
日本は経済と技術力でアジアの成長へ貢献を
─ 海外の売上高比率が約79%を占めるキヤノンですが、米中対立など世界中が混沌としている中で、会長兼社長の御手洗冨士夫さんは日本の役割をどのように考えていますか。
御手洗 私は、同盟国たる米国と隣国中国との間に友好関係を築くという重大な役割を担うべきだと思います。グローバル化の進展に資するためにも、また、アジアの平和を維持するためにも、日本の果たすべき役割は極めて大きいと思います。
─ 現在はいわゆる〝高市発言〟で日中関係はギクシャクしていますが、経済人の交流は大事ですね。
御手洗 もちろんです。政治と経済は切り離し得ぬ関係にあります。経済界においても、日中両国の関係が一日も早く良好に回復することを切望しています。
経済の安定は、政治の安定なくして成し得ません。とりわけ、第2次以降の安倍政権が約8年にわたり継続した時期は、我が国において最も安定が確保された時代であったと思います。第1期トランプ米大統領との関係においても、安倍総理は円滑な協調を実現しました。
さらに、主要7カ国(G7)サミットにおいては卓越したリーダーシップを発揮し、経済連携の分野ではTPP(環太平洋パートナーシップ協定)構想を取りまとめるなど、歴史的成果を収めました。まさに、これこそが理想の姿です。
─ やはり、政治の安定があってこそですね。
御手洗 その通りです。1990年代末よりグローバリゼーションが急速に進展し、ヒト・モノ・カネの自由な往来によって世界は一層の繁栄を遂げました。その最大の恩恵を享受したのは、他ならぬ中国でしょう。
しかし、2008年のリーマンショックを契機に世界は混乱に陥りました。英国のEU(欧州連合)離脱や、欧州で職を失った新興国労働者の事例のように、グローバリゼーションの負の側面が顕在化し、各国は不況の中で自国第一主義を掲げるようになりました。
その流れの果てがロシア・ウクライナ戦争です。自国第一主義が行き過ぎれば、結末は戦争にほかなりません。ゆえに今こそ、この潮流を断ち切り、グローバリゼーションを再び蘇らせるべきです。
今後、アジアの力強い経済成長が見込まれる中、日本はその技術力と経済力をもって地域の発展に寄与すべきです。さらに、日本が主導的役割を果たし、米中両国をはじめ、韓国やASEAN諸国を巻き込み、共にアジア経済圏を構築することが何より重要ではないでしょうか。