NECは1月19日、知的財産業務のノウハウとAI技術を活用し、知的財産に関する戦略立案・創造・保護・活用など、幅広い知的財産業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、企業の知的財産部門における業務効率化および高度化を支援する「知財DX事業」を開始することを発表した。

同社が開催した知財DXコンサル事業に関するメディアレクチャーには、NEC 知的財産&ルールメイキング部門 知的財産部門長の井本史生氏、同部門 シニアプロフェッショナルの上田健一氏が登壇し、同事業の詳細について説明した。

  • 知財DX事業の全体像

    知財DX事業の全体像

「AIの活用」が求められる知財DX分野

近年、企業の競争力強化には知的財産が重要な役割を果たしており、M&Aや協業の意思決定でもその価値が大きく影響している。

加えて、知財ポートフォリオの戦略的な評価・管理、そして事業・技術戦略の実現に向けた知的財産の活用が企業価値向上に密接に関係している。

このような状況から知的財産役割は「権利保護」から「経営戦略」の中核へと役割を変化させている。これらを背景として、多くの企業の知的財産部門では変革が進められているという。

  • 知的財産の役割変化

    知的財産の役割変化

しかしこれまで知的財産部門では、膨大な情報を迅速に整理し、的確な判断が求められる一方で、専門知識を持つ知的財産人材の不足や、業務が特定の担当者に依存していることから、組織全体の生産性向上が困難となるなど、さまざまな課題を抱えていた。

「25社へのヒアリングを通じて、知的財産部門は『人材・スキル』『AIツール』『経営からの要請』『業務プロセス革新』という4つの項目に課題が集約されていることが分かりました。知的財産の重要性が増す中、知財DXのニーズが急速に高まっています」(井本氏)

  • 知財DX事業立ち上げの背景を説明する井本氏

    知財DX事業立ち上げの背景を説明する、知的財産&ルールメイキング部門 知的財産部門長 井本史生氏

特にキーワードとなっているのが「AIの活用」だ。

効率化や高度化への取り組みとしてAIの活用が進む一方、知的財産業務には技術や法律に関する高度な専門知識が求められるため、汎用的な生成AIでは技術内容の正確な理解や法的判断が十分に行えず、期待される効果が得られていないのが現状だ。

さらに、知的財産業務に特化したAIの導入を検討する際には、各企業が個別に開発投資するためのリソース不足も課題となっている。

NECは、これらの課題解決に向けて、知的財産業務のDXを推進し、知的財産部門の業務効率化および高度化を支援する新たな事業を開始することを決めたという。

NECの知財DXの特徴

今回、NECが本格展開していくことを発表したのは「AIとコンサルティングを統合した知財DX事業」だ。

NECは、これまで研究開発・新事業開発・知的財産部門が一体となり、知的財産の戦略立案・創造・保護・活用に関する経験と知見を積み重ねてきた。4万3000件という日本有数の保有特許数をはじめ、AI領域での特許優位性構築や知的財産の収益化、知的財産を活かした新規事業創出など、多くの実績を有している。

これらの取り組みを通じて蓄積されたノウハウに加え、独自のAI技術や専門的なコンサルティング、自社をゼロ番目のクライアントとして最先端のテクノロジーを実践する「クライアントゼロ」の考えに基づいて最先端の社内DXを推進する中で得られた成果を融合させることで、知財DXの事業化が実現したという。

事業の特徴としては、以下が挙げられる。

知見と独自AIを活用したSaaS型ツールによる定形業務の効率化

研究開発部門と連携し、知的財産業務特化のSaaS型ツールを開発した。同ツールにはNECが蓄積した知見と独自AIを組み込むとともに、RAG(検索拡張生成)技術が採用されている。

これにより、技術資料と簡単な指示を入力するだけで、日米欧の約1250万件以上の数値化された特許データから類似特許や類似度を自動抽出し、膨大な文献の中から関連情報を瞬時に検索・抽出、および高精度な文章を生成する。

具体的には、先行技術調査や特許性判定、発明提案書や明細書の作成など、従来手作業で行っていた定型業務の自動化が可能となる。

これにより、大幅な業務効率化の実現と、これまで属人的だった業務プロセスが標準化され、誰でも安定的に高品質な業務成果を得られるようになるという。

  • 「知財業務の効率化」について

    「知財業務の効率化」について

独自AIによる特許資産の可視化を通じた知的財産業務の高度化

M&Aアドバイザリーの手法とNEC独自のアルゴリズムを組み込んだAI、RAG技術を活用することで、幅広い技術分野における市場規模や自社・他社の保有特許を多角的に可視化を実現する。

この仕組みにより、将来の技術や知的財産に関する戦略立案、新事業創出といった上流工程での意思決定を支援していくという。

さらに、特許資産を客観的に評価・分析することによって、知的財産業務全般の高度化と企業競争力の強化に貢献する。

  • 「知財業務の高度化」について

    「知財業務の高度化」について

  • NECの知財DX事業の特徴を説明する上田氏

    NECの知財DX事業の特徴を説明する、知的財産&ルールメイキング部門 シニアプロフェッショナル 上田健一氏

事業の第一弾として、NEC独自のAIを活用したSaaS型の業務効率化ツールとコンサルティングサービスの提供を2026年4月から開始する。

2030年までの知財DX事業の取り組み

今後の取り組みとしては、2026年4月からの業務効率化ツール、コンサルティングサービスの提供開始をフェーズ1と位置づけて、2026年~2028年にフェーズ2、2028年~2030年にフェーズ3へと進めていきたい構え。

「2026年~2028年には、業務効率化ツールとコンサルティングサービスの改善と機能拡充を進め『他社・特許事務所連携強化(知財エコシステム構築)』を実現します。また、2028年~2030年にには、知財DX市場におけるリーディングポジションを確立し、『知財業界の革新の実現』を目指します」(井本氏)

  • 今後のNECの知財DX事業の展開

    今後のNECの知財DX事業の展開

第一弾のコンサルティングサービスの提供に関しては、2030年度末までに売上30億円を目指す。その後は、国内外の特許事務所とパートナー連携を進め、より幅広い顧客に対して最適なツールおよびサービスを提供していきたい考えだ。