
「主力の鉄道事業は安全を最優先に投資を継続し、非鉄道事業は今後10年間で収益と利益を2倍にしていく」─。2024年に東証プライム上場を果たし、株主総会での株主からの意見や期待の声、社員持株会を通じた社員の士気向上など社内に良い変化が起こっている。
営業収益の約9割を占める鉄道事業は昨年度の旅客運輸収入が対前年比3.6%増と堅調。定期収入はコロナ前の9割で落ち着き、定期外が伸びる。インバウンドは乗客の約3%だ。「東京区部の人口は45年まで減らない予測だが、費用も上がっており、楽観視はできない」
地震などの自然災害が頻発する中、耐震補強や浸水対策などを実施。25年度中には改良工事中の1駅を除き、ホームドアを全駅に整備。27年度から丸ノ内線の一部で乗務員が運転士資格を保有せずとも運行可能な自動運転列車を走らせる等、鉄道オペレーションの進化を図る。
目玉は新線建設。東武スカイツリーラインとの相互直通運転が可能となる有楽町線の延伸と都内の乗降客数トップ10に入りながらも唯一、同社の駅がない品川とつながる南北線の延伸だ。技術部員として南北線の建設や半蔵門線の延伸工事を経験したことを踏まえ、「行政や地元の方々といかに誠心誠意、コミュニケーションをとっていくかが肝になる」。30年代半ばの開通を目指し、建設費4000億円のプロジェクトを指揮する。
非鉄道事業の柱は不動産。新宿駅西口地区や現本社近くの東上野4丁目、南青山5丁目、銀座2丁目等の再開発計画が続く。「素晴らしい開発ができれば人は地下鉄で移動し、賑わいができる。また、賃料収入が生まれてリスク分散にもつながる」
27年に東洋初の地下鉄として生まれて100年を迎える。高度成長期に車の渋滞を避け、「日本のスムーズな経済成長を支えてきた」。今後は「街と一体となったシームレスな移動」の提供を実現していく考えだ。
高校時代はバンドに精を出す。コロナ禍を契機に約40年ぶりに再開し、ボーカルとサイドギターを担当する。
profile
1962年宮崎県生まれ。86年東京大学工学部卒業後、帝都高速度交通営団(現東京地下鉄)入団。南北線、半蔵門線、副都心線の新線建設業務に従事。2013年投資計画部長兼渋谷駅基盤整備担当部長、16年企業価値創造部長兼まちづくり連携担当部長、17年経営管理部長兼株式上場準備室長、同年取締役、21年常務取締役、23年代表取締役専務などを経て、25年6月から現職。