富士通は2月3日、国民の意見を幅広く聴取し政策に適切に反映することを目的とした意見公募手続きであるパブリックコメント業務にLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)「Takane」を活用する実証実験を実施したことを発表した。

実証実験は特定の中央省庁と協働して、各意見の賛否の分類や要約などの高度な作業を自動化し、業務の効率化と品質向上を図る目的で2025年中に実施しており、職員がその有効性を確認した。富士通は政策立案や法律制定のプロセスにも応用できる生成AIサービスの開発に着手し、2026年度中の提供を目指すとしている。

  • 実証実験の概要図

    実証実験の概要図

実証実験の背景

国や地方自治体が行うルール作りにおけるパブリックコメントは、そのルールの影響を受ける国民が直接意見を述べる機会を保障する仕組みだ。しかし、国民の関心が高いテーマでは数千件から数万件の意見が届く場合もあり、行政職員は意見の内容確認や分類、既存の関連法令との整合確認といった業務の負担が課題となっている。

その結果、すべての意見を十分に精査して政策に適切に反映させるための時間が不足し、意見を出しても反映されないという国民の不信感を招く懸念もある。

同社が今回実証実験を行った中央省庁は、職員の業務負担の軽減と国民の意見反映の質向上に向け、デジタル技術の活用を重視しているという。そこで、デジタル庁が生成AIの活用検証で取り上げた、パブリックコメントの集約・分析業務へ生成AIを活用する実証実験に取り組んだ。

実証実験の概要

従来のパブリックコメント業務では、提出された意見を職員が読み込んで分類や傾向の分析を行い、各意見に対する回答案を作成した上で政府の対応方針を検討している。その結果、公示までに1カ月間以上を要する場合もあった。

今回の実証実験では、過去に実施したパブリックコメントのデータを利用して「Takane」を活用し、業務の効率化を検証した。実証実験を行った中央省庁に寄せられた約12万文字のパブリックコメントのデータに対して「Takane」を用いたところ、これまで人手で行っていた各意見の賛否の分類や意見の要約が自動化され、10分程度で完了したという。

また、パブリックコメント業務において意見公募の対象となる法令の案と各意見の整合チェックにおいて、法令案に含まれる条項と各意見を「Takane」に入力して参照チェックしたところ、全体の8割を超える意見について法令案の条項に該当する意見の箇所を正しく回答でき、人手ですべてをひも付けする場合と比べて省力化できる可能性があることも確認された。

行政職員が意見の整理に費やす時間が減ることで、その分、意見の中身の検討や政策への反映という、より重要な判断業務に時間を割けるようになると期待できる。