富士通は3月2日、小売業の変革を支援するため、AIエージェントをはじめとする先進テクノロジーを融合した「Uvance for Retail」を提供開始することを発表し、記者説明会を開催した。
データと業務とシステムを横断的につなぎ、現場の実行力と経営の意思決定をAIによって高度化することで、日本の小売業の持続的な成長に貢献することを目指す。
Uvance for Retail提供開始の背景
日本の小売業は人口減少や競争環境の激化、消費者ニーズの変化と多様化、人手不足、コスト上昇といった、複雑な課題に直面している。その背景には、他の業界と比較して意思決定に必要なデータ量が多いことに加え、業務ごとにシステムが分断され、データが散在しているといった状況がある。
さらに、メーカーや卸ごとにデータ構造が異なるためデータが分散し、横断的な活用も難しい。その結果、膨大なデータを十分に活用できないまま人が判断せざるを得ず、負担の増大につながっている。
説明会の中で、富士通の執行役員常務でエンタープライズ事業を担当する古濱淑子氏は「システムやデータの分断、データ同士の遮断、データを扱いきれないことによる独断、という3つの"断"が現場には潜んでいる。これにより、小売りを支えてきた現場の機動力が奪われている」と指摘した。
富士通はこれまで50年以上にわたり、日本の小売業界を支援し顧客との議論や成功・失敗の経験を積み重ねてきた。さらに、近年ではGK Softwareやブレインパッドをグループに加え、業界に根差した知見とテクノロジーを融合しながら、包括的な支援体制を強化する。
同社が培ってきた小売業向けの知見とテクノロジーを、現場の実行力と経営の意思決定を一体で変革する「Uvance for Retail」として提供することで、企業の機動力を高めながら、日本の小売業の持続的な成長を支援するとのことだ。
Uvance for Retailが提供する3つの価値
Uvance for Retailはリテールビジネスの成長に必要なケイパビリティを、データやAIを中心として統合的に提供するという。リテール専門のコンサルタントが経営課題や業務課題を定義し、業務プロセスや基幹システムなどの、あるべき姿を描く。その上で、AIエージェントを組み込んだオファリングを、現場に適した状況で定着させるという。
富士通はUvance for Retailを通じて業務・システム・データが安心してつながる基盤を提供し、生活者と働き手の体験革新とサプライチェーンの高度化を支援する。
Uvance for Retailでは、「つながる」「自律的に判断する」「業界を超える」という3つの特徴を持つオファリングを展開する。1つ目の「つながる」では、業務・システム・データが業務を起点につながる基盤を提供する。社内のデータだけでなく、業界トレンドなど外部データも組み込まれるとのことだ。
2つ目の「自律的に判断する」では、小売業界に特有の定型的な判断を自律的なAIが実行する仕組みを提供する。複数の業務特化型AIを一元管理するマルチエージェントなどを活用して、現場の判断をサポートする。
3つ目の「業界を超える」では、IT資産の共同利用などを通じてサプライチェーン全体を効率化する仕組みを提供する。メーカー・卸・物流などとデータでつながり、業界横断で業務を連携可能とする。
「勤務調整や作業割当てといった現場の調整業務に対し、Uvance for Retailで工数の70%削減を目指して取り組んでいる。富士通が目指すのは当社とお客様の成長だけではなく、データやAIを中心に業界全体が前に進むビジネスモデルを作っていきたい」(古濱氏)
2025年5月に富士通の100%子会社となった、ドイツ(シェーネック)に本社を置くGK SoftwareのMichael Scheibner氏は「当社のCLOUD4RETAILは小売事業者による顧客理解の高度化、エンゲージメント強化、継続利用の促進を支援する。富士通の選定ソリューションをCLOUD4RETAILに統合することで、エンド・ツー・エンドの小売業務プロセスを包括的に支援するソリューションの提供を進める」とコメントしていた。
同年12月に同じく富士通子会社となったブレインパッド 社長の関口朋宏氏は「最高のCX(顧客体験)とは、人のデータと物のデータを融合して、最適な商品を、最適な価格で、最適な数だけ、最適な場所に、最適なタイミングで顧客に届けること。富士通と共に業務とITをなめらかにつなぎ、データの価値を創造する」と述べていた。





