
2026年2月2日、東京都内でAI Sword(大池知博・代表取締役CHRO)が主催した「WEB300カンファレンス」が開催された。このカンファレンスにはAIに取り組む、あるいは興味関心を持つ大企業やスタートアップの経営者や幹部など約400人が参加。
オードリー・タン・台湾サイバー無任所大使
カンファレンスはまず、台湾サイバー無任所大使のオードリー・タン氏(オンライン登壇)による「大企業とスタートアップによる共創エコシステムの作り方」からスタート。
タン氏はスタートアップが潰されないためには縦関係の「垂直整合」ではなく、横関係の「水平整合」が重要だと指摘。フォーク(分岐)、デモ(検証)、マージ(統合)というプロセスこそが、台湾が10年かけて構築した「共創インフラ」だと説明。
そしてAIは中央集権ではなく、日本の「八百万の神」のようにコミュニティに根ざしたローカルな存在になっていくと説明した。
大企業に対しては、イノベーションを捕獲する「網」になるのではなく、スタートアップを育み、成長するための「海」であるべきだと説いた。
宮内謙・ソフトバンクグループ取締役
ソフトバンクグループ取締役の宮内謙氏は「情報革命最前線」という演題で登壇。
宮内は「今年はすごい年」と指摘。それはイーロン・マスク氏が創業した宇宙開発企業・スペースX、生成AI「チャットGPT」を手掛けるオープンAI、そのオープンAIから独立したエンジニアが設立したアンソロピックが上場を控えているから。「情報革命はものすごいスピードで起きている」と宮内氏。
特に今年は人間の手、目、脳、反射神経をロボットが再現する「フィジカルAI」元年とも言われている。
そして「世界は生成AIが登場して以降、すごい勢いで進化している」(宮内氏)。営業、ソフトウェア開発、カスタマーサービス、クリエイティブ、eコマース、製造業などあらゆる分野でAIが活用されて、問題解決が進み、収益効果も出ている。ただ、「最後にジャッジするのが人間」と宮内氏。
そして今後に向けては「データから未来をシナリオライティングすることが必要。変化が常態化する中で企業経営を考える必要がある」とした上で「今あることは長続きしない。一番危険なのは現状への満足。現在の強みに未来の弱点がある。『集団浅慮』に気をつける必要がある」と経営者に対して警鐘を鳴らした。
豊田章男・トヨタ自動車会長
トヨタ自動車会長の豊田章男氏は大池氏との対談「スペシャルトーク」に登壇。冒頭に自身を「アナログ化石で昭和な体育会系」と紹介し、会場を盛り上げた。自身のAIとの接点として「AIとは一体何なんだろうというのがスタート地点だった」として、まず「知る」ことから始めたと振り返る。
その時に、トヨタの社員は「トヨタ会長」、「豊田章男」には興味があっても、レーシングドライバーとしての人格である「モリゾウ」、つまり自分という「人」に興味がないということを感じた。そうして、AIに自身のことを聞いてみると、人間と違って裏表がないということに興味を抱いた。
人間は朝に「嫌だな」と思っても散歩をやり切るなど「面倒くさい社会」を生きている。一方で、理路整然とした部分はAIに任せるのが役割分担だというのが豊田氏の整理。
「AIの導入が目的化しているが、1つのツールとしてできることを考える。効率化だけを目的にしていてはAIに失礼。2割の人間の部分に入っていく努力をしている」(豊田氏)
AIと自動車の関係でいえば、注目されるのが「自動運転」。豊田氏は「自動運転は8割の人には非常に役に立つ」と話す。つまり自動運転は運転ミスをする人の事故を減らす傾向がある。
では2割はどういう人かというと「自動運転より運転が上手いという人」だという。自動車ブランドの「味」、や「自動車の可能性」を感じの人には「相棒として運転して欲しい」と豊田氏は願う。同時に自動運転が実現した時には、レーシングドライバー「モリゾウ」の運転を読み込み、体感できると話して会場を沸かせた。
スペシャルトークでは、豊田氏が会場からの質問にも答えた。トヨタ自動車のような大企業との連携の可能性についての答えでは「トヨタといっても38万人いる。まずは人と人の付き合いを始めた方がいい」とした上で、「未来づくりは1人ではできない。『この指止まれ』でやっていくもの。それぞれの強みを生かす連携をやっていくべき」と、スタートアップを含めた幅広い企業との連携の重要性について言及。
また、自身のスタートアップへの思い入れについては「トヨタも自動車を始めた頃はベンチャー企業。ベンチャーに思い入れがある」とした上で「零細企業から学ぶことは多い。トヨタも『顔の見える大企業』でありたい」と話し、大企業、スタートアップをヒエラルキーで考えることをやめた方がいいと訴えた。
本カンファレンスはAIの可能性、「人」はどう仕事をすべきか、さらには経営者が持つべきチャレンジ精神など、経営に携わる人々にとって大きな学びが得られるものとなった。


