今回は、ATOKならではの変換機能について紹介していこう。住所を補完する、郵便番号を検索する、英単語に翻訳する、類義語に置き換えるなど、ATOKには他のIMEにない独自の変換機能が用意されている。これらの機能を上手に活用すれば、“調べる手間”を省いて作業を高速化できる。ぜひ使い方を覚えておこう。

  • ATOKならではの変換機能

    ATOKならではの変換機能

漢字変換時の操作

まずは、変換時に表示される「候補の一覧」を切り替える方法をから紹介していこう。以下の図は「しんせい」とタイピングして「Space」キーを押した様子だ。9個の変換候補の下に「0 シンセイ,シンセイ… カタカナ・英字」といった表示があることに気付くと思う。

  • 「しんせい」の変換候補の一覧

    「しんせい」の変換候補の一覧

この表示は「0」キーで候補の一覧を切り替えられることを意味している。実際に「0」キーを押してみた様子を紹介しておこう。変換候補の一覧が以下の図のように変化し、カタカナや英字への変換が手軽に行えるようになる。

  • 「0」キーで候補の一覧を切り替えた様子

    「0」キーで候補の一覧を切り替えた様子

このように「0」キーは、候補の一覧を切り替える役割を担っている。色々な場面に応用できるので、ぜひ覚えておくとよい。

もちろん、これまでと同様に、ファンクションキーを使ってカタカナや英字に変換することも可能だ。念のため、各ファンクションキーに割り当てられている機能を以下にまとめておこう。

◆F6〜F10キーに割り当てられている機能

  • F6(Ctrl+U):ひらがなに変換
  • F7(Ctrl+I):全角カタカナに変換
  • F8(Ctrl+O):半角カタカナに変換
  • F9(Ctrl+P):全角英数に変換
  • F10(Ctrl+T):半角英数に変換

そのほか、「きょう」とタイピングして“今日の日付”を入力する、といった日付入力にも対応している。同様に、「きのう」や「あした」、「あさって」などの日付も変換機能を使って即座に入力することが可能となっている。

  • 「きょう」の変換候補

    「きょう」の変換候補

「げつようび」などの曜日名をタイピングした場合は、今週と先週(または来週)について、その曜日に該当する日付を入力できる。

これらは「Microsoft IME」や「Google 日本語入力」にも用意されている機能であり、特に目新しい機能ではない。よって、候補の一覧を「0」キーで切り替えられる、ということを覚えておけば十分だ。

  • 「げつようび」の変換候補

    「げつようび」の変換候補

住所、郵便番号への変換機能

続いては、ATOKならではの特徴的な機能を紹介していこう。以下の図は、7桁の郵便番号をタイピングしたときの様子だ。郵便番号に該当する住所が推測候補として表示されている。

  • 郵便番号の推測候補

    郵便番号の推測候補

こういった「郵便番号」→「住所」の変換機能は「Microsoft IME」や「Google 日本語入力」にも用意されている。ATOKが特徴的なのは、この逆となる「住所」→「郵便番号」の変換にも対応していることだ。

以下の図は「にししんじゅく」とタイピングして「Space」キーを押した様子だ。現時点では、普通に漢字変換の候補が表示されている。

  • 「にししんじゅく」の変換候補

    「にししんじゅく」の変換候補

この状態で「F3」キーを押すと、都道府県・市区町村を補完した住所に変換できる。さらに、他の変換候補として“郵便番号付きの住所”や“郵便番号のみ”も選択できるようになっている。

  • 「F3」キーによる住所の補完、郵便番号の検索

    「F3」キーによる住所の補完、郵便番号の検索

このように、住所の一部(町名)を変換することにより、完全な住所に補完する、該当する郵便番号を入力する、といった使い方ができるようになっている。

同じ町名が全国各地にある場合の操作手順についても補足しておこう。以下の図は「たかだ」とタイピングして「Space」キーを押した様子だ。現時点では「たかだ」の変換候補が表示されている。

  • 「たかだ」の変換候補

    「たかだ」の変換候補

この状態で「F3」キーを押すと、今回の例では「東京都豊島区高田」について、住所や郵便番号の変換候補が表示された。

  • 「F3」キーを押した様子

    「F3」キーを押した様子

とはいえ、ここで求めているのは「千葉県市原市」にある「高田」であったとしよう。このような場合は、さらに「F3」キーを押せばよい。すると、「たかだ」が含まれる日本全国の住所が一覧表示される。

  • もういちど「F3」キーを押した様子

    もういちど「F3」キーを押した様子

あとは「↓」キーを押して目的の住所を選択するだけ。「↓」キーの代わりに「Tab」キーを押して、都道府県単位で選択位置を移動させてもよい。これで目的の住所を補完入力することが可能となる。

  • 住所の候補の2ページ目以降

    住所の候補の2ページ目以降

さらに、候補を選択した状態で「0」キーを押すと、“郵便番号付きの住所”や“郵便番号のみ”が候補として表示されるようになる。住所に該当する郵便番号を入力したいときは、このような手順で操作を進めていけばよい。

操作手順が少しだけ複雑になるが、そのつど郵便番号を調べる手間を省けるため、住所の入力が多い人にとっては、とても便利な機能となるだろう。

  • 候補を選択して「0」キーを押した様子

    候補を選択して「0」キーを押した様子

英単語、顔文字への変換機能

ATOKには、タイピングした文字を「英単語」に翻訳したり、「顔文字」に変換したりする機能も用意されている。以下の図は「しょうかい」とタイピングして「Space」キーを押した様子だ。現時点では「紹介/照会/商会/……」といった具合に漢字変換の候補が一覧表示されている。

  • 「しょうかい」の変換候補

    「しょうかい」の変換候補

この状態で「F4」キーを押すと、タイピングした文字(日本語)に該当する「英単語」を入力できる。今回の例の場合、「紹介」を意味する英単語「introduction」が入力される。なお、画面には《紹介》という文字も表示されているが、この部分は翻訳前の日本語を示しているだけで、変換を確定した時点で自動的に消去される。

  • 「F4」キーによる英単語への変換

    「F4」キーによる英単語への変換

「紹介」ではなく、「照会」を英単語に翻訳したい場合は、さらに「F4」キーを押せばよい。すると、「照会」を意味する「reference」などを選択できるようになる。

  • さらに「F4」キーを押した様子

    さらに「F4」キーを押した様子

そのほか、「顔文字」に変換するときにも「F4」キーが活用できる。以下の図は「ありがとう」とタイピングして「F4」キーを2回押した様子だ。「ありがとう」を意味する英単語「thank」に続いて、顔文字の候補が並んでいることを確認できるだろう。

  • 「ありがとう」の顔文字候補

    「ありがとう」の顔文字候補

このように、ATOKには日本語を英単語に変換する機能も装備されている。他のIMEでも「ブック」→「book」や「リファレンス」→「reference」のように“カタカナ表記の英語”を英単語に変換できるケースはあるが、「ほん」→「book」といった翻訳変換には対応していない。このため、ATOKを簡単な和英辞典として活用することもできる。

ただし、翻訳できるのは“ごく一般的な英単語”に限定されていることを覚えておく必要がある。たとえば、「たいしかん」(大使館)とタイピングして「F4」キーを押しても、「embassy」に翻訳することはできなかった。

なお、ATOK Passportの「プレミアム」プランを契約した場合は「8カ国語クラウド翻訳変換 for ATOK」を利用可能になるため、難しい単語の翻訳だけでなく、文章のリアルタイム翻訳も行えるようになる。これについては、いずれ詳しく紹介していく予定だ。

類義語を手軽に検索できる連想変換機能

ATOKには、類義語(意味が似ている別の単語)を検索できる「シソーラス」のような機能も用意されている。具体的な例を紹介していこう。

以下の図は「たすける」とタイピングして変換候補の一覧を表示した様子だ。ここで「助け」の変換候補を選択すると、一覧の下に「△△の連想変換」というガイダンスが表示されるのを確認できる。

  • 「助ける」の候補を選択して「Ctrl+Tab」キーを押す

    「助ける」の候補を選択して「Ctrl+Tab」キーを押す

この表示は、その単語の「類義語」を参照できることを示している。ガイダンスに従って「Ctrl+Tab」キーを押すと、「助ける」の類義語が一覧表示される。もちろん、この中から最適な単語を選択して、その文字を入力することも可能だ。

  • 「助ける」の連想変換が一覧表示される

    「助ける」の連想変換が一覧表示される

もうひとつ例を紹介しておこう。以下の図は「くたびれる」の類義語を表示した例だ。「くたびれている」よりも「疲弊している」のほうが適切な表現かも……といった具合に、自分だけでは思いつかなかった表現方法を発見できるケースもある。

  • 「くたびれる」の連想変換

    「くたびれる」の連想変換

このように「もっと適切な日本語表現はないだろうか?」といった場合に活用できるのが連想変換だ。日本語入力を高速化してくれる機能ではないが、文章の作成を補助してくれる機能と考えれば、作業時間の短縮に貢献してくれるだろう。

IMEオフでも日本語に変換できるインプットアシスト

間違ってIMEをオフにしたまま日本語をタイピングしてしまうケースもあるだろう。ATOKには、このような場合に便利に活用できる「インプットアシスト」が用意されている。IMEがオフの状態でローマ字入力を行うと、以下の図に示したようなガイダンスが表示される。

  • IMEオフの状態でタイピングした文字

    IMEオフの状態でタイピングした文字

このガイダンスに従って「Shift+変換」キーを押すと、タイピングしなおすことなく、そのまま日本語に変換することが可能となる。「半角/全角」キーの押し忘れが多い人にとっては、とても頼りになる機能といえるだろう。

  • インプットアシストによる日本語への変換

    インプットアシストによる日本語への変換

誤学習された推測候補の削除

最後に、「学習された推測候補」を削除するときの操作手順を紹介しておこう。以下の図は、「新入」と入力すべきところを間違えて「侵入」で確定してしまった例だ。この「侵入」は履歴として学習されるため、以降も「しんにゅう」もしくは「しん」などとタイピングする毎に「侵入」が推測候補に表示されてしまう。このため、同じミスを何回も繰り返してしまう恐れがある。

  • 誤確定により学習された推測候補

    誤確定により学習された推測候補

このような場合は、不要な推測候補を削除しておくと、以降の入力ミスを回避できるようになる。不要な推測候補を選択して「Ctrl+Delete」キーを押す。

  • 候補を選択して「Ctrl+Delete」キーを押す

    候補を選択して「Ctrl+Delete」キーを押す

すると、以下の図のような確認画面が表示される。ここで「はい」ボタンをクリックすると(または「Enter」キーを押すと)、その推測候補を一覧から削除できる。

  • 推測候補の削除を確認する画面

    推測候補の削除を確認する画面

推測変換や学習機能はとても便利な機能だが、誤変換した単語まで学習されてしまうという都合の悪い状態になってしまうケースもある。このような場合に備えて、不要な推測候補を削除する方法を覚えておくとよい。

これまでに紹介してきたように、ATOKには他のIMEにはない便利な機能が数多く用意されている。特に辞書(辞典)に関連する機能には大きな優位性があるようだ。そのほか、2025年に搭載された新エンジン「ATOKハイパーハイブリッドエンジン2」の性能も気になるところだが、学習機能は各ユーザーの入力履歴に左右される部分が大きいので、これについては各自で実際に試しながら評価して頂ければ幸いだ。ということで、次回は「ATOKわたしの辞書プラス」などの機能について紹介していこう。