日本IBMは3月12日、IBMのシンクタンク組織「IBM Institute for Business Value(IBV)」によるレポート「エンタープライズ2030 - AIと拓く、5つの勝ち筋」の日本版を公開した。

約8割の経営層がAIの収益貢献を期待するも、「明確に描けている」のは2割

調査は、オックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)社の協力を得て、2025年から2030年にかけて自社の進化をどう予測するかについて、2007人の経営幹部からインサイトを収集。

2025年第3四半期および第4四半期に33の地域、20以上の業界を対象に実施し、AIファーストなオペレーション、高度なAIモデルの製品・サービスへの組み込み、労働力のトランスフォーメーション、量子コンピューティングなどの新興テクノロジーへの準備態勢といった戦略的優先事項を調査した。

これによると、調査対象となった経営層の約8割(世界79%、日本82%)が「AIは2030年までに自社の収益に大きく貢献する」と予想していることが明らかになった。これは現時点での40%からの増加となる一方で「収益源が何になるか」を明確に描けている経営層は4分の1程度(世界24%、日本17%)にとどまっているという。

  • 約8割の経営層がAIの収益貢献を期待するも明確に描けているのは2割だという

    約8割の経営層がAIの収益貢献を期待するも明確に描けているのは2割だという

現在から2030年にかけてAI投資は増加する(世界150%、日本137%)と予測すると同時に、調査対象の経営層の約7割(世界68%、日本72%)が中核業務と十分に結びつかないまま進められることで、AIの取り組みが失敗に終わることを懸念している。

AIによる生産性向上のさらに先の価値創出

現在、AI支出の半数(世界47%、日本46%)は業務効率化に振り向けられているが、経営層は2030年までにはAI支出の3分の2近く(世界62%、日本63%)がイノベーションに充てられると予測している。

経営層の約3分の2近く(世界64%、日本66%)は「これからの競争優位性は、資源の最適化ではなく、イノベーションから生まれる」と回答とし、70%(世界、日本とも同じ)はAIで得られた価値を組織全体の投資と成長に充てる方針としている。

  • AIファーストによるフライホール効果

    AIファーストによるフライホール効果

2030年までにAIが生産性を4割以上(世界42%、日本41%)向上させると見込み、約3分の2(世界67%、日本62%)が、2030年までにはAIによる生産性向上の効果の大半を取り込みを完了していると予測。

組織の競争優位は適切な投資判断に左右される

調査対象の経営層の半数以上(世界57%、日本56%)は、自社の競争優位性は主に2030年にかけてのAIモデルの高度化から生まれると回答する一方、2030年までに自社にどのAIモデルが必要となるのかを具体的に描けていると自信を持つ経営層は、3割以下(世界28%、日本22%)にとどまっている。

経営層の8割(世界82%、日本83%)は2030年までに自社のAI機能はマルチモデルになると予測し、72%(世界、日本で同じ)は2030年までに自社では、SLM(小規模言語モデル)がLLM(大規模言語モデル)よりも重要になると推測。

小型でカスタム化されたモデルや基盤モデルを含む複数のAIモデルを活用し、複数の業務プロセスにわたってAIを展開している組織は、2030年までに24%高い生産性向上と55%高い営業利益率を見込んでいる。

加えて、6割(世界59%、日本58%)は「2030年までに、量子を補完的に活用するAIが自社の業界を変革する」と考える反面、それまでに「自社が何らかの形で量子コンピューティングを活用している」と予想する経営層は3割以下(世界27%、日本25%)にとどまる。

AIはリーダーシップの在り方と人材のスキルを再定義する

調査対象の経営層は、2030年までに企業の役員会の25%(世界、日本とも同じ)がAIをアドバイザー、もしくは共同意思決定者として迎えるようになると予想。7割以上(世界74%、日本72%)が2030年までに、AIが全社にわたるリーダーシップの役割を再定義するだろうと回答し、約7割(世界68%、日本75%)がAIにより新しいリーダー職が生まれると考えているという。

他方、67%(世界、日本で同じ)は職務の寿命が短くなりつつあると答えており、6割弱(世界57%、日本58%)の経営層が現在の従業員スキルの大半が2030年までに陳腐化すると予想 。また、3分の2(世界67%、日本72%)の経営層は2030年にはスキルよりもマインドセットが重視されるということに同意しているとのこと。

AIファーストの組織では、AIから大きな価値を引き出すために「まったく新しい職務を生み出している」割合が世界で48%、日本では65%になったことに加え、「組織構造を見直している」割合は世界で46%、日本で48%となっている。