【再編時代の流通業界】「スケールメリットの最大化と地域別対応の両立を」 グループ再編相次ぐイオンの危機感

首都圏は成長マーケット

「全国的には少子高齢化が進んでいるが、首都圏と近畿圏は人口が流入し、国内で限られた成長市場になっている。再編を通して、競争環境をリードできる強固な事業基盤を構築し、持続的な成長につなげていきたい」

 こう語るのは、イオン社長の吉田昭夫氏。

 イオングループは、今年3月に首都圏と近畿圏の食品スーパーを再編する。首都圏では、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)傘下のマックスバリュ関東とダイエーの関東事業、イオンマーケットを新会社「イオンフードスタイル」として新たに再編。近畿圏では、ダイエーが光洋を吸収合併し、新生ダイエーとしてスタートさせる考えだ。

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 主戦場はやはり、今後、しばらく人口増加が見込まれる首都圏。USMH傘下のマルエツやカスミ、いなげやを含めて、売上高1兆円超、1000店舗体制を構築することで、首都圏ナンバーワンの食品スーパー企業となることを目指している。

 また、イオンは、ドラッグストアの再編にも着手。傘下で首都圏が地盤のウエルシアホールディングスと北海道が地盤のツルハホールディングスが経営統合。売上高1兆円超のマツキヨココカラ&カンパニーを大きく引き離す、売上高約2兆円の巨大ドラッグストアグループが誕生した。

 近年は人口減少時代に入り、食品スーパーにしろ、ドラッグストアにしろ、小売業を取り巻く経営環境は大きく変化。特に首都圏では好立地の物件確保が難しくなり、建設コストも上昇。従来のように新規出店を重ねることに依存した成長戦略は難しくなっている。

 そのためにも、イオンは規模の拡大によって、物流や調達コストの削減を図る他、プライベートブランド(PB=自主企画)商品など、共同商品の開発などを目指す考え。

「日本はシュリンク(縮小)していると言われているが、マーケットの移動がすごい。東京集中という流れは止めにくく、首都圏は成長マーケットだという見方をするべきであろう。われわれは成長マーケットに投資をしていく」(吉田氏)

 マクロでは、昨年11月までの物価変動の影響を除いた実質賃金は11カ月連続でマイナス。企業が賃上げしても、賃金上昇分を上回る物価上昇が続いている。さらに、足元では円安が加速し、食料品やエネルギーなどの輸入インフレの進行が消費マインドに影響を及ぼしている。

 日本チェーンストア協会が昨年実施したアンケートでは、「セールへの集中傾向が強まっている」、「低価格プライベートブランドの売上伸長、節約志向からブランドスイッチ(ナショナルブランド=NB→PB)が発生」、「価格訴求型、低価格店舗の数値が上がり、より安価な商品の購買が増えている」など、節約志向が強まっていると回答した企業が多かった。

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 今後も消費者の生活防衛意識は強まることが予想される。

「高まる価格競争、インフレによるコスト上昇、スーパーマーケット業界を取り巻く事業環境は非常に厳しいものがある。特に首都圏と近畿圏での競争は激しく、個社の取り組みの積み上げにとどまることなく、グループ視点でのスケールメリットの最大化と、地域特性に応じたきめ細かなマーチャンダイジングを両立できる体制へとシフトしていきたい」(吉田氏)

 昨年7月には、九州が地盤のディスカウントストア・トライアルホールディングスが西友を約3800億円で買収。売上高1兆円を超える流通グループを形成し、首都圏へ本格攻勢を仕掛けようとしている。

 セブン&アイ・ホールディングスやイオン、そして、近年、食品強化を図るパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)など、小売業界の競争は激しくなる一方。今後は再編も進みそうだ。

 こうした中、「今後はスケーラビリティが重要になってくる。インフレ社会で物価高に対する消費者の価格志向が高まっている。インフレになって4年。スーパーマーケット業界が受ける影響はかなり大きく、生産性をもっと上げ、スケールをもっと上げていくための構造改革」と語る吉田氏。

 生き残りをかけた小売業界の再編が進む中で、物価高を背景にグループ再編を進めるイオン。その背景にあるのは、吉田氏の危機感である。