
トランプ関税で貿易量は減少 脱炭素は今後も止まらない
─ 日本郵船会長の長澤仁志さん、世界貿易の要である海運の26年を占ってください。
長澤 まずはトランプ関税がじわじわ効いてきて、世界貿易にとってはアゲインストな風が吹いています。過去10年間の世界貿易量は毎年約3.5%で成長してきましたが、26年は1%ぐらいになるのではないかと言われています。
─ その中でも脱炭素の流れは継続していきますか。
長澤 実は25年10月にMEPC(海洋環境保護委員会)というIMO(国際海事機関)の下部会議で、脱炭素に向けた世界統一のルールをつくろうという動きがありました。これは他の業界にもない、海運業界が先駆けた動きとなります。
その中身は温室効果ガス(GHG)を排出する船には多額の課金をし、排出量の少ない船にはそれを戻すといった仕組みです。ところが、米国などからの反対を受け、結論を出すのは1年延期となりました。原案が採択されれば、1つのモデルケースになったと思います。それだけに忸怩たる思いがあります。
─ それでも会社として脱炭素には取り組んでいきますか。
長澤 もちろんです。脱炭素に向けた歩みを止めるつもりはありません。ただ、脱炭素を実現するためにはコストがかかります。そのコストが世界の荷主に受け入れられるかどうかが重要になります。運ぶ荷物は同じでも運賃は間違いなく上がります。ただ、これが浸透していけば、間違いなく世界経済は大きく変革していくと思います。
─ EUやBRICSなどの新興国の方が前向きな気運があるのではないでしょうか。
長澤 EUはもちろん前向きですし、新興国にもそういった機運はあります。実際、中国も基本的には賛成していますからね。ブラジルなども賛成しています。やはり地球温暖化を止めないといけないというのが世界のコンセンサスになっているということではないでしょうか。
─ 一方で需要創造という観点から新豪華客船「飛鳥Ⅲ」が就航しましたね。
長澤 25年7月に就航してから約半年が経ちましたが、順調に稼働しています。当社グループは客船を「飛鳥Ⅱ」と「飛鳥Ⅲ」の2隻体制で運航しています。さらにオリエンタルランドさんともクルーズ船で協力させていただきます。子どものいるファミリー層に客船文化を広げる機会になると期待しています。
とはいえ、クルーズ人口はマーケットとして、そこまで大きく成長しているわけではありません。仕事で頑張った人たちが飛鳥クルーズなどを通じて、ちょっとした癒しを求められる世界を広げていきたいと思っています。