日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2月19日、都内で年次カンファレンス「HPE Discover More AI Tokyo 2026」を開催。本稿では、基調講演の模様をお伝えする。

HPEが示す「ITモダナイゼーション」の方向性

今年のテーマは「次世代のネットワーキング・AI・クラウドが、いま解き放たれる。」で、2400人の参加登録があったという。はじめに登壇した、日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏は「HPとHPEに分社化してから10周年を迎え、IT業界も目まぐるしく変化してきました。デジタル化が進み、クラウドが浸透し、昨今ではAIが加速しています。当社は、それぞれの時々に合わせて、常に最先端のテクノロジーを提供するために活動を継続してきました。10年前と今では提供するテクノロジーソリューションが様変わりしており、今年から始まる10年に向けて変革を推進していきます」と力を込める。

  • 日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

    日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

望月氏によると、企業はビジネスを次のステージに進化させるために、これまで以上にデータを中心としたビジネス変革、そしてデジタル競争力の強化に注力することになるという。最近ではAIの活用が加速し、すべての産業においてあらゆる場所で変革がスタートしており、その可能性は無限大と言っても過言ではないとのことだ。

そのうえで、同氏は「AIの活動度合いにより、企業は戦略を洗練させて競争優位性を確保できる時代を迎えています。当社はAIを効果的に活用するためにエッジ、オンプレミス、クラウドにまたがるすべてのインフラストラクチャを最新のテクノロジーで刷新していく必要性があると認識しています。企業がデジタル競争力を強化するために必要なことを一言で表すならば、それは“ITのモダナイゼーション”です」と話す。

ITのモダナイゼーションに取り組むにあたり、必要不可欠な要素としてHPEでは「ネットワーキング」「クラウド」「AI」の3つを挙げている。望月氏は「ネットワーキングとクラウドの課題を解決することで、初めてデータの価値あるいはAIの価値を最大化できます」と強調した。

74%の企業が直面するAI活用の壁とその打開策

望月氏の問題提起を受けて、グローバル視点からHPE エグゼクティブバイスプレジデント兼最高営業責任者のフィル・モットラム氏がAI活用を巡る課題と解決の方向性を示した。同氏は「人口動態の変化と労働力不足により、企業が“より少ない人員でより多くを成し遂げる”ことを余儀なくされています。この状況が自動化とAIへの需要を加速させている一方で、企業の74%はレガシーインフラ、データ主権要件、人材不足といった要因により、AIの価値を十分に引き出せていません」と指摘する。

  • HPE エグゼクティブバイスプレジデント兼最高営業責任者のフィル・モットラム氏

    HPE エグゼクティブバイスプレジデント兼最高営業責任者のフィル・モットラム氏

  • HPE エグゼクティブバイスプレジデント兼最高営業責任者のフィル・モットラム氏

    74%の企業がAIの価値を実現できずに苦戦しているという

こうした状況をふまえ、モットラム氏は「AI、データ、セキュリティは切り離せない関係にあり、どれか一つに手を打てば、必ず他にも影響が及びます。この連動性を前提にIT全体を設計し直すことが、モダンITアーキテクチャの本質です」と説明する。

AIは単なる効率化を超えて、より賢い製品や迅速な意思決定を可能にしているが、その中核にあるのはデータであり、その量は前例のない速度で増大しているという。AIワークロードは、既存のテクノロジー環境を設計上の限界を超えて押し広げている。その結果として、組織はイノベーションを追求しながら、同時にデータの保護と安全確保という課題と戦う状況に置かれている。

この複雑性を管理し、リスクを低減するために、HPEは望月氏が提示した3つの柱に注力しているというわけだ。ネットワーキングはデータを移動させて保護・可視化する基盤、クラウドはパブリック、プライベート、エッジを含むすべての環境を一貫して管理するための運用モデル、AIはデータから価値を引き出すための能力とそれぞれ位置付けている。

  • HPEが提示する現代のITを支える3要素

    HPEが提示する現代のITを支える3要素

まずは、前提条件としてレガシーインフラの再評価が挙げられる。現在のレガシーシステムがモダナイゼーション計画の障害となっていないか、またAIワークロードが要求する性能やスケールに対応できるかを評価することが望ましいという。

そのうえで、ネットワーキング、クラウド、AIを個別のサイロとして扱うことをやめ、モダンモデルを構成する3つの不可欠なビルディングブロックとして同時に設計する包括的なアーキテクチャの採用を推奨。

そして、AIを拡張する前に、厳格なセキュリティおよび主権要件への適合を確保するため、データの保存場所とアクセス方法を見直すべくとのことだ。

モットラム氏は「より少ない人員でより多くを達成するには、定型的なIT運用やデータ管理業務を自動化し、人材を高付加価値業務に振り向ける必要性があります。ただ、データ主権やサイバーセキュリティにおける許容リスク水準、ハイブリッドクラウドモデルの戦略的選択は、引き続き人間の重要な責任となります」と強調する。

最後に、同氏は「これら3つの要素を用いて、レガシーハードウェアの維持から、スケーラブルで自動化されたネットワーキング、ハイブリッドクラウドプラットフォームへの投資へと予算配分を転換する正当性を示すべきです。こうした投資は単なる『技術購入』ではなく、労働力不足とデータリスクという2つの課題を同時に解決する取り組みとして位置付けられます」と述べていた。