富士通は1月26日、生成AIの最適なモデル開発・運用・追加学習までの一連のサイクルを企業が自律的に回し、生成AIのモデルやエージェントなどの継続的に改善できる専有型AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi Enterprise AI Factory」を発表した。今後、日本と欧州で順次提供を開始し、先行トライアル利用の受付を2026年2月から開始する。同日にオンラインで説明会を行った。

新プラットフォーム提供の背景

昨今、生成AIの利用拡大に伴い、企業での活用時に機密性の高いデータが外部に持ち出されるリスクの排除や、自社の業務に特化し、最適化した生成AIモデルやAIエージェントの活用、運用を主体的にコントロールできる環境の確保といったソブリン要件に対応するAI活用環境が必要となっていると指摘。

自社専有環境でこれらを実現するAIプラットフォームを導入するためには、AIエンジニアや複雑なAI運用体制の維持、コンピュータリソースの確保、セキュリティ脅威への継続的な対応といったさまざまな課題があり、これらの課題をすべて解決するAIプラットフォームが求められているという。

そこで同社は、これらの課題解決を目指し、ソブリン性の高いAIを実現する手段としてオンプレミスでも活用できる専有型AIプラットフォームを提供する。

富士通 プラットフォームビジネスグループ サービスインフラ事業本部 ニューオンプレミス事業部 事業部長の谷内康隆氏は新プラットフォームについて「生成AIを導入する段階から業務の中核で安定的に使い続ける段階へと発展させるための基盤。そのために必要な要素を一体で提供する」と説明した。

新プラットフォーム提供の概要

新プラットフォームは、エフサステクノロジーズが提供するオンプレミス環境向けの対話型生成AIソリューション「Private AI Platform on PRIMERGY」と、ドイツ子会社のFsas Technologiesが提供するオンプレミス環境向けの対話型生成AIソリューション「Private GPT」上で提供し、富士通のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」などのAI領域の先端技術群やプラットフォーム製品で構成。

Private AI Platform on PRIMERGYは、高性能GPUを搭載したPCサーバ「PRIMERGY」上で、対話型生成AIサービスが動作する基盤を構築済みのソリューションとなり、Private GPTは生成AIアプリケーションとなる。これらをワンパッケージで提供することで、初期導入のハードルを低減し、高度な専門知識がなくても迅速利用を開始できるようにする。

  • 「Fujitsu Kozuchi Enterprise AI Factory」の概要

    「Fujitsu Kozuchi Enterprise AI Factory」の概要

主な特徴として、Private AI Platform on PRIMERGYとPrivate GPTで提供することでクローズドな専有環境において、安全に生成AIを活用することが可能とし、要件に合わせて顧客のデータセンターや同社のデータセンターなど、設置場所を選択できるほか、インフラの導入から運用高度化までを支援するメニューを揃えている。

また、独自定義を含む7700種超の脆弱性に対応した脆弱性スキャナーと、それらの脆弱性に対応するガードレール技術で、プロンプトインジェクションや不適切な出力、想定外の挙動を事前および実行時に検知・抑止することで悪意のあるさまざまな攻撃を未然に防ぐことができるという。

さらに、検出した脆弱性に対するルールの自動生成と、ガードレールへの自動適用など自動化した運用により、非専門家でもAIの安全性と信頼性を確保した安定運用を可能にするほか、信頼性向上のため事実と異なる情報を未然に防ぐハルシネーション抑制に役立つ技術についても強化を予定している。

加えて、高精度な日本語性能と画像解析能力を併せ持つ富士通のLLM(大規模言語モデル)「Takane」を中核に、顧客自身で精度向上を目的とした業務特化型モデルを継続的に改善できる内製型ファインチューニング機能を提供。AIモデルを軽量化することでメモリ消費量を最大94%削減し、計算資源の利用の効率化で生成AIの利便性を高め、AI活用コストの低減を実現する量子化技術を搭載するとのこと。

そのほか、ローコード・ノーコード開発機能を備えたAIエージェントフレームワークにより、AIエージェントを迅速に構築し、現場主体でのAI開発の効率化・スピード向上を支援。MCP(Model Context Protocol)やエージェント間通信に対応し、既存システム・データとの連携、複数AIエージェント間で役割分担しつつ協調動作することで、高度なAI活用を実現するという。今後、同社の独自技術をエージェント化し、随時提供する形態も検討している。

  • 「Fujitsu Kozuchi Enterprise AI Factory」の特徴

    「Fujitsu Kozuchi Enterprise AI Factory」の特徴

同社では正式提供に先立ち、内製型ファインチューニングやモデル量子化などの一部機能を利用可能な先行トライアルを2月2日から受付を開始し、2月から段階的に提供、正式提供は7月を予定。

将来的に、Fujitsu Kozuchi Enterprise AI Factoryを、企業の中核的な大規模AIから現場や拠点ごとに展開される小規模AI、さらにはセンサやデバイスなどと連動し物理領域に作用するフィジカルAIまで、幅広いシーンでの展開を想定している。