日本総合研究所会長・寺島実郎が直言「日本はおねだりとバラマキで民主主義が成り立っている国であってはならない!」

日本の一番の課題は物価高と日中関係

 ─ 今回の衆議院選挙について、寺島さんはどのように考えますか。

 寺島 一言で言うと、政治の劣化、政党の劣弱化です。明らかに現在の日本の一番の課題は物価高と日中関係だと思います。今回の争点として、あたかも物価高に対応するための消費減税が中心になりましたが、物価高に対して、減税か給付金で対応しようという選択肢しか思いつかないところに、日本の政党の劣弱化があります。

冨山和彦の【わたしの一冊】『社内政治の科学  経営学の研究成果』

 ─ 政治の劣化ですね。

 寺島 日本の物価高は何によって起こっているのか。根底にあるのが円安です。日本の食料自給率は38%ですから、6割以上の食料品を輸入に頼っている。そこに円安による輸入インフレが重くのしかかっているということです。

 2012年にアベノミクスで異次元金融緩和と財政出動を始める際に、1ドル=79円だった為替は現在150円台半ばになりました。要するに、アベノミクスで円安誘導を続けている間に、自国の通貨の価値が半分以下になった。だから、高いお金を払ってエネルギーや食料を買わなければいけなくなっている。それが直接、物価高に影響が来ているわけです。

 ─ 本来なら、この円安構造をどうするのかを議論しなければならないと。

 寺島 そういうことです。これまで何度も申し上げているように、ここまで円の交換価値が落ちている理由は、日本の財政規律に対する不信なのです。

 例えば、1月下旬に、国債の長期金利が10年物で2%を超え、40年物で4%を超しました。日本の国債に対する信頼がそれほどまでに低くなっている理由は、財政規律が破綻してきているからです。ここが与野党ともに無責任なところで、例えば、消費税にしても、何にしても減税するといったら、財政を圧迫することを視界に入れざるを得ない。でも、そこの議論が全くないのです。

 要するに、日本は円安のパラドックスにはまり込んでいます。財政規律を破綻させて円安に持っていき、円安に苦しんで家計が痛んでいるから、そのためにまた減税しようという悪循環です。減税したらまた財政を圧迫し、そのツケは分かりやすく言うと、日銀に赤字国債を丸投げしている。だから、国債の価値がどんどん落ちているということです。

 本来、選挙で必要な議論はそこのはずです。物価高の根底にある円安問題について、わたしたちはこう考えますということを、各政党がきちんと示さなければならないのです。

 ─ では、もう一方の日中関係ですね。引っ越しできない日中関係をどう考えていけばいいですか。

 寺島 今、現実問題として、かなり追い込まれ始めているのが日中関係です。例えば、レアアース(希土類)などの貿易問題を含めて、中国との間に緊張感を持つことが、日本にとってどれほど不利益かをもっと真剣に考えなければなりません。日本人として、2000年にわたる中国との関係をもう一回振り返って、ここで腹を据えて、生身の人間として中国とどう向き合うかが問われているのです。

 米中対立が激しくなってきたから米国と連携して中国と戦おうなどという話ではなく、高市首相の役割はリーダーとして、こういう形で困難を乗り越えていこう、ということを語らねばならないのです。

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