フリー(freee)は3月9日、医療向けパッケージプラン「freee for 医療」の提供を開始し、その第1弾として医療法人の会計基準に対応したと発表した。同日にオンラインで記者発表会を開催し、フリー 執行役員 業種戦略本部長の和田矩明氏が説明した。

  • フリー 執行役員 業種戦略本部長の和田矩明氏

    フリー 執行役員 業種戦略本部長の和田矩明氏

freee for 医療は「医療法人・病院の黒字経営を支える」をコンセプトに、リアルタイムな数字の可視化と業務自動化を実現。第1弾として、医療・福祉分野の会計・税務の税理士法人である日本経営グループの監修のもと、医療法人の会計基準に対応し、複数施設の会計処理を一元化する機能を開発した。

  • 「freee for 医療」の概要

    「freee for 医療」の概要

進む地域医療の課題

冒頭、和田氏は「地域医療を充実させていく中で地域格差は切っても切れない切実な問題であり、独特な商習慣もあいまり中小医療法人ならではの基準・業務がある。そこを理解しながら伴走していく必要があり、医療業界をアナログで複雑な事務作業から解放したいと考えている。法改正が多く、FAXをはじめ紙ベースの業務も残存していることから、変わるきかっけに当社がなる」と強調する。

厚生労働省では、2025年までの医療業界は病院から地域・自宅にシフトする「地域包括ケアシステムの整備」としていたが、2026年からは超高齢化のピークと生産年齢人口の急減を受けて、6月1日に診療報酬改定や「新しい地域医療構想」で医療・介護・障害福祉が一体となって患者を支える地域完結型の医療への変化が見込まれている。

また、最近では医療業界において、需要の急増と現役世代の激減、社会保障制度の限界、地域格差の拡大、中規模法人のITの遅れが深刻なことなどを含め「2040年問題」が課題として立ちふさがっている。

地域医療は医師不足や無医地区の拡大、高齢化に伴う医療費抑制と物価高騰などに直面しているほか、医療業界では自己資本比率が54.4%(中央値)と他の業界が30~40%であることを鑑みると相対的に高いことに加え、現預金回転期間は概ね3カ月弱のところ2.5カ月と厳しい状況となっている。

  • 医療業界における自己資本比率と現預金回転期間

    医療業界における自己資本比率と現預金回転期間

保険の償還も支払いまで2カ月、さらに請求した金額が100%償還されないというリスクもあることから、配置基準などの構造的な課題、入院患者の食事代や水道光熱費などのコストがかさみ、医療利益の約75%が赤字になっている。

また、新型コロナウイルスによるゼロゼロ融資の返済が2024年~2026年にかけて元本返済開始のピークを迎えるなど、自転車操業と倒産の危機が隣り合わせになっている。

こうした背景に加え、施設間でのデータ共有や管理業務はこれまで以上に複雑化し、現場の事務的負荷が増大する課題が浮き彫りになっており、特に会計業務は「病院会計準則」や「社会福祉法人会計基準」など、医療法人・社会福祉法人をはじめ、法人格ごとに異なる会計基準への対応が不可欠だという。

従来のシステム環境ではデータの加工や連携に多くの手作業を要したり、一般的なソフトでは医療法人特有の要件に対応できなかったりするなど、結果として現場の努力に頼らざるを得ない状況が続いているとのこと。

「freee for 医療」の概要

freeeでは、2024年に医療福祉の専門チームを立ち上げ、まずは介護業界に特化したプロダクト・サービスとして処遇改善手当に関するニーズや社会福祉法人会計基準に対応。2025年からは医療業界への支援も強化している。

freee for 医療の特徴は「医療法人会計基準」「病院会計準則」など最新の会計基準・法令への完全準拠と迅速なアップデートを実現しており、業界特有の複雑なコンプライアンス要件を網羅している。また、頻繁に行われる法令改正や税制変更にもクラウド上で迅速にアップデート対応するため、常に最新かつ正確な会計処理を維持することを可能としている。

  • 医療法人会計、施設別会計に対応

    医療法人会計、施設別会計に対応

和田氏は「自転車操業の問題を可視化し、地域医療構想を叶える黒字経営の医療法人・病院を支援することに取り組む。業界特化のプロダクトと、専任のサポートチームの両輪で医療の経営基盤を支えるパッケージ」と説明する。

また、病院・診療所・介護施設など、形態の異なる複数拠点の会計処理をプラットフォーム上で統合管理でき、拠点ごとの独立した運用とグループ全体でのリアルタイムな実績の把握を両立し、組織全体の意思決定を迅速化するなど、多拠点・複数施設の会計データ一元管理による経営の可視化ができるという。

  • 会計処理を単一のプラットフォーム上で一元化できる

    会計処理を単一のプラットフォーム上で一元化できる

さらに、行政機関への提出が必要な特殊報告書類や、施設・部門別の貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)など、医療機関特有の複雑な帳票を簡単な操作で自動作成する。従来は手作業で行っていた集計業務を削減し、ミスを防ぎつつ業務の生産性を向上させるとのこと。

  • 提出先や様式ごとにワンクリックでレポートを作成することができるという

    提出先や様式ごとにワンクリックでレポートを作成することができるという

最後に和田氏は「複数の施設を運用していても各施設と法人全体の数字がすぐに把握できる。経営に携わる人も月次の収支や昨対比がすぐに終える子に加え、権限管理も柔軟に対応している。短期的には自転車操業から脱却し、中長期で地域医療構想への適応、そして経営やバックオフィスの再構築が可能としている」と力を込めていた。

今後、医療以外にもAIの活用やシェアードBPO(Business Process Outsourcing)をはじめ、業種業界特化のプロダクト開発などを展開していく考えだ。