The New Stackは3月22日(現地時間)、「Will AI force code to evolve or make it extinct? - The New Stack」において、AIの進展がプログラミング言語の在り方にどのような変化をもたらすかについて、開発者や研究者の見解をまとめた記事を掲載した。
AI時代に再評価される既存言語、「型」が強みになる理由
TypeScriptやRustといった型付き言語が、AI時代に入り再評価されている。AIによるコード生成が一般化する中で、従来とは異なる観点から言語の価値が見直され始めているためだ。
AIが生成するコードでは、構文自体は正しくても、型の不一致や論理の破綻といった問題が発生しやすい。このため、コンパイル時にエラーを検出できる強い型システムが、コード品質の担保に有効とされている。人間がすべてを精査しきれない場面でも、型による制約が安全性の下支えとなる。
実際、GitHubのデータでもこうした傾向が確認されている。TypeScriptは2025年に最も利用される言語となり、開発者数も大きく増加した。LuauやTypstといった型付けを持つ言語も高い成長率を示しており、型システムを備えた言語への関心が広がっている。
さらに、JavaやC++など従来から広く使われてきた言語についても、AIとの組み合わせによって再評価が進んでいる。AIが複雑な構文や記述を補助することで、開発者は言語の持つ厳密さや安全性といった特性をより活かしやすくなっているためだ。
AIに最適化された「AIファースト言語」という発想
近年、大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)の普及に伴い、コード生成の方法そのものが変わりつつある。その中で注目されているのが、AIの処理効率を最優先に設計された「AIファースト言語」の可能性だ。
スペインの開発者は、人間にとって読みやすい構文がトークン消費を増大させる点に着目し、AIに最適化された言語を提案した。さらに別の開発者も、AIエージェント向けに曖昧さを排除した簡潔な構文を持つ言語の構想を発表している。
なぜ「AIファースト言語」は広がらないのか
しかし現時点では、こうした新言語の採用は広がっていない。GitHubの開発者向けアドボケートであるAndrea Griffiths氏は、既存エコシステムの影響力の大きさを理由に挙げる。ライブラリーやツール、知識の蓄積といった要素が、新しい言語への移行を困難にしている。
一方で、AI時代に適応する形で既存言語の評価が変化している。とくにRustやTypeScriptのような強い型付けを持つ言語は、AIが生成したコードの品質を担保しやすい特性から注目されている。AIが出力するコードでは型エラーが多く発生する傾向があり、型システムが論理の整合性を担保する役割を果たすとされる。
GitHubのデータでも同様の傾向が確認されている。TypeScriptは2025年に最も利用される言語となり、開発者数も大きく増加した。また、LuauやTypstなど型付けを持つ言語も高い成長率を示している。JavaやC++なども利用が拡大しており、AIが既存言語の価値を押し上げている可能性がある。
AIはコードを不要にするのか、それとも役割を変えるのか
こうした変化についてGriffiths氏は、新言語の登場ではなく、既存言語の中で優位性が再編されていると指摘する。AIは複雑な構文の扱いを補助するため、開発者は用途に適した言語を選択しやすくなっている。
さらに議論は、言語そのものの存在意義にもおよぶ。IEEE SpectrumのStephen Cass氏は、AIが成熟すれば、高水準言語を介さずに中間表現へ直接変換する可能性を提示した。この場合、ソースコードを読む必要がなくなり、プログラムはブラックボックス化する懸念もある。
ただし、この見方には慎重な意見もある。Dina Genkina氏は、AIが安全に動作するためには依然として制約や検証が必要であり、完全なコードレス開発は現実的ではないと指摘する。実際の運用では、生成されたコードの理解や検証、テストが不可欠であり、人間の関与は続くと見られている。
AIはプログラミング言語を消滅させるのではなく、その使われ方や選ばれ方を変えていく段階にある。新言語の登場、既存言語の再評価、コード生成の自動化といった複数の方向性が並行して進んでおり、今後も議論が続くとみられる。
