「空調技術と給湯技術の融合を」 旧・富士通ゼネラル買収で新市場開拓狙うパロマ・リームHD

技術的な融合がないと…

「(環境負荷の小さい)ヒートポンプ式の給湯器が大きく普及している中で、ガスはやるけどヒートポンプはやらない、などとは言っていられない。給湯器であればどちらも持つべきではないかと、ずっと社内で議論してきた。ゼネラルはこの2つの技術を兼ね備えた会社。これ以上にない有難いパートナーだ」

 こう語るのは、パロマ・リームホールディングス(HD)社長の小林弘明氏。

 昨年、空調大手・富士通ゼネラルを買収したパロマ・リームHD。富士通ゼネラルは今年1月から社名を「ゼネラル」に変更し、新たなスタートを切った。

【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅

 パロマ・リームHDの傘下には、国内を中心とした家庭用のガス給湯器・ガス厨房機器を手掛けるパロマと、パロマが1988年に買収し、ガス・電気の給湯器と空調(エアコン)を手掛ける米リームがある。2023年に持ち株会社として、パロマ・リームHDが設立され、今回、ゼネラルが加わることで、HDの傘下に事業会社3社がぶら下がることになった。

「世界をリードするエアー&ウォーター(空調と給湯)・カンパニーへ」──。

 これは小林氏の目指す同社の将来像である。

 なぜ、ガス給湯器のパロマがエアコンの世界に入っていくのか? その背景にあるのは、世界的な脱炭素化へ向けた流れ。化石燃料を使う従来型のガス給湯器だけでは、今後の成長を見通すことができないからだ。

 実はリームが手掛けているエアコンは、北米で主流の〝ダクト式(一つの機械で配管=ダクトを通じて建物全体に空気を送る)〟。ただ、米国以外では室内機と室外機が分かれている日本式(セパレート式)の壁掛けエアコンが主流だ。

 同社が米国以外の空調市場を開拓するためには、「世界の潮流では日本式のエアコンがどんどん広がっている。本気でエアコンをやるのであれば、日本メーカーから学ばなければならないと考えていた」(小林氏)。

 パロマが主戦場とする給湯器でも、前述したように環境・省エネへの要請が高まっていることから、ヒートポンプ式の需要が増加。このため、同社はゼネラルが持つ壁掛けエアコンとヒートポンプ式給湯器による製品ラインナップの拡充やサプライチェーン(供給網)の効率化によって、さらなる競争力の強化につなげたい考え。

 小林氏は「空調と給湯の技術が一体となってきている。技術的な融合がないと各国のエネルギー事情に対応できなくなっている。エアコンとヒートポンプをやっている会社はあるけど、ガス給湯器まで全部やる会社はなかなか存在してない。われわれはここにこだわって、エアーとウォーターを深めていこうと考えている」と意気込む。

 一方、ゼネラルは、かつて冷蔵庫や洗濯機などを手掛けていたものの、2000年代に相次ぎ生産を中止。近年は『nocria』ブランドで知られるエアコンを中心に成長していたが、親会社・富士通がITサービスに経営資源を集中するため、同社の売却を決断。新たな社名の通り、富士通が経営から外れ、パロマグループの一員として再出発することになった。

 ゼネラル社長の増田幸司氏は「われわれが持つ空調技術とパロマ・リームが持つ給湯技術が融合することによって、ユニークな製品が提供できるのではないか。人々の生活をより快適に、より安全に、それに寄与できるような今までにない製品を生み出していきたい」と語る。

約10年後に売上高3兆円を目指す

 パロマ・リームHDにとって、ゼネラルの売上高を単純に合計すると約1兆4000億円。1月時点の各社予想では、リンナイ(2026年3月期は4700億円の見通し)、ノーリツ(25年12月期は2020億円の見通し)、コロナ(26年3月期は867億円の見通し)を大きく引き離す巨大グル―プの誕生となった。

 現在は家庭のエネルギー消費量の70%から80%くらいが給湯器とエアコンと言われている。それだけに今後はガスや石油などの化石燃料に依存しない、より省エネ性能の高い製品が世界中で求められるようになる。同社は今後、空調と給湯の両事業を手掛ける世界有数の企業グループとして、約10年後に売上高3兆円を目指す考えだ。

  ただ、エアコン市場では、トップのダイキン工業やパナソニック、三菱電機がおり、住宅設備・建築資材市場を見ても、LIXILやTOTOなどの競合が立ちはだかる。また、昨年11月には、YKKがパナソニックの住宅設備子会社を買収するなど、人口減少に歯止めがかからない現状では、今後も生き残りをかけた再編が続きそうだ。

 そうした中、「パロマは冬場に忙しく、ゼネラルは夏場に忙しい会社。補完関係を持ちながら、両社が連携してさらなるサービスと品質の向上につなげたい。冬の寒い時にお湯がないと困ってしまうし、夏の暑い時にエアコンがないと熱中症になってしまう。こうした社会課題を解決する会社でありたい」と語る小林氏。

 空調と給湯両方のビジネスを手掛ける世界有数の企業グループとして、新たな成長を図ることはできるか。グループの補完関係を構築し、安定経営を模索することで生き残りを図る小林氏である。

【著者に聞く】『エネルギー危機の深層 』JOGMEC調査部調査課長・原田大輔