Box Japanは3月27日、2027年度(2026年2月~2027年1月)の事業戦略説明会を開催した。同社は2026年は「AIエージェント実装」の年と定め、企業のコンテンツをコンテキストとして活用するBoxの提案を加速する。
社長執行役員 佐藤範之氏は、「今年はAIエージェント実装の年にしたい。そのために、今年はPoCに終わらせずに、果実を手にするまで持って行きたい」と語った。
なぜAIはPoCで止まるのか?
AI活用は企業で進みつつあるが、多くのプロジェクトがPoC(概念実証)にとどまり、現場での活用や業務成果につながっていないのが実情だ。なぜAIは実装に至らないのか。その背景には共通した課題がある。
理由(1)業務に組み込まれていない
多くのPoCは、特定の業務や部門に閉じた形で実施される。しかし、本来AIは日常業務の中で使われて初めて価値を発揮する。PoC段階では「使えるかどうか」の検証にとどまり、業務プロセスの中にどう組み込むかまで設計されていないケースが多い。
その結果、実証実験では一定の成果が確認されても、現場で継続的に利用されるには至らない。
理由(2)データが分散・未整備
AIの性能は、参照するデータの質と量に大きく依存する。しかし企業内のデータは部門ごとに分散し、いわゆる「サイロ化」が進んでいるケースが多い。
さらに、文書や資料といった非構造化データは整理されていないことも多く、AIが活用できる状態になっていない。この状態では、PoCは成立しても、実運用で精度や信頼性を担保することが難しい。
理由(3):IT部門主導で終わる
PoCはIT部門が主導して進めることが多いが、AIを使うのは業務部門である。このギャップが、実装の壁になる。
業務部門にとっては「何に使えるのか」「どう業務が変わるのか」が見えなければ導入は進まない。一方、IT部門は技術検証に注力しがちで、業務課題との接続が不十分なままPoCが終了するケースも少なくない。
こうした課題を乗り越え、「PoCで終わらせない」ためには、業務への組み込みやデータ活用を前提とした仕組みが不可欠となる。AIを業務に組み込むには、業務で扱うデータと結びついた形で活用することが不可欠だ。例えば、社内に蓄積された契約書やマニュアル、営業資料といったコンテンツを横断的に検索・要約し、問い合わせに回答するAIを導入すれば、単なる実証実験ではなく、日常業務の中で継続的に価値を生み出せる。
PoCで終わらせないために何が必要か?Boxの答え「Solutions」
Boxが打ち出す「Solutions」はこうした課題への対応を狙ったものだ。価値創出までの時間を短縮するための型を「Solutions」として提供する。
佐藤氏は「企業がAIエージェントで成果を得るために、効果を出しやすい形でBoxの機能群をユースケースごとに統合してデリバリーする」と説明した。
「Solutions」は、「LOB & ECM」「金融サービス」「ライフサイエンス」「公共領域」などの分野ごとに必要な機能を提供する。
「LOB & ECM」に関しては、「契約ライフサイクル管理」「RFP受領と回答管理」「従業員データ管理」「データ主体からのリクエスト管理」「情報のアーカイブ」を提供する。
SaaSはどう変わる?「AIユニット」が意味するもの
佐藤氏は、「“SaaS is Dead”が話題になっているが、シートライセンスは継続する」と述べたうえで、2027年度は新しい収益の柱として、APIコール、AIトークンをユニットとして提供する「AIユニット」を提供することを紹介した。
これにより、「IT部門に加えて、ユーザー部門と接点を持つことが増えると考えている」と、佐藤氏は語った。そのため、市場に対しても、業務部門に向けて、業務課題を解決するソリューションを提案し、AIエージェントによる業務成果の創出というメリットを明確に打ち出すという。
こうした変化について、佐藤氏は「SaaS 2.0の始まりと考えている。これからは、System of Record(記録のシステム)を握り、AIを業務として回せるSaaSこそが、次の勝者になる」と語った。
Boxはエクサバイトを超えるSoRのデータを抱えているとともに、AIエージェントが動くプラットフォームとして外のAIエージェントと連携できるインフラを提供しているため、勝ち筋がすでにあるという。
なぜコンテンツが重要なのか?AI活用の本質
Box 共同創業者 兼 CEO アーロン・レヴィ氏がBoxのグローバル市場概況やビジョンについて説明を行った。
レヴィ氏は、「AIエージェントの性能は急速に向上しており、AIエージェントは自律的に業務を実行する“新たな労働力”となりつつある」と、AIエージェント現状を紹介した。
AIエージェントがワークフローを自動化することで、「個人の仕事のやり方の変革につながるが、一番大きなインパクトは会社全体の生産性が変わる」と、同氏は述べた。
さらに、同氏はAIによる変革を実現するには、エージェントが、製品の仕様、マーケティングのアセット、人事のポリシーといったビジネスに関する情報を把握している必要があると指摘した。
AIが回答生成時に参照するビジネス情報、すなわちビジネスコンテキストは企業のコンテンツの中に存在する。つまり、コンテンツとAIエージェントを連携することが重要となる。
「企業の情報の90%は非構造化データといわれている。その可能性を引き出し、ビジネスコンテキストに変換してAIにつなげることに意義がある」(レヴィ氏)
最大の壁「データのサイロ化」をどう超えるか
ただし、レヴィ氏は、企業がAIを活用する上で、「データがサイロ化されているという課題もある」と指摘した。
「分散しているデータは活用することが難しく、データが誤っているとエージェントが誤った解を生成することになる。データセットを正しく取り扱えないといけない」
そこで、同社は安心安全な形で、企業のデータとAIエージェントをつなげるため、インテリジェントコンテンツ管理を実現している。
「Boxでは、AIプラットフォーム上で人間・アプリ・AIを連携できる。エージェント群を用意して、それらが企業のコンテンツを活用してビジネス全体にわたって仕事をすることを実現する」として、レヴィ氏は同社がAIエージェントを活用した支援を変革すると語った。



