【 3年で社長交代を決めたトヨタ 】 次期社長には〝番頭〟の近 健太氏

創業者を支えた石田退三氏

「経営課題に対して全力で取り組んでいくためのフォーメーションチェンジだ」

 トヨタ自動車は現社長の佐藤恒治氏(56)が4月1日付で副会長と新設するCIO(Chief Industry Officer)に就き、新社長・CEOには執行役員でCFOを勤める近健太氏(57)が就任すると発表。会長の豊田章男氏(69)は留任する。

 僅か3年での社長交代となったが、足元のトヨタの業績は赤字に陥る他メーカーに比べても奮闘。2026年3月期売上高予想も49兆円から初の50兆円へと上方修正している。しかし、利益ベースでは減益。佐藤氏が念頭に置く〝経営課題〟は「稼ぐ力」の向上と「産業連携」だ。

 東北大学出身の近氏は20年にCFO、22年に副社長に就任。ただ、翌年には退任して子会社のウーブン・バイ・トヨタの代表取締役兼CFOとなった。同社には豊田氏の長男・大輔氏が在籍。近氏は8年間、豊田氏の秘書を務め、母校の講演でも「章男さんのような人間になりたい」と語ったほどだ。

 佐藤氏が社長交代を決めた背景には危機感がある。脱炭素や自動運転などの進化の激しい技術競争に加え、米国の高関税策や中国によるレアアース(希土類)の輸出規制など、日本の自動車業界の行く末が案じられる課題がそびえたっているからだ。

 佐藤氏は日本経済団体連合会副会長を務めると共に、日本自動車工業会(自工会)会長にも就任していた。「自工会の活動とトヨタの執行職の責任者としての仕事を両方フルスイングでやれるだろうかと自問自答はしていた」(同)。その最中で人事案策定会議から提案を受けた。

 バトンを受け取る近氏は「収益や数字にこだわりがある」と話す。かつてトヨタにも技術者だった創業者・豊田喜一郎氏の跡を継いだ石田退三氏がいた。今日の無借金経営の礎を築いた〝大番頭〟だ。近氏も社長就任打診後、章男氏との会話の中から石田氏が「無駄なものには一切お金を使わなかったが、喜一郎氏の夢には思い切って大きな投資をされた」と聞いた。

 収益向上と大胆な投資─。近氏には番頭として磨いたバランス力が問われることになる。

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