【人手不足にどう対応?】メーカーが異なっても一括制御 Mujin・ 滝野一征のロボットの〝つなぐ〟発想術

ロボット展でNTT社長の姿

 2025年12月5日、東京ビッグサイトで開催されていた「2025 国際ロボット展」。会場にある人物の姿があった。NTT社長の島田明氏だ。同氏の目の前のブースでは、複数のロボットアームが段ボール箱を次々とピックアップし、隙間なくパレットの上に積み上げていく。その後、パレットを載せたAGV(無人搬送車)が所定の場所に運んでいく。そんな光景を前に島田氏は2人の男性からの説明に耳を傾けていた。

 2人の男性とはMujin共同創業者の滝野一征氏とデアンコウ・ロセン氏。実はこの4日前、NTTとNTTドコモビジネスなどはMujinと資本業務提携を締結。さらにMujinは、NTTグループとカタール投資庁をリード投資家に総額364億円を調達したと発表。大企業からの熱視線を浴びた同社のブースは国際ロボット展でひときわ注目を集めていた。

「〝産業界のSAP〟のような存在を目指したい。リアルなロボットをきちんと動かす基盤を提供することによって日本が世界と戦える国になることに貢献したい」と滝野氏は意気込む。

 SAPとは企業の会計・財務、ロジスティクス、在庫管理、人事、販売管理などの幅広い業務領域をカバーする基幹業務システム。滝野氏は産業用ロボットの世界で、その立ち位置を求める。

滝野一征・Mujin共同創業者

 Mujinはロボットを制御する〝頭脳〟に当たるOS(基本ソフト)を開発しているユニコーン企業(推計企業価値が1500億円以上の未上場企業)。通常、産業用ロボットを動かす場合には、あらかじめプログラミング(ティーチング)を通じて動きを教えなければならない。動き方を変える場合も、その都度、新たな動作を教えるティーチングが必要になる。

 さらに、ロボットメーカーがそれぞれ自社のOSをロボットとセットで提供するため、他社のロボットを動かすことはできない。その結果、何が起こるのか─。「それぞれのロボットが現場でバラバラに動き、統率がとれなくなるというリスクをはらんでいる」(関係者)のだ。

 先の島田氏が視察していたMujinのブースでは、安川電機とファナックのロボットアームが連携して荷物をパレットに積み上げ、他社のAGVが積み終わったパレットを運んでいた。滝野氏は「当社のOSを使うことでティーチングも不要で、個々の現場に合わせたフレキシブルな対応ができる」と語る。

 要はMujinが頭脳の役割を果たし、各ロボットメーカーのロボットが頭脳の指示を受けながら、現場で最も効率的かつ生産性の高い稼働をするのだ。

デジタル空間での検証も可能に

 Mujinによれば、2040年には現在の約50倍のロボットが現場で動き出すと予測。しかし、それらが部分最適でバラバラに動けば現場は混乱するだけ。Mujinはメーカーもロボットの種類も問わず、一括制御した全体最適な稼働を実現する。ロボットの現場は今後、この〝天国と地獄〟のような光景に分かれていくと予測される。

「産業用ロボットは日本が強いが、モノづくりの会社がロボットにソフトをつけて売っている結果、機種が違うと使えなくなる。しかし、Mujinは、どのロボットでも使えるOSを開発し、世界に売り出している」とは元経済産業事務次官の弁だ。

 同社はトヨタ紡織などの自動車関連メーカーをはじめ、花王、アスクル、ファーストリテイリング、トラスコ中山などでも導入済み。花王の倉庫では従来の固定設備であるコンベアをなくし、AGVなどが変幻自在に動き回る変種変量に対応可能な倉庫に生まれ変わらせている。

 Mujinのシステムを導入し、ロボットにカメラやセンサーを取り付ければ、形状が異なる箱でもピックアップする順番や置く位置をロボットが自分で判断するようになる。また、「現場の動作・稼働・在庫・エラーなどのデータを蓄積し、その情報を基にデジタル空間で検証と最適化を繰り返すことも可能」(滝野氏)だ。つまり、同社のOSは「現場の理解から実行までを一気通貫で扱える」(同)。

 Mujin自体がリアルなロボットを開発・製造しているわけではない。そのため、当初は各メーカーから制御関連の情報を提供してもらう必要があった。2011年に創業した滝野氏は「全く相手にされなかった」と当時を振り返る。しかし、人口減少に伴う人手不足が深刻化するにつれ、ロボットの重要性が増し、メーカーの垣根を超えたソリューションが求められた。結果、Mujinに情報を提供することで、各ロボットメーカーとMujinは新たなロボット市場での引き合いが増えるようになっていった。

 そんな同社の醍醐味は「現場でストップウォッチを片手に数字で現場を把握する泥臭いコンサルタント力」と滝野氏は話す。どこをどう自動化し、本業の収益力向上につなげるか。同社のコンサルタントがその要件定義を現場で行うのだ。滝野氏は「そういった企業は世界中でも当社だけだろう」と話す。

 日本のモノづくりの競争力が失われたと指摘されて久しい。そんな中でも国際ロボット展での同社のブースには常に人だかりができていた。ハードだけではなく、そのハード群を〝つなぐ〟という発想がなければ、せっかくのハードも生かせない。そんな課題をMujinが解決しようと動き出している。

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