過去1年間で米国在住の中国系AI研究者・エンジニアが相次いで帰国し、中国のAI開発をけん引しつつある。Google DeepMindの上級職を離れてByteDanceのLLM(大規模言語モデル)開発を率いるWu Yonghui氏、OpenAIを退職してTencentに移籍したYao Shunyu氏など、AI研究で知られた人材の中国帰国が相次いでいるという。
グローバルにおける技術秩序の正常化
ヘッドハンター3社だけでも過去1年間に30人超の研究者を米国から中国企業へ転職・移住させており、前年の数人から急増したとのことだ。背景には中国側の「引力」と米国側の「斥力」の両面があると分析。
中国では自動運転や製造業など幅広い分野でAI実装が急速に進んでおり、研究者にとって魅力的な実験環境が整いつつある。生活費や税負担を考慮した実質報酬もシリコンバレーを上回る水準に達しているという。
一方、米国では移民政策の厳格化や地政学的緊張の高まりにより、中国系エンジニアにとって就労・定住環境が悪化している。
清華大学では工学系卒業生の米国博士課程への志願者比率がコロナ前の約50%から約20%に低下しており、優秀な人材の「米国離れ」は学生段階から始まっているとのこと。ただし、MetaがAlibaba(アリババ)のAIエンジニアを引き抜くなど、シリコンバレーへの人材流入も継続して続いている。
シリコンバレーのVC(ベンチャーキャピタル)であるFusion FundのLu Zhang氏は「資本の循環効率やネットワークの厚みという点で、シリコンバレーは依然として唯一無二」と指摘する。4月10日付で報じたFinancial Timesは、この動きを「グローバルにおける技術秩序の正常化」と位置付けており、AI覇権争いの行方はいかに優秀な人材を引きつけ続けられるかにかかっていると分析している。