弥生は2月9日、2026年度の事業戦略について説明会を開催した。説明会では社長執行役員 兼 CEOの武藤健一郎氏が登壇し、2025年度の事業を振り返るとともに、AIを活用した2026年度の方向性について示した。

  • 弥生 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 武藤健一郎氏

    弥生 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 武藤健一郎氏

2025年は「新生弥生」がスタートラインに立つための一年だった

弥生は2024年10月2日付で、代表取締役 社長執行役員 兼 最高経営責任者(CEO)に武藤健一郎氏が就任することを発表。また、翌年4月には、新たなミッションとして「中小企業を元気にすることで、日本の好循環をつくる。」を発表した。

以前のミッションとして掲げていた「あなたの事業コンシェルジュ」は受け身の印象が強かったことから、より積極的な姿勢を表現するために表現を刷新したという。新たなミッションの下で、同社は現場の人手不足解消と経営判断の迅速化を支援するため、専門知識とテクノロジーを組み合わせたサービスの提供を目指す。

  • 弥生は「知とテクノロジー」の組み合わせをビジョンとして掲げる

    弥生は「知とテクノロジー」の組み合わせをビジョンとして掲げる

同社は「知とテクノロジー」の提供に向け、2025年はまず「現場に力を」「経営に可能性を」「組織」の3つのセグメントで取り組みを進めた。武藤氏は「新しいミッションとビジョンを策定してからの一年間は、新しい弥生としてのスタートラインに立つための一年だった」と振り返った。

まずは、「現場に力を」と「経営に可能性を」の2つを実現するプロダクトとして、「弥生会計Next」を提供開始した。同サービスはAIを搭載した完全自動化による業務効率化を特徴としており、「資金分析 β版」など経営を支援する機能も実装している。

  • 2025年に「弥生会計Next」の提供を開始した

    2025年に「弥生会計Next」の提供を開始した

その他にも、「現場に力を」と「経営に可能性を」の実現に向けた経営基盤強化として、与信管理サービスを手掛けるアラームボックスや、経費精算業務にAIを適用するMiletos、起業を支援するガイドブックを発行する創業手帳などのM&Aによってグループを拡大してきた。

  • M&Aによりグループも拡大している

    M&Aによりグループも拡大している

これらの取り組みと並行して、同社は社内組織の変革にも着手した。具体的な施策には、事業部(ビジネスユニット)制への移行や「弥生style」と呼ばれる人事ポリシーの施行などがある。ここでは、人材の採用や育成、評価制度などを見直した。

  • 組織変革にも着手した

    組織変革にも着手した

社内でのAI活用も進めており、全社員へ生成AIアカウントを付与した。弥生サービスユーザーからの問い合わせを受けるコールセンターや、開発組織での活用が特に進んでいるという。「社内ではゼロからAIで開発した製品も一部稼働し始めている」(武藤氏)とのことだ。

弥生が中小企業を支える「3つのA」戦略とは?

2025年は経営基盤や組織の変革によって基礎を固めた弥生。いよいよ2026年は、顧客基盤や仕業ネットワークなどの強みとAIを組み合わせ、顧客体験を革新する具体的なサービスを展開する。

同社が2026年のAIを活用した事業戦略として掲げるのは「Automate」「Assist」「Advise」の3つのAを軸とする戦略だ。

  • 弥生は「3つのA」という戦略を発表した

    弥生は「3つのA」という戦略を発表した

Automateでは、領収書や請求書などの証票データの仕分け、記帳、財務諸表の作成などをAIによって自動化する。また、雇用契約書や入社関連書類を自動処理して人事労務データとして活用できるよう支援する。

  • 「Automate」の機能イメージ

    「Automate」の機能イメージ

Assistは手探りで行う作業を低減するため、AIがガイドやチャットボットのような形式で支援する機能だ。ソフトウェアの操作方法などや仕分けの手順などをサポートする。

  • 「Assist」の機能イメージ

    「Assist」の機能イメージ

3つ目のAdviseは弥生製品に蓄積されたデータをAIが分析し、経営を支援する機能。6カ月先の現預金残高を分析し、ショートしそうな場合には資金調達の手段などを提案する。

  • 「Advise」の機能イメージ

    「Advise」の機能イメージ

「AutomateとAssistの機能はどの企業・サービスでも当たり前のように開発されており、当社にとっても差別化にはならない。最も重要なのは、弥生製品に蓄積されたデータに基づき、個社ごとの状況に応じた提案ができるAdviseである」(武藤氏)

現状ではAutomate、Assist、Adviseに相当する機能はいずれもSaaSの基本的なパッケージとして提供中だ。しかし今後の方針としては、Adviseこそが同社の差別化要因になるとして、個別のソリューションなどとして提供する可能性もあるとのことだ。

現在ではクラウド型のサービスも提供する同社だが、デスクトップ版もいまだに根強い人気がある。クラウド版の会計サービスでは市場シェア約60%であり、新規ユーザーでも約40%はデスクトップ製品を選んでいるそうだ。そのため、デスクトップ版の有償契約者数は増加傾向にある。

デスクトップ版が選ばれる理由として、クラウド版よりも遅延が少なく端末上でサクサク動くこと、慣れたUI(ユーザーインタフェース)で操作できること、SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)などを使い自社独自のカスタマイズで使用できること、などが挙げられる。

  • デスクトップ版へのAI搭載も進めるという

    デスクトップ版へのAI搭載も進めるという

こうした背景から、同社は「誰もがテクノロジーの恩恵を受けられる社会へ」を目指し、クラウド版と大差がないAI機能をデスクトップ版にも搭載するとしている。

武藤氏は「2025年はプロダクト、グループ、組織など基礎・骨格を整えてきた。2026年はAIを血流のようなエネルギーとして、事業に血を通わせていく。中小企業を元気にして、好循環を作っていきたい。当社はこれまでずっと中小企業だけを見てきた。大企業向けに格好いいことをしてきたわけではないが、日本の大部分である中小企業の皆様を元気にしていく」と述べて、プレゼンテーションを締めくくった。