青色申告制度が22年ぶりに見直され、2027年から特別控除は最大75万円へ引き上げられる。一方で、紙申告は大幅な控除減となり、デジタル対応が実質必須に。freeeが解説した税制改正大綱のポイントを整理する。

青色申告制度とは?

冒頭、フリー 金融渉外部長/プロダクトマネージャー/スモールビジネス総合研究所所長の小泉美果氏は「今回の税制改正大綱は青色申告について22年ぶりの改正になったことが大きなポイント。そもそも青色申告制度とは日々の取引を適切に記録する対価として、税制面でさまざまな特典を受けることができる制度となる。青色申告の承認を受けなければ白色申告となるが、国が定めた様式に則れば青色申告制度が適用される。その分、記帳は難しくなるものの、税制面上のメリットを受けられる」と説明した。

  • フリー 金融渉外部長/プロダクトマネージャー/スモールビジネス総合研究所所長の小泉美果氏

    フリー 金融渉外部長/プロダクトマネージャー/スモールビジネス総合研究所所長の小泉美果氏

現行の青色申告制度は青色申告承認申請書を提出した事業者を対象とし、作成すべき帳簿書類としては仕訳帳や総勘定元帳、そのほか必要な帳簿がある。

これらを提出・作成することで(1)青色申告特別控除(最大65万円)、(2)青色事業専従者給与(家族への給料を経費化)、(3)純損失の繰越しと繰戻し(赤字の活用)、(4)少額減価償却資産の特例(30万円未満資産の一括経費化)の4つの特典が受けられる。

  • 2026年までの個人事業主の青色申告4大特典

    2026年までの個人事業主の青色申告4大特典

一方、白色申告制度は申告承認申請書を提出せずに、売上帳と経費帳などしか作成しない事業者が対象となり、青色申告制度で適用される(1)と(4)の特典は受けることができない。

現在、青色申告制度で最大の控除は65万円だが、その適用には「正規の簿記」が求められる。正規の簿記とは、取引を原因と結果の2つの側面(借方・貸方)に分解し、資産・負債・純資産・収益・費用の5要素を用いて網羅的に記録する複式簿記のことだ。

2027年から変わる青色申告特別控除、最大75万円の条件

現在は上記のような形で青色申告制度は運用されてはいるが、今回の税制改正大綱により2027年から変更となる。小泉氏は「青色申告の特典を最大限に受けたい個人事業主さんはデジタル化に対応していくことが必須になる」と話す。

2026年までの制度では電子申告(e-Tax)を利用していれば65万円の控除、紙による申告の場合は55万円の控除をそれぞれ受けられる。

しかし、今回の改正では控除額が従来比10万円増の最大75万円に増加するが「デジタルシームレス」というデータ連携、もしくは帳簿の保存方法が「優良な電子帳簿」に対応しなければ、この額の控除は受けられないようになっている。また、現行と同額の65万円の控除を受けるにはe-Taxが必須となり、紙での申告に関しては10万円に激減する。

  • 2027年以降の青色申告特別控除の条件と控除額

    2027年以降の青色申告特別控除の条件と控除額

同氏は「確定申告を紙で行っている方たちは従来の65万円から10万円に減少する。つまり、紙の申告のままならば45万円の控除減額となってしまう。ただ、記帳から確定申告までデジタル化すれば、75万円の控除が受けられる。また、注意しなければならないことが前々年の収入金額が1000万円超で正規の簿記ではない事業主は控除自体がなしになる」と話す。

  • 前々年の収入金額が1000万円超で正規の簿記ではない事業主は控除自体がなくなる

    前々年の収入金額が1000万円超で正規の簿記ではない事業主は控除自体がなくなる

デジタルシームレスと優良な電子帳簿、控除75万円の要件を整理

最大75万円の控除を受ける際に、鍵となるものがデジタルシームレスと優良な電子帳簿だ。

デジタルシームレスとは、デジタルインボイス(Peppol)や銀行API連携を用いた入出金明細の自動取得などが該当する。少なくとも他システムから取引データを電子のまま連携し、取引の訂正や削除した事実の確認が可能などの要件を満たすシステムが前提となる。

  • デジタルシームレスの概要

    デジタルシームレスの概要

デジタルシームレスには、Peppolと銀行API連携の2つの種類が存在する。Peppolは、電子請求書の送受信をスムーズにするための世界共通ルールだが、スモールビジネスにとって各取引先との合意形成のハードルが高い。銀行APIは入出金明細を正確かつ安全に取得できる仕組みであり、金融機関の規約に合意すれば自社だけで進められる。

  • デジタルシームレスの種類

    デジタルシームレスの種類

一方、優良な電子帳簿とは一貫した電磁的記録、関係書類などの備付け、見読可能性の確保、相互関連性の確保といった優良以外の電子帳簿の項目に加え、訂正・削除履歴の確保と検索機能の確保が必要となる。

  • 優良な電子帳簿の概要

    優良な電子帳簿の概要

そのため、取引の訂正や削除した事実の確認や複雑な検索(日付・取引先・金額など)が可能などの要件を満たす会計ソフトを前提としている。

小泉氏によると、これまで個人事業主でも青色申告と電子申告は一定程度広まっているという。しかし、正規の簿記の普及と記帳のデジタル化は伸びしろが大きいとのことだ。現在、個人事業主の青色申告率は6割前後ではあるものの、正規の簿記の記帳(55万円控除)を行っている事業者は全体の3割程度となっており、現行制度では白色申告がデフォルトとのことだ。

最後に、同氏は「2026年の間にデジタル化の準備としてソフトウェアの導入や、青色申告の承認申請書の税務署への提出などを行い、2027年1月からは複式簿記で青色申告をできる状態にすることで最大75万円の控除が受けられる」と述べ、説明を締めくくった。

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