星野万里・NEXUSホールディングス社長の 「人生の転機」【恩師からの一言】

群馬県沼田市で当社の創業者である父・敏の長男として生まれたわたしが4歳のときに、パチンコホール「Dステーション」の1号店が市内にオープンし、店舗の2階が自宅でした。

 幼少期は家業を継ぐという意識もなく、好きな運動に汗を流していました。小学校からフェンシングを始め、中学時代もフェンシング部のある学校の部活に参加させてもらっていました。一方で自分の思っていることを話せなかったり、人と違った考えを持っていると、白い目で見られる日本の学校が好きになれなかったのも事実です。

 そんなとき、教師だった伯父からもらった政治哲学の本を読んで、その面白さに稲妻のような衝撃を受けました。それまで縁のなかった学問の世界が開けたのです。地元の高校を卒業後、英国に留学。ブリストル大学の政治・国際関係学部に進みました。もっと政治哲学や経済思想を研究したいと思い、首席で卒業した後にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの大学院に進学し、大学に残って博士課程に進もうと考えていました。

 この思いを報告しようと、一番尊敬していた恩師を誘ってロンドンのレストランで食事をしながら伝えると、彼は開口一番、こう言ったのです。「君はビジネスに向いているよ」。ショックを受けたというよりも、心に引っかかっていた何かが取れたような感覚を覚えました。

 進路について父から何も言われていませんでしたが、好きなことをやらせてくれたことに対する感謝の念はありました。彼の一言によって、その恩返しの仕方が見つかったのです。父は祖父の始めた運送会社を引き継ぎ、新規事業としてパチンコ業界に参入。全国70近い店舗を展開する業界3位の規模にまで成長させましたが、そこに至るまでの苦労は計り知れません。

 わたしはホール経営をする上で業界知識習得のため、メーカーで勉強した後に当社に入り、創業30周年を迎えた2025年7月1日、社長に就任しました。

 パチンコは日本独自の文化で、穢(けが)れと神聖さとが表裏一体の「リミナル(境界的・曖昧)」な産業です。それでも新しい価値を生み出すこともあるはずです。地域に根差し、人々が安心して遊べる健全な環境を守っていきたいと思っています。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの大学院に通っていた頃の星野社長

『わたしの「対話人生」』国際社会経済研究所理事長・藤沢久美「リーダーの笑顔」