。

  • 「ぼいれこ」の推測候補

    「ぼいれこ」の推測候補

他のジャンルについても具体的な例を紹介していこう。以下の図は、長野県にある観光地「妻籠宿」(つまごじゅく)を入力しようとした例だ。辞書を追加する前は、「妻後塾」という“読み”を強引に漢字変換した候補しか表示されない。一方、「旅行」ジャンルの辞書を追加すると、「つまご」とタイピングした時点で「つま恋」や「つま恋リゾート彩の郷」といった推測候補が表示されるようになる。

  • 「つまごじゅく」の推測候補(1)

    「つまごじゅく」の推測候補(1)

さらに続けて「つまごじゅ」までタイピングすると、求めていた単語である「妻籠宿」が推測候補に表示される。

  • 「つまごじゅく」の推測候補(2)

    「つまごじゅく」の推測候補(2)

続いては、「野球」ジャンルの辞書で追加される単語の例を紹介していこう。以下の図は「ぬけだま」とタイピングしたときの例だ。辞書を追加する前も「抜け玉」という、それらしい候補が表示されているが、野球用語として使う場合は「抜け球」が正しい表記になる。このように、辞書を追加することで表記ミスを回避できるケースもある。

  • 「ぬけだま」の推測候補

    「ぬけだま」の推測候補

同じく「野球」ジャンルから、もうひとつ例を紹介しておこう。以下の図は「投高打低」と入力しようとした場合の例だ。「野球」ジャンルの辞書を追加していれば、一発で「投高打低」と入力できる。一方、辞書を追加していなかった場合は、「投手」、「高い」、「打つ」、「低い」などの変換結果を組み合わせて「投高打低」を再現しなければならず、かなり手間取ることになる。

  • 「とうこうだてい」の推測候補

    「とうこうだてい」の推測候補

このように、自分がよく使うジャンルの辞書を追加して、自分好みの日本語入力環境にカスタマイズできる機能が「ATOKわたしの辞書プラス」となる。もちろん、時代の変化とともに、各辞書には“新しい単語”が次々と追加登録されていく。

さらに、各自が欲しいと思う単語の投稿を受け付ける《みんなでつくる!ジャンル別辞書》という企画も開催されている。メーカーから一方的に提供される辞書ではなく、みんなで辞書を作り上げて、それを文字入力(IME)に活用する、というユニークな試みだ。詳しい情報は「ATOKわたしの辞書プラス」の紹介ページに記載されているので、気になる方は参照してみるとよいだろう。

  • 「みんなでつくる!ジャンル別辞書」の単語投稿を募集中

    「みんなでつくる!ジャンル別辞書」の単語投稿を募集中

「カスタムATOK」で設定できる内容

「ATOKわたしの辞書プラス」を紹介したついでに、「カスタムATOK」についても補足しておこう。こちらはATOKの正式な設定画面ではなく、手軽に、わかりやすく設定変更を行うためのツールと考えればよい。

もういちど「カスタムATOK」のトップ画面から紹介していこう。この画面にある「スタンダード」、「シンプル」、「ビジネス文書」、「カジュアル文書」の4項目は、用途に合わせて設定を自動カスタマイズしてもうらときに選択する。それぞれの設定項目を個別に指定していくときは「こだわり」を選択するのが基本だ。

  • 「カスタムATOK」のトップ画面

    「カスタムATOK」のトップ画面

「こだわり」をクリックすると、以下の図に示したような画面に切り替わる。「入力・変換」の分類には、表現モード(一般/話し言葉)、句読点の種類、テンキーから入力した数字を必ず半角にするか、などを設定する項目が用意されている。

  • 「入力・変換」の設定画面(1)

    「入力・変換」の設定画面(1)

また、ここには“変換タイミング”に関する設定項目も用意されているので、いちど確認しておくとよい。たとえば、「アルプスの」のように助詞までタイピングしてから変換するのか、それとも「アルプス」の時点で変換してしまうのか、といった各自の傾向に合わせて最適な変換方法を選択できるようになっている。

  • 「入力・変換」の設定画面(2)

    「入力・変換」の設定画面(2)

「校正支援」の分類には、「ら抜き表現」や「慣用句・ことわざの誤り」を指摘してくれる校正機能のオン/オフに関する設定項目が用意されている。こちらも各自の好みに合わせて設定をカスタマイズしておくとよいだろう。

  • 「校正支援」の設定画面

    「校正支援」の設定画面

「デザイン」の分類は、“候補の一覧”などのデザインを変更するときに利用する。こちらは各自の趣味の問題なので、必要に応じてカスタマイズしておけばよい。

  • 「デザイン」の設定画面

    「デザイン」の設定画面

「ツール・クラウド」の分類には、「ATOKクラウド辞典検索」や「ATOKクラウド推測変換」、「ATOKナントカ変換」など、主に「ATOKクラウドサービス」として提供される機能の設定項目が並んでいる。ただし、体験版のATOKは「ATOKクラウドサービス」を利用できないため、グレーアウトされている設定項目が大半を占める。

  • 「ツール・クラウド」の設定画面

    「ツール・クラウド」の設定画面

そのほか、「カスタムATOK」とは別に、ATOKの正式な環境設定画面(プロパティ)も用意されている。こちらについては、次回の記事で詳しく紹介していく予定だ。

自分で単語を登録する場合は?

最後に、よく使用する単語やフレーズを“ATOKのユーザー辞書”に登録する方法を紹介しておこう。辞書に掲載されていない単語を自分で登録する場合、もしくは“短縮読み”で文字を入力したい場合などに活用するとよい。

適当なアプリに登録したい単語(またはフレーズ)を入力し、その文字をドラッグして選択する。

  • 登録する単語の選択

    登録する単語の選択

続いて、ATOKパレットにある「メニュー」アイコンから「単語登録」を選択する。または、文字を選択した状態で「Ctrl+F7」キーを押してもよい。

  • 「単語登録」の呼び出し

    「単語登録」の呼び出し

単語の登録画面が表示されるので、「読み」と「品詞」を指定して「OK」ボタンをクリックする。以上で単語の登録は完了。次回から指定した“読み”で、その単語を入力できるようになる。

  • ATOK標準辞書セットへの単語登録

    ATOK標準辞書セットへの単語登録

ちなみに、登録可能な単語(フレーズ)は全角・半角を問わず100文字以内となっている。このため、よく使用する文章を登録して、スニペットツールのように活用することも可能だ。

念のため、登録した単語を管理するときの操作手順も紹介しておこう。この場合は、ATOKパレットにある「メニュー」アイコンから「辞書メンテナンス」→「辞書ユーティリティ」を選択すればよい。

  • 「辞書ユーティリティ」の呼び出し

    「辞書ユーティリティ」の呼び出し

すると、以下の図のような画面が表示され、登録済みの単語を編集したり、削除したりできるようになる。

  • 「辞書ユーティリティ」を使った登録単語の管理

    「辞書ユーティリティ」を使った登録単語の管理

ということで、今回は「ATOKわたしの辞書プラス」を中心に、「カスタムATOK」や「単語登録」について紹介してきた。これらのカスタマイズを施すことで、ATOKをより使い勝手のよいIMEに仕上げていくことも可能である。ATOKの基本を理解できたら、ここで紹介したカスタム機能についても試してみるとよいだろう。