三菱電機は1月20日、議論フレームワーク(Argumentation Framework)を用いて専門家AIエージェント同士の対立議論を自動生成し、根拠を明示したうえで専門家レベルの結論を高速に導出するマルチAIエージェント技術を開発したと発表した。同技術は、同社のAI技術「Maisart(マイサート)」の開発成果だという。
技術開発の背景
近年、企業ではセキュリティリスクの評価、生産計画の立案など、トレードオフを伴う複雑な意思決定を求められる業務が増加している一方で、これらの業務は高度な専門知識が必要で属人化しやすく、担当者が不在の場合に判断が困難になることや、妥協点の合意形成に時間を要することなどが課題となっているとのこと。
また、AIの判断根拠が不明確であることへの懸念から、重要な意思決定へのAI適用には依然として強い抵抗感があり、特にセキュリティや安全性に関わる判断においては、推論の過程や根拠を明示することが不可欠であるため、AIの導入は十分に進んでいないと同社は指摘。
開発した技術の概要・特徴
今回、GAN(Generative Adversarial Network)に見られる「敵対的生成」の概念をマルチAIエージェントの議論に応用し、専門家AIエージェント同士を競わせることで、より良い結論を導出する新しい技術を開発。
同技術により、従来の協調型マルチAIエージェントシステムでは困難だった対立議論による深い洞察と、根拠を明示したうえでの意思決定が可能となるため、セキュリティ分析、生産計画設計、リスク評価など、複雑なトレードオフを伴う意思決定が必要な専門性の高い業務へのAI導入を実現し、業務効率化に貢献するという。
主な特徴として、ユーザーが議題や条件を含むテーマを入力するだけで、議論フレームワークによる分析結果をもとに、議論に必要となる複数の専門家AIエージェントを自動生成する。
各専門家AIエージェントの主張を「点」、主張間の反論・支持関係を「線」としたグラフを構築し、議論全体の流れを把握することで各専門家AIエージェントに対して、主張への反論・支持を明確化したプロンプトを提示する。
テーマから抽出したキーワードを用いてWeb検索を実行し、検索結果と外部ドキュメントから自動構築した知識を専門家AIエージェントの発言ごとに都度選択することで、議論進行に伴う主張の変化にも対応。
また、ファシリテーターエージェントが、議論フレームワークを用いて把握した議論全体の流れをふまえて、専門家AIエージェントの発言順を制御し、各専門家AIエージェントは、反論・支持関係を明確化したプロンプトを受けて自身の専門知識に基づく主張を展開。他の専門家AIエージェントの発言に対して、積極的に異なる視点からの反論や補強を行い、多角的な検討を促進するとしている。敵対的生成概念の応用により、本質的な問いを明確化することで、従来のマルチAIエージェントシステムと比較して深い洞察を獲得することができるという。
さらに、ユーザーは議論履歴を集約した議事録やQAチャット機能から、議論の内容と結論に至った背景を追跡でき、ユーザーが議論の続行を追加テーマとともに指示することで、深い議論展開と優れた結論の導出を実現しているとのこと。
今後、2026年度以降の事業化に向け、社内での実証を進め、将来的には経営判断、技術選定、リスク評価など、幅広い専門業務を効率化・自動化する「意思決定支援プラットフォーム」を提供し、専門家不足の解消と意思決定の質向上に貢献することを目指す考えだ。
