NTT、NTT東日本、大成建設は4月10日、施工の高度なオートメーション化を目的として、NTT西日本が提供するIOWN APNと、NTT東日本が提供するローカル5G(ギガらく5Gセレクト)および60ギガヘルツ帯無線LAN(WiGig)を活用した環境を構築し、大成建設の接続切替システムにより離れた拠点から複数重機を1台の操作卓で遠隔操作および自動制御する実証に成功したことを発表し、オンラインで記者説明会を開いた。
なぜ建設業は「重機の遠隔操作」を求めているのか?人手不足の実態
昨今の建設業界では、55歳以上の就業者の割合が高く29歳以下の割合が低いなど、就業者の高齢化や技能者不足が深刻化している。また、年間の実労働時間は他業種の平均と比較して62時間長く、長時間労働も課題となっている。
こうした課題に対し、国土交通省は建設現場の生産性向上や業務、組織、プロセス、働き方の変革を目的として「i-Construction 2.0」を取りまとめ、施工、データ連携、施工管理のオートメーション化を進めている。
しかし重機の遠隔操作や自動制御を高度化していく際には、低遅延、低ジッタ(低ゆらぎ)通信によるリアルタイムな操作性や遠近感の把握が求められる。工事現場内を移動する重機はラストワンマイルの無線接続を必要とするが、自動制御の重機やロボットが広い現場全体で安定稼働するためには、複数アングルからの高精細な映像を伝送するための帯域を広域でカバーするなど、無線環境の構築も課題となる。
大成建設は建設機械メーカーと協働し、遠隔操縦や自動運転が可能な「T-iROBOシリーズ」の開発を進めている。
大成建設 生産技術開発部 室長の青木浩章氏は、「安定した稼働のためには、機械本体の開発だけではなく、通信ネットワークの構築も重要な課題。2022年の発表段階では1台の操作を対象としていたが、最近では複数台制御にも挑戦しているため、高速かつ安定した通信が必要となる」と、現場の課題を述べていた。
なぜ重機の遠隔操作は難しいのか?鍵は「低遅延通信」にあった
実証実験では、2月2日(月)~27日(金)までの期間、遠隔操作・自動制御システムと接続切替システムを設置した遠隔操作拠点(三重県 桑名市)と、3台の重機を配置した実証現場(三重県 員弁郡 東員町)の2拠点間をIOWN APNで接続した。
現場の無線環境は、300メートル程度の広域を大容量通信でカバーする自動制御用の無線ネットワークをローカル5Gで構築。複数のカメラ映像や制御信号の低ジッタ伝送を行う遠隔操作用の無線ネットワークをWiGigで構築した。
「i-Construction 2.0」の3つの柱に含まれる施工のオートメーション化では、自動施工、遠隔施工、施工データの活用が進められている。そこで、今回の実証でもこれら3点を中心に評価を実施した。
本当に1人で3台操作できるのか?実証で確認されたこと
低遅延でゆらぎのない特長を持つIOWN APNと、大成建設の接続切替システムを活用した結果、通常は3人で実施する複数重機での作業を、1人で遠隔操作・自動制御できることが確認された。
また、オペレーターの遠隔操作をサポートするマシンコントロール(重機の位置情報や施工の設計データと作業装置の位置との差分に基づき、動作を自動または半自動で制御するシステム)およびマシンガイダンス(位置の差分をオペレーターに提示することで施工を支援するシステム)機能についても、従来の同一敷地内での利用と同程度の精度で利用可能なことが実証された。
IOWN APNとWiGigの組み合わせたエンド・ツー・エンドのネットワーク区間では、遅延が数ミリ秒程度、ジッタは数十マイクロ秒程度だったとのことだ。
マシンコントロール・マシンガイダンスに使用する設計データの作成は、ドローン空撮で取得した大容量の現況地盤データの授受にIOWN APNを活用。伝送時間を従来の約8分の1にまで短縮し、オフィスでの三次元設計データの作成から現場反映までを効率化している。
現場全体で通信は途切れないのか?300m移動でも安定した理由
300メートル程度の実証現場全体を大容量無線ネットワークでカバーする環境をローカル5Gで実現し、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)信号に基づく重機の位置情報を遠隔拠点に伝送しながら、現場全体で通信が途切れることなく重機の制御が可能であることを確認した。
特定エリアにおける重機の遠隔操作では、カメラ映像や制御信号の低遅延・低ジッタ伝送を実現する無線ネットワークとして、NTTアクセスサービスシステム研究所のサイトダイバーシティ技術が搭載されたWiGig機器を活用した。
サイトダイバーシティ技術とは、無線端末内に複数の無線機能部を装備する端末主導の切替制御技術を指す。
これにより、有線区間含めたネットワーク区間のエンド・ツー・エンドで遅延数ミリ秒程度、ジッタ数十マイクロ秒程度を確保して、従来よりもリアルタイムな映像伝送が可能であることを確認した。
また、既設のLAN区間をWiGigで代替し、従来は終日かかる作業であった無線ネットワークの構築時間を、約1時間に短縮できることを確認したという。
NTT IOWNプロダクトデザインセンタ APN推進プロジェクトの担当課長を務める坂本誠治氏は、今後の展望について「2026年度は長距離区間での大型造成工事など現場での実証を予定している。さらに2027年度にはダムの堆砂対策における遠隔操作や自動制御への適用を目指す」と話していた。







