「管理職は向いていないのでは」「ロールモデルがいない」。そんなモヤモヤを抱えながら働く女性は少なくない。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は2025年12月17日に、東京・神谷町本社でトークイベント「StepForward ~女性リーダーのリアルストーリーから考える私らしいキャリアと次の一歩~」を開催。同社のパートナー企業の女性社員とCTCの女性リーダーらが集まり、等身大のキャリアについての意見が交わされた。
「管理職なんて絶対に無理」という考えを変えた理由
CTCは2006年にダイバーシティ専任組織を設置し、長きにわたり女性活躍推進に取り組んできた。その結果、女性管理職は着実に増えているが、依然として「私が管理職になれるのか」と不安に思う声も残っているという。
今回のイベントは、4名のパネリストによる、それぞれの「ライフジャーニー(人生の幸福度曲線)」を用いたパネルディスカッションと、それを踏まえた参加者によるグループディスカッションの二部構成で行われた。
パネルディスカッションでは、仕事(青線)、プライベート(緑線)、モチベーション(オレンジ線)の3本の曲線で描かれた「ライフジャーニー」をもとに、登壇者らが自身のキャリアを赤裸々に語った。
トップバッターを務めたのは、パートナー企業でプロダクト担当スペシャリストとして活躍するOさん。彼女のキャリアで特筆すべきは、出産を機に退職し、6年間という長期間を専業主婦として過ごした点だ。出産に伴う退職では一般的に1~2年で復職するケースが多いなか、子供が小学生になるタイミングで現在の会社に入社し、セカンドキャリアをスタートさせた。
Oさんのモチベーション曲線を大きく押し上げたのは「ロールチェンジ(職務変更)」だった。前職時代、フィールドエンジニアとしての仕事に違和感を抱いていたそうだが、プリセールスへ転向したことでモチベーションが向上。現職でも、当初の業務に閉塞感を感じていたために上司に異動希望を伝え続けた結果、新設されたビジネス・デベロップメント・マネージャーのポジションを提示された。
「これなら続けられる」と直感したその職務で、パートナー企業との協業を通じ、「私にもこんなことができるんだ」という新たな自己発見につながったという。「全てを完璧にしようとしないこと。やらなくていいことは割り切り、自分の時間を少しでも確保してリセットすることが大切」と訴えた。
続いて登壇したCTCの天野さんは、文系出身ながらネットワークエンジニアとして配属され、9割以上が男性という環境下でキャリアをスタートさせた。深夜・休日作業もこなしながら成果を上げ、自信を深めていた6年目、異動先のコンサルティング部門で鼻っ柱を折られる。先輩から厳しい叱責を受け続け、自信を喪失する日々だったが、それものちにキャリアの土台となった。
さらに天野さんはプライベートでの苦悩や、業務を通じて直面した鳥獣被害の課題解決のために「狩猟免許」を取得したことなど、公私ともに波乱万丈なエピソードを披露。その後、親会社への出向でカルチャーショックを受けながらも、自身の強みを見出し居場所を確立していったそうだ。
現在は課長職を務める天野さんだが、かつては「管理職なんて絶対に無理」と考えていたという。しかし、実際にその立場になって気づいたのは、管理職の仕事は「管理」ではなく「チーム作り」だということ。「メンバーの得意不得意を補完し合うチームを作ればいい。無理だと思ったら降りればいい」と割り切りつつ、「ポンコツ課長ですが、みんなに支えられながら楽しく仕事をしている」とポジティブに締めくくった。
支えたのは「自分らしくやればいい」という周囲の言葉
パートナー企業でフィールドマーケティングシニアアドバイザーを務めるMさんは、ライフジャーニーを整理した際に「意外と私、仕事好きだったんだなと思った」と回顧する。
新卒で入社した外資系IT企業では、過酷な現場も“楽しさ”で乗り切ってきた。しかし、事業売却に伴う強制的な転籍によってモチベーションが低下。「自分で決めて仕事をしたい」という思いから、現在の会社への転職を決意した。
だが、転職直後に妊娠が判明。制度上育休が取得できず、産後わずか2カ月でフルタイム復帰するという過酷な状況を経験する。その際、前職の先輩から贈られた「自分にしかできない仕事はないが、自分にならできる仕事はある」という言葉を胸に、「人に頼ること」を受け入れ、乗り越えてきたという。
「子供に寂しい思いをさせているかもしれないが、だからこそ家族に誇れる仕事をしたい」と語るMさん。自らの意思でキャリアを選択し続ける姿勢が、彼女の高いモチベーションを支えているようだ。
最後に登壇したCTCの山本さんは、夫の海外転勤に伴う退職や再就職、復職後の単身赴任ワンオペ育児など、ライフイベントに翻弄されながらもキャリアを継続してきた経験を語った。
そんな山本さんもまた、管理職昇進には消極的だった一人だ。「自分らしくやればいい」という周囲の言葉に支えられ、課長職を受け入れたものの、その後の経営企画部への異動では、専門外の業務と子供の中学受験、夫の単身赴任が重なり、精神的に追い詰められた時期もあったという。
「退職も考えたけど、ゴールデンウィークになったり飲みに行ったりしているうちに、なんとなくなんとかなった」「仕事で思うような結果が出るのは、実際にはオリンピック(4年に1度)くらい。焦らず細く長く続けていくのが大事」と山本さん。「健康第一。そして、やりたいことや助けてほしいことは、具体的に口に出して伝えることが重要。思っていることは言わないと伝わらない」というアドバイスを送っていた。
グループディスカッションでは活発に意見を交換
後半のグループディスカッションでは、パネルディスカッションの内容を受け、印象に残ったこと、今後活かしていきたいことなどについて活発な意見交換が行われた。
ディスカッション後の発表会では、「同じような環境で孤独を感じていたが、似た経験を持つ人がいると知れてよかった」「等身大で完璧を目指さなくていいこと、自分の気持ちを知ったうえでちゃんとそれを伝えることが重要という話が印象的だった」「皆さんのお話を聞いて『管理職になってもいいな』と思えた」「『これは違う』と言うのは、割と女性は得意。だからこそ『私らしく仕事をする』という感覚を持つことが大事だと思った」といった意見が披露された。
「完璧でなくていい」「助けを求めていい」。パネルディスカッションで語られたリアルな言葉は、参加者それぞれが自分の働き方やこれからのキャリアを見つめ直す大きなヒントとなったはずだ。






