Pew Research Centerは3月12日(米国時間)、「What the data says about Americans’ views of artificial intelligence|Pew Research Center」において、米国社会におけるAIの受け止め方と利用実態をまとめた調査結果を公表した。

過去5年間の複数の調査を基に、日常生活の中で人々がAIに抱く期待と不安の両面を分析した内容となっている。

  • What the data says about Americans’ views of artificial intelligence|Pew Research Center

    What the data says about Americans’ views of artificial intelligence|Pew Research Center

世界でも広がる“AIへの不安”、25カ国で共通傾向

調査では、AIが生活や仕事に浸透する状況に対し、米国の成人の多くが慎重な姿勢を保っていることが明らかになった。2025年6月の調査では、AIの普及に対して約半数が不安を感じていると回答。不安よりも期待のほうが大きいと答えたのはわずか10%にとどまった。2021年の調査より不安が増しており、AIの存在感が高まるほど警戒心が強まる傾向が示されている。

25カ国の調査結果でも同傾向がみられ、中央値は不安を感じる(34%)、不安と期待が同程度(42%)、期待が強い(16%)となった。ただし、普及率が比較的高いとされるドイツやインドは米国ほど不安を感じていないことも明らかになっており、国民性、社会基盤の信頼性、サイバー犯罪の多さなども結果に影響した可能性がある。なお、日本は不安を感じる(28%)、不安と期待が同程度(55%)、期待が強い(16%)となり、やや不安が優勢の結果となった。

  • 25か国のAIに対する意識調査の結果 - 引用:Pew Research Center

    25か国のAIに対する意識調査の結果 引用:Pew Research Center

分野で評価が分裂、医療は肯定・教育や仕事は慎重

人間の創造力や交友関係の構築能力に与えるAIの影響については、米国の約半数が悪化すると回答し、改善するとみる人は少ないことがわかった。一方で、気象予測などのデータ分析作業にAIを用いることには比較的寛容で、用途によって評価が分かれている。

医療分野では肯定的な見方が優勢で、今後20年の影響について44%が良い方向に働くと答えた。教育や仕事への影響では否定的な回答が優勢で、AIが働き方や学び方をどう変えるかについては慎重な姿勢が目立つ。また、影響を判断できないとする回答も一定数存在し、AIの将来像が明確に描けない人が多いことも示された。

若年層で急速に普及、AI利用は“当たり前”に

若年層の利用状況の調査では、13〜17歳の約3分の2がAIチャットボットを使った経験があり、情報検索(57%)や宿題の支援(54%)に利用している実態が明らかになった。宿題の支援では約1割の子どもが、宿題のすべてまたは大部分をAIで解決していると回答。さらにカンニングなどの不正なAI利用が頻繁に起きているとの認識が6割に達し、教育現場での課題が浮き彫りになっている。

職場での利用も増加傾向にある。2024年には16%だった「仕事の一部でAIを使う」との回答が、2025年には21%に増加した。ただし、依然として多くの労働者(65%)がAIをほぼ使用していないと回答しており、普及にはばらつきがみられる。

AIの認識率は上昇傾向が続く。「AIについてよく耳にした」と回答した割合は、2022年の26%から、2025年の約2倍に増加した。日常的にAIに接する頻度も上昇し、若年層ほど利用が進んでいる。職場でChatGPTを使った経験も若い世代ほど多く、年齢による差が明確に表れている。

子どもの利用も早期化している。5〜12歳の子どもがAIチャットボットを使う割合が1割に達し、音声アシスタントやAI機能を備えたスマートウオッチの利用も広がっている。

専門家と一般で大きな温度差、AIへの見方は分断

AI専門家と一般の人々の意識差は大きい。専門家の半数超がAIの将来に肯定的な見方を示す一方、一般の人々の間では懸念が高まっている(参考:「How the US Public and AI Experts View Artificial Intelligence | Pew Research Center」)。ただし、AIの扱いに対する権限不足を感じる点は両者に共通しており、AIの利用を制御できていないとの認識が広がっている。

AIチャットボットをニュース源として使う人は少なく、1割未満にとどまる。利用者の一部は誤った情報に触れる機会が多いと回答し、信頼性の課題が浮き彫りになっている。

AI設計の調査(回答に対する意識調査)では、白人男性の視点が反映されやすいとの見方が多く、他の人種や性別の扱いは十分ではないと感じていることがわかった。どの程度反映されているか判断できないとする回答も多く、AI設計の透明性が課題として示された。

政府および行政によるAI規制の信頼度調査では、政治的立場で意見が分かれている(参考:「Republicans, Democrats now equally concerned about AI in daily life, but views on regulation differ | Pew Research Center」)。米国政府がAIを適切に規制していると信じる人は全体の4割強で、否定派とほぼ同率だが、共和党支持層では過半数に達し、民主党支持層では3割台にとどまった。

AIが社会に浸透する中で、米国では期待と不安が複雑に入り交じる状況が続いている。用途や世代で評価が大きく異なる中、理解の促進や未成年者の保護、適切な規制の在り方が、今後の重要な課題となりそうだ。