《第64回・関西財界セミナー》 大阪・関西万博のレガシーや少子化対策、AI活用について白熱した論議

持続可能な未来社会の実現に向けた行動を

「世界が不安定で予測不能な時代に突入している。社会課題の解決と経済成長の両立に向け、万博の成功で高まった大阪・関西の存在感やブランド力といったソフトパワーを活かしながら、万博でまかれた、これらの種を萌芽させることが、われわれ経営者の使命であり、責務と考えている」

 こう語るのは、関西経済同友会代表幹事(大林組副社長)の永井靖二氏。

 2月5~6日の2日間にわたり、京都市内の国立京都国際会館で『関西財界セミナー』(関西経済連合会・関西経済同友会主催)が行われた。関西財界セミナーは今回が64回目。会場には連日、関西を中心とする経済リーダーや在日公館、大学、自治体関係者など、683名が参加した。

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 今回のテーマは『新たなステージへの挑戦 ~関西が描く持続可能な未来社会~』。

 現在はトランプ米大統領による自国第一主義的な政策や、ロシア・中国を含めた大国の覇権主義的な行動が世界を揺るがしている。ロシアによるウクライナ侵攻から4年が経ち、年初には米国がベネズエラを武力攻撃するなど、力の論理が横行する中で、世界が混沌としている状況と言っていい。

 国内情勢を見ても、人口減少や少子高齢化、東京一極集中、災害の激甚化などの社会課題が山積。円安が長期化し、足元では原材料価格が軒並み高騰。国民生活や日本企業を取り巻く環境は厳しい。

 そうした状況下にあっても、関西の経済人の士気は高い。

 昨年開催された大阪・関西万博の一般来場者は2500万人を超え、運営費も最大370億円の黒字を達成する見通し。来年5月には生涯スポーツの祭典「ワールドマスターズゲームズ」の開催を控えている他、統合型リゾート(IR)の誘致計画など、発展の起爆剤となり得るイベントが相次いでいるからだ。

 冒頭で基調講演したのが、ヒューマノイド(ヒト型)ロボットの開発で知られる大阪大学教授の石黒浩氏。

 石黒氏は自身が昨年の万博でテーマ事業プロデューサーをつとめた経験を踏まえ、「人間は人間の未来や地球環境の未来を考える責任がある。テクノロジーに振り回されて未来を見失ってはいけない。万博の役割とは一旦立ち止まって、そういう未来について考えることだと思う」と指摘した。

 そうした中、関西経済連合会会長(住友電気工業会長)の松本正義氏が「紛争や社会の分断など、国際秩序に不安が持たれる状況が続いており、国内では人口減少・少子高齢化社会の到来に伴う様々な課題に直面している。

 こうした中、企業・政府・自治体が連携し、持続可能な未来社会の実現に向けた行動を起こす必要がある」と問題提起。官民連携でいかに関西、ひいては日本の潜在力を掘り起こしていくか。議論が白熱した分科会を見てみると―─。

AIでは消費が伸びない…

 今回は6つの分科会がある中で、テーマ設定は主に3つに分けられた。万博のレガシー(遺産)をどう継承するかがテーマの第1~第2分科会と、少子化・外国人材の受け入れ・AI(人工知能)活用といった第3~第5分科会、そして、スポーツと企業の関係を議論した第6分科会である。

 関西の強みをいかに伸ばし、産業振興や投資拡大につなげていくか。万博のレガシーをいかに継承していくかは、今後の大きなテーマだ。

 万博をテーマにした第1分科会では、日本総合研究所調査部長の石川智久氏が「昨年の最大のヒットは万博だった。東京を通さずとも関西のみで熱狂をつくった事実は大きい。歴史や文化・伝統というのは関西オリジナルで競争相手がいない。こういう部分を伸ばしていくべきだと思う」と指摘した。

 外国人材の受け入れについて議論したのが第4分科会。人手不足解消のカギを握る一つが外国人材の受け入れだ。外国人材との共存をいかに図っていくかは大事なテーマだが、一方で企業における外国人材の受け入れ面での課題や、今回の衆議院選挙でも外国人排斥のような雰囲気があるのも事実である。

 亜細亜大学アジア研究所教授の九門大士氏は「外国人の社員と話をしていると、例えば、中国語を話せるんだから通訳をしてくれと言われて、何となく通訳をやらされてしまう。でも、本人は通訳をしたくて、会社に入ったわけではないので辞めてしまう。そうしたミスマッチが起こらないよう、会社や組織がきちんと仕事内容を伝えてあげることが大事」と語る。

 また、三菱UFJ銀行特別顧問の沖原隆宗氏は、政府が移民の受け入れに関して腰が定まっていないとして、「労働人口の減少をAIで補えと言ってもAIでは消費が伸びない。GDP(国内総生産)を伸ばすには消費が重要であり、国が覚悟を決めて、外国人問題に向き合わなければならない」と注文を付けた。

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