サイボウズが開発・運営するノーコード業務アプリ作成ツール「kintone」では、AIを活用して業務効率化を支援する機能のベータ版を、2025年4月から「kintone AIラボ」として提供している。開発中のkintone AI機能を取り入れることで、アプリ作成やワークフロー構築を"シュシュッと"進められるようになる。

本稿では、サイボウズが2025年10月に開催した年次イベント「Cybozu Days 2025」の中から、「kintone AIラボ」の5つのAI機能が一挙に紹介されたトークセッションについてレポートする。

このトークセッションでは、サイボウズでkintoneのカスタマーマーケティングを担当する松井隆幸氏が講師を務めた。ちなみに、松井氏の好きなフィールドはラベルフィールドだという。

  • サイボウズ カスタマー本部 カスタマーマーケティング部 松井隆幸氏

    サイボウズ カスタマー本部 カスタマーマーケティング部 松井隆幸氏

「kintone AIラボ」で市民開発とデータ活用を支援

kintone AI機能はkintoneに蓄積されたデータに基づいて検索やデータ活用を行うため、kintoneを使えば使うほど、また、データが貯まれば貯まるほどにAI機能も使いやすくなる。

kintoneを用いたアンケートの集計業務を例にとると、従来のkintoneでもレコード(回答者)の年齢や性別などの定量的なデータは数値化・グラフ化できた。しかし、顧客の声や要望といった自由記述の欄を集計したいというニーズには、これまで対応できなかった。

これに対し、kintone AIラボの「レコード一覧分析AI」を利用すると、レコードの内容をAIが分析し要約してくれる。蓄積したデータからレポートを作成したり、次のアクションをAIが提案したりできるので、専門知識を持たなくてもアンケート結果から新たな気付きや改善のヒントが得られる。

松井氏は「kintone AIラボは市民開発の支援と、データ活用の支援という2つのテーマで開発を進めている。エンジニアやITの専門家でなくても、自分たちの手で業務改善できる世界観をAIで支援したい」と話していた。

  • kintone AIラボの開発テーマ

    kintone AIラボの開発テーマ

市民開発を支援する「アプリ作成AI」「プロセス管理設定AI」

アプリ作成AIとプロセス管理設定AIは、ユーザーが作りたいアプリやワークフローをAIがヒアリングし、設定の骨格や土台を構築する機能だ。AIがkintoneの機能を前提とした質問をユーザーに投げかけるため、kintoneに慣れていない場合でもアプリやワークフローを作り始めることができる。

  • AIとの対話を通じてアプリ・ワークフローを制作できる

    AIとの対話を通じてアプリ・ワークフローを制作できる

アプリ作成AI

アプリ作成AIは、チャットでAIと対話をしながらアプリを作成できる。従来のkintoneはアプリ名やフィールドをユーザーが設定しなければいけなかったため、ある程度はアプリ作成の操作に慣れる必要があった。

アプリ作成AIに作りたいアプリの内容を伝えれば、AIが適したフィールドを提案してくれる。都道府県など大量の選択肢を追加する作業も、これまでは手作業が必要だったが、アプリ作成AIがフォームを自動で設定するため、アプリ作成を効率化できる。

  • アプリ作成AIのデモ

    アプリ作成AIのデモ

プロセス管理設定AI

プロセス管理設定AIも同様だ。従来のkintoneは申請や承認といった一連のワークフローをユーザーが設定しなければならなかったのだが、プロセス管理設定AIではAIと対話しながらワークフローを構築できる。アプリ名やフォームのユーザー選択、組織選択、グループ選択フィールドなどの設定情報に基づき、AIが基本構成を提案する。

  • プロセス管理設定AIのデモ

    プロセス管理設定AIのデモ

修正が必要な場合にも、AIに依頼すれば設定を再提案してくれる。プロセス管理の設計や設定に慣れていないユーザーでも、AIの支援を受けながらワークフローを構築できる。

  • 対話しながらワークフローを構築できる

    対話しながらワークフローを構築できる

「アプリ作成AIとプロセス管理設定AIは、あくまで開発中の機能であり非対応な機能も多い。アプリ作成AIは計算やルックアップといったフィールドに非対応。プロセス管理設定AIもアクションの自動分岐や実行条件の設定に対応していない。新規にkintoneを使い始めるメンバーには、今まではサンプルのアプリを見てもらうしかなかったが、AIと対話しながらとりあえずkintoneを触ってもらう、といった使い方ができるだろう」とコメントしていた。

なお、アプリ作成AIとプロセス管理設定AIは、すでに運用中のアプリ・ワークフローの設定変更には使用できない。新しくアプリやワークフローを作り始める際に、まずは挑戦してほしい。

データ活用を支援する「レコード一覧分析AI」「検索AI」「スレッド要約AI」

レコード一覧分析AI、検索AI、スレッド要約AIは、アプリ内またはアプリを横断して登録された内容を分析し、データ活用を支援する機能だ。以下、それぞれの機能について概要を紹介する。

レコード一覧分析AI

レコード一覧分析AIは、レコード一覧の内容をAIが要約および分析する機能。アプリ内に蓄積されたデータの集計やレポート作成が可能で、アンケート調査結果からのインサイト抽出や、メンバーの日報を集計し次のアクションの提案などに利用できる。

  • レコード一覧分析AI

    レコード一覧分析AI

例えば営業活動の日報アプリでレコード一覧分析AIを利用すると、アポイントや商談の件数など定量的な成果を集計するだけでなく、日報の内容から顧客ニーズの把握や時間管理など、課題点についてもAIが指摘する。

「レコード一覧分析AIは活動記録や議事録の要約に使うことで、メンバーの状況把握や休み明けのキャッチアップなどに有用。また、すでに蓄積されている問い合わせやアンケート結果など、顧客データを用いた傾向分析にもぜひ活用してほしい」(松井氏)

  • レコード一覧分析AIの活用例

    レコード一覧分析Aの活用例I

検索AI

続いて、検索AIは、チャットにAIで質問するとkintoneに登録されたデータからAIが適切な回答を検索する機能。レコード一覧分析AIとは異なり、複数のアプリにまたがってデータを要約し、AIが回答を生成する。

  • 検索AI

    検索AI

松井氏は社内ルールの検索に検索AIを活用しているという。例えば「在宅勤務の申請方法」が知りたい場合には、求めている情報がシステムのFAQやオフィスルール、人事制度など、複数のマニュアルを参照しなければならない。その中から該当するマニュアルを探すのは手間がかかる。

そういった場合に検索AIを使用すると、AIが複数のアプリを横断してデータを検索し、適した情報を要約して対話形式で提示する。ユーザーは複数のアプリをその都度開く必要がない。

AIによる回答には、参照したアプリのリンクも合わせて表示されるため、より詳細な内容を知りたければ参照元をすぐに閲覧できる。なお、検索結果にはアクセス権の設定が反映され、権限のないユーザーに非公開な情報が表示されることはない。

検索AIが参照する対象はアプリに限定されず、PDFやExcel、Wordファイルなどにも対応し、マニュアルをkintoneアプリにしていない組織であっても検索AIを使い始めることができる。

「他のAI機能にはない特徴として、検索AIは回答の方向性を事前に設定できる。システムプロンプトの形式でAIに指示をしておけば、業務に適した回答に制限できる」(松井氏)

  • システムプロンプトによりAIの回答を一定程度制御できる

    システムプロンプトによりAIの回答を一定程度制御できる

スレッド要約AI

最後に紹介するのは、スレッド要約AIだ。これはAIが投稿コメントの全体を自動で要約する機能で、議論の流れや要点を把握しやすくなる。新メンバーや他チームのメンバーでも、AIを使って過去の内容を素早くキャッチアップできる。

  • スレッドの要点を把握できるようになる

    スレッドの要点を把握できるようになる

松井氏は「今回紹介したkintone AIラボの機能は、従来のkintoneと別物なわけではなく、誰でも簡単に安心して使ってもらうという同じ思想で開発している。kintoneのスタンダードコースまたはワイドコースのユーザーは、ベータ版として無償で利用開始できるので、ぜひ試してみてほしい」と述べ、講演を結んだ。