先月打ち上げに失敗した大型ロケット「H3」8号機は、衛星とロケットの結合部が飛行中に損傷し、衛星が予定より早く脱離していたことが分かった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、文部科学省宇宙開発利用部会の小委員会に調査状況を報告した。損傷は衛星搭載部のカバー「フェアリング」を分離した際の異常な衝撃の影響で生じたとみられる。失敗原因の究明には、この衝撃がなぜ生じたかの理解が鍵を握るとみられ、文科省とJAXAが調査を進める。

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    1段、2段分離後の画像には破片状のものと共に、予定より早く脱離した衛星とみられる物体(右下)が写っていた(JAXAの報告資料から)

8号機は先月22日、政府の準天頂衛星「みちびき」5号機を搭載し、種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられた。1段エンジンは正常に機能したものの、2段エンジンの燃焼に異常が発生。衛星を所定の軌道に投入できず失敗した。直後の調査で、打ち上げの3分45秒後のフェアリング分離時、通常より大きな衝撃が記録されていたことが判明した。

今月20日の小委員会で、JAXAが飛行データの解析や飛行経過の推定状況を報告した。フェアリング分離時に生じた衝撃や2段燃料タンクの圧力、搭載カメラの画像などのデータから、飛行経過を次のように推定した。(1)フェアリング分離直後、何らかの要因で衛星結合部が損傷した(2)1段エンジンの燃焼中は、衛星が機体に押される形で飛行を継続した(3)1段の燃焼が終わると衛星を押す力がなくなり、衛星が脱離した(4)2段エンジンの着火により、衛星と2段機体が離れていった。

フェアリング分離後の画像から、衛星のパネルがはがれ、衛星が傾く様子などを確認した。1段、2段分離後には破片状のものと共に、脱離した衛星とみられる物体が写っていた。

衛星結合部が損傷して2段機体へと落ち込み、燃料タンクの加圧配管を損傷させたとみられる。これにより2段の飛行中、加圧バルブが開き続けてもタンク圧が低下した。2段機体は衛星を載せず、タンク圧の低下に“苦しみながら”飛行を続けたことになる。

衛星は南鳥島(東京都)東方沖の、第1段落下予想区域内に落下したとみられる。地上の被害の報告はないという。JAXAの有田誠プロジェクトマネージャは「今後は衛星関係機関の協力も得ながら、フェアリング分離時の事象に注目し、原因究明を進める。あらゆる可能性を考慮して調査したい」と説明した。

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    みちびき5号機を搭載し打ち上げられるH3ロケット8号機。この後、失敗に終わった=先月22日、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センター(JAXA提供)

JAXAと三菱重工業は、H3の9号機によるみちびき7号機打ち上げを来月1日に予定していた。H3の8号機の失敗を受けて延期することを、今月7日に発表した。

H3は固体ロケットブースターを装備しない最小形態を、開発中の6号機で実現する計画だ。国産大型ロケットで初めてとなる。昨年7月に実施した6号機の燃焼試験では、1段機体の燃料タンク内の圧力が十分に上がらない問題が発生した。対策を講じ、燃焼試験を再度実施する。この再試験を8号機の原因究明や対策と並行させるのか、その後に実施するのかは未定という。

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