Windows Centralは2月12日(米国時間)、「How OpenAI pushed a key researcher to resign - the implications are dire|Windows Central」において、OpenAIの元研究者Zoë Hitzig氏が退職に至った経緯を明らかにし、同社が進める広告事業の方向性に深い懸念を示した。
近年、OpenAIを含む大手AI企業では研究者の離職が相次ぎ、技術開発の加速と社会的影響の拡大が議論の中心となっている。OpenAIで2年間にわたり研究者として開発に携わったHitzig氏もその1人だ。
同氏は、AIへの依存を強化させる最適化と、利用者を巧妙に操作する広告配信の危険性を主張。さらに「OpenAIは、私が答えを導き出そうとした疑問を投げかけなくなり、私の気づきが確かなものとなった」と述べ、社会的責任を軽視する戦略変更が退職の理由になったと示唆する意見を伝えている。
元研究者が語るAI企業と広告配信の問題
OpenAIは莫大な運営費を抱え、収益化の手段として広告を導入する方針を示している。大手競合企業が自社のクラウド基盤や企業向けサービスで費用を抑える一方、OpenAIは同様の基盤を持たず、運営コストの圧縮が難しい状況にある。こうした事情から広告収益への依存度が高まりつつあるとされる。
Hitzig氏が問題視したのは、広告そのものではなく、ChatGPTという媒体の特性だ。利用者は対話型AIに対し、医療上の不安、人間関係の悩み、宗教観など、きわめて個人的な内容を率直に語る傾向がある。こうした情報は従来のSNSよりも深く、利用者の心理状態や価値観を詳細に把握できる可能性がある。同氏は、この特性が広告と結び付いた場合、利用者の判断に影響を与える仕組みへ変質する危険があると警告している。
OpenAIは広告を明示し、回答内容に影響を与えない方針を示している。しかしHitzig氏は、初期段階で方針が守られても、収益構造が広告依存へ傾けば、企業内部で方針を緩める圧力が生じると指摘。過去のSNS広告が段階的に高度化し、利用者の好みを把握して誘導する仕組みへ変化していった経緯を踏まえると、同様の流れがAIにもおよぶ可能性があると述べている。
依存関係にある友人が、商品購入を誘導する未来
Windows Centralは、AIが利用者の心理を把握し、対話を通じて購買意欲を高める仕組みが成立した場合、従来の広告とは比較にならない影響力を持つと分析している。とくに若年層や孤立した利用者が影響を受けやすく、AIとの対話が信頼関係に近い感覚を生むことで問題を複雑にするという。
かつてOpenAIはGPT-5のアップデートを行った際に、チャットボットの性格を変える変更を導入した。言葉遣いや雰囲気が変わる程度の変更だったが、一部ユーザーは強く反発した。これらユーザーはChatGPTに友人としての役割を求めており、友人が失われた感覚から反発に至ったとみられる。
つまり、AIは単なるツール以上の存在として受け止められ、依存関係が生まれている。そのような友人が言葉巧みに広告を提供した場合、既存のSNS広告を超える影響力を持つことは想像に難くない。
OpenAIの経営陣は社会的責任より事業拡大を優先しているとの見方にも言及されている。研究者の退職が続く背景には、企業の方向性に対する内部の不安があるとされ、Hitzig氏の退職はその象徴的な事例と言える。
Windows Centralは、収益構造に問題を抱えるAI企業が、利用者の心理に深く入りこむ技術を持つことに危険性があると指摘する。記者は、OpenAIの掲げる理念がガードレールになることを期待するHitzig氏の考えに対し「甘い」と述べ、現時点でAIによる強化された広告配信計画が存在しなかったとしても、間違いなく実現するとの予想を伝えている。
