なぜ今、マクニカが自動運転EVバスなのか? 『技術商社』を掲げる半導体専門商社の挑戦

『足下に種を蒔き続ける』

 東京都内から車で約1時間半。茨城県西部に位置し、利根川と江戸川の分岐点にある茨城県境町。2020年11月に、自動運転EV(電気自動車)バスを公道で定常運行させた全国で初の自治体である。

 境町には鉄道の駅がない。移動には車が不可欠だが、住民には高齢者も多く、交通インフラの整備は長年の課題となっていた。そうした人口約2万4千人の小さな町で、住民の足を支えているのが自動運転EVバス。ソフトバンク小会社のBOLDLY(ボードリー)と半導体専門商社マクニカが技術協力し、町役場や小学校、道の駅など、町内をぐるぐる回っている。

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「当社はずっとディストリビューター(仲介業者)としてやってきたが、それだけにとどまらず、もう一歩先の事業をやっていこうよということで、自動運転EVバスなどの新事業も積極的に展開している。既存の事業で培った知見を活かして、新たな事業を開拓していく」

 マクニカ経営企画本部本部長の真野大治郎氏はこう語る。

 半導体専門商社で国内首位のマクニカ。モノづくりのサプライチェーン(供給網)を支える〝産業界の黒子〟のような存在で、データセンター向けGPU(画像処理半導体)を手掛ける米エヌビディアや半導体設計会社のアルテラなど、世界の主要半導体メーカー21社のうち、17社と取引をしている。多様な取引先と顧客基盤を有していることが同社の強みである。

 半導体専門商社とはいえ、約5000人の従業員のうち、3人に1人はエンジニア。最先端技術を実装するために、エンジニア自らが顧客に対して、様々な提案を行っていることが同社の大きな特徴だ。

 そんな同社が近年、既存事業で培った知見を活かして、新事業に育成しようとしているのが自動運転EVバス。前述した境町では最高時速を20キロ程度に抑えてバスを走行している。オペレーターの方に話を聞くと、「利用者は高齢者が多く、バスの運行後、免許を自主返納した方が増えた」という効果もあるようだ。

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 現在は境町の他、茨城県常陸太田市など、全国累計6地域の定常運行と50件以上で実証運行を行っており、自社製品である遠隔運行管理システムとともに自治体や企業へ提供し、運転手不足や高齢者の足の確保などを目的に、全国の移動課題の解決に取り組んでいる。

 この他、医療・ヘルスケア領域も新事業創出を狙う分野の一つ。今後は高齢者のフレイル(虚弱)予防や介護施設のDX(デジタルトランスフォーメーション)、バイタルデータ活用による先進的予防・診断につなげようとしている。

 真野氏も「当社は『足下に種を蒔き続ける』を企業理念にしていて、すぐにビジネスにはならなくても、最先端のものを扱い、それをしっかり育てていくと。創業以来50年以上、変化の先頭に立つということを心掛けてきた」と語る。

 時代が変わり、技術が進歩すれば、足元で好調な事業が数年後も好調とは限らない。そうした状況にあって、企業が成長を続けるためには、新しい種を蒔き続け、チャレンジし続けるしかないという考えなのだろう。

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